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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.69「八王子ロングディスタンス」

 

 

 

平成27年11月28日(土)、私の指導する法政大学陸上競技部のグランドで、陸上界の話ではありますが、ビッグなニュースがありました。なんと男子10000m走で14年ぶりの日本記録が樹立されたのです。
もちろんうちの大学のグランドで日本記録が出るなんてことは初めてのことで、そのレースを目の当たりにすることができてとても興奮しました。

 

 

大会は八王子ロングディスタンスという大会で、東日本実業団連盟と八王子市陸上競技協会が主催しています。うちの大学は協力という形で運営に携わっています。この大会はすべてではありませんが、1月1日のニューイヤー駅伝に参加する実業団チームのエース級選手たちが記録に挑戦するレベルの高い競技会で、最終組は日本の実業団チームで活躍する外国人選手が何名も出走します。今年は出走37名中21名が外国人選手でした。レースはアフリカ選手権のようです。

ですので、レベルは世界クラスです。今年のトップ記録は27分22秒12でホンダのマレル選手でした。この記録はなんと2015年(12月の時点)世界ランキング13位の記録です。

 

 

法政大学のグランドを使用して八王子ロングディスタンスを開催するのは今年で5回目なのですが、毎年好記録が出ます。私は毎年のように27分台を出す日本人選手が出てくるのでマヒしてしまっていますが、複数名27分台が出る大会は珍しいとのことです。

 

うちのグランドは夕方になると風が全くなくなります。気温も低くなり長距離走には最高の条件になります。そして記録の出る雰囲気も感じます。

今年は日本記録を狙うということで、関係者はかなり気が入っていました。大会前夜、当時の日本記録保持者、高岡寿成カネボウ監督も、今年は「破ってくれるのでは」と期待していました。高岡監督の記録は27分35秒09で、2001年5月アメリカ・カージナル招待レースで記録しています。もう14年も経つのですね。

 

そして28日(土)16時50分最終7組目が始まりました。レースの映像をご覧ください。うちの田舎ぶりも。最初からかなりのハイペースです。

 

 

 

1000mの入りは2分43秒、少し離れて旭化成の鎧坂哲哉選手が続きます。4000m位まで前についているのは鎧坂選手だけでした。4000mあたりから同じく旭化成の村山紘太が追いついてきます。5000mはマレル選手が13分37秒あたりでトップ通過、鎧坂選手、村山選手を含む集団は13分45秒あたり。単純に2倍すると27分30秒。日本記録です。

 

そこから1周400m68秒前後の見事なラップを刻んでいきます。1周ごとに歓声が大きくなっていきます。日本記録の期待が膨らんでいきます。

 

そしてラスト1周。会場全体が彼らに声援を送ります。記録は間違いなさそう。あとは勝負です。ラスト100m鎧坂選手、村山選手大接戦でした。そして並んでゴール。2人とも日本記録達成!!

記録は27分29秒69で村山選手でした。鎧坂選手はわずかに0.05秒及ばず27分29秒71でした。2人とも立派な記録です。会場はものすごい盛り上がりでした。私が大学にきてこんなに盛り上がったのは初めてのことです。

 

2016年元日号砲 ニューイヤー駅伝【村山紘太選手 10000m日本新記録!!】【村山紘太選手 10000m日本新記録!!】11月28日八王子ロングディスタンスで村山紘太選手(旭化成)が27分29秒69の10000m日本新記録を樹立!最後まで同僚の鎧坂哲哉選手と競り合い、生まれた脅威の記録!壮絶なレースのラスト1周を動画でお届けします!2016年元日のニューイヤー駅伝でこの2人がどんなレースを見せてくれるのか今から期待が高まります!!#tbs #陸上 #ニューイヤー駅伝#村山紘太 #鎧坂哲哉 #八王子ロングディスタンス

Posted by TBSテレビ 陸上 on 2015年11月28日

TBSテレビ陸上さんのFacebookより  【村山紘太選手 10000m日本新記録!!】

 

 

 

見事な日本記録でした。観客のみなさんも八王子のさらに奥の田舎にある法政大学にいらしていただいた価値はあったと思います。

 

競り合い

 

 

現10000m日本歴代記録
①27分29秒69 村山紘太2015.11.28八王子ロングディスタンス (法政大)
②27分29秒74 鎧坂哲哉2015.11.28八王子ロングディスタンス (法政大)
③27分35秒09 高岡寿成2001.05.04カージナル招待 (アメリカ)
④27分35秒33 中山竹通1987.07.02ヘルシンキワールドゲーム (フィンランド)
⑤27分38秒25 佐藤悠基2009.04.24ブルータスハミルトン招待 (アメリカ)
⑥27分38秒31 大迫 傑2013.04.29カージナル招待 (アメリカ)
⑦27分39秒95 村山謙太2015.05.09ゴールデンゲームズinのべおか(延岡)
⑧27分40秒69 宇賀地強2011.11.26 八王子ロングディスタンス (法政大)
⑨27分41秒10 三津谷祐2005.06.29 ホクレンディスタンスチャレンジ深川 (深川)
⑩27分41秒57 宮脇千博2011.11.26 八王子ロングディスタンス(法政大)

 

 

なんと10傑に法政大学での記録が4人も。うちのグランドが良い競技場であるということを再確認しました。村山選手のこの記録、2015年度世界ランキング23位です。鎧坂選手も24位です。17着までが27分台です。
世界陸上やダイヤモンドリーグなどの世界のトップの大会と遜色ないレベルの大会になってしまいました。これから怖いですね。

 

一般ランナーのみなさんは、こんなにハイレベルなレースにはならないと思いますが。彼らが刻んでいるペースは見事なまでに狂いなく刻まれていきます。同じリズムでフォームも崩れません。オリンピックや世界陸上など勝負のレースはペースが上がったり下がったりして駆け引きがあります。そこでその駆け引きについて行けなくなってしまうと勝負から脱落してしまいます。この日のレースは記録を狙うレースです。駆け引きはそれほどありません。記録を出すためにペースを狂いなく正確に淡々と刻んでいくのです。

 

みなさんも、例えばマラソンやロードレースで記録を狙いたいときは、こうしたペース配分を守ることが大切です。目標記録から算出したラップ記録を正確に守っていく。これが目標記録を達成する秘訣です。普段の練習から1キロを5分で走る(キロ5分と言います)とかキロ6分などとペースを作って練習してみましょう。

キロ5分ということは5キロを25分で10キロ50分、マラソンを走るなら3時間31分くらいのペースです。キロ6分は5キロを30分で10キロ60分です。マラソンは4時間13分くらいですよね。4時間以内(サブ4)で走りたいならキロ6分を切るくらい(5分41秒)で走ればよいということです。キロ7分ですとサブ5が達成できます。

 

ネットには換算表がたくさんありますから検索してみてください。
同じリズムでフォームを崩さないようなペース走挑戦してみてくださいね。

横浜マラソン2016」は2016年3月13日(日)!!

 

 

 

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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