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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

Vol.153「FISUワールドユニバーシティゲームズ」

 7月21日(月)から28日(月)まで、ドイツ・ボーフムで開催されたFISUワールドユニバーシティゲームズ(WUG)、ドイツ・ライン・ルール大会に行ってきました。FISUワールドユニバーシティゲームズは、2年に1度開催される大学生の世界大会で、陸上競技だけでなく、競泳や体操、バレーボール、バスケットボール、テニスなど多種目が開催されます。オリンピックの学生版のような大会です。

 開催地であるボーフムは、ドイツの中部西側に位置する都市で、かつては、炭鉱の町として、ドイツの重工業を支えたルール工業地帯の一部として栄えたところです。現在は、炭鉱は閉鎖されてしまいましたが、炭鉱跡が多く残っており、趣を保ちつつも静かな雰囲気の町となっています。

 私は、1989年にボーフムと同じくルール工業地帯を形成していたデュイスブルクでこのFISUワールドユニバーシティゲームズの前身であるユニバーシアード大会に出場した経験があります。宿舎はボーフムのまさに隣町であるエッセンというところでした。

 1989年は、ベルリンの壁が崩壊した年(11月9日)です。ユニバーシアード大会は8月下旬開催でしたので、その直前でした。デュイスブルクは、当時西ドイツでした。たいへん貴重な経験をさせていただきました。

 陸上競技では、このFISUワールドユニバーシティゲームズに出場した横浜市関係の選手は不在でしたが、他競技では横浜市出身の学生が多く参加していました。金メダルを5個獲得し、大活躍したテニスでは、横浜市青葉区出身の大橋麗美華選手(慶応義塾大学)が、女子団体で金メダルを獲得されました。おめでとうございます。

 テニスは、オリンピックで日本人が初めてメダルを獲得した競技です。熊谷一弥選手が1920年ベルギー・アントワープ大会で銀メダルを獲得しています。熊谷さんは、引退後もテニス界の発展に尽力され、晩年は鎌倉市にお住まいでした。FISUワールドユニバーシティゲームズの日本チームのテニスの活躍は、ドイツでも話題になっていました。ニッポンテニスの今後にも期待ですね。

 FISUワールドユニバーシティゲームズでの日本の金メダル獲得数は34個で最多、銀、銅を合わせたメダル総数は79個でアメリカに次ぐ2位でした。陸上競技は、金5,銀3、銅3でこちらも金メダルランキングトップでした。

 私が担当した短距離、ハードルは、男子100mで東洋大学の栁田大輝選手が3位、そして男子110mHでは順天堂大学の阿部竜希選手が金メダルを獲得してくれました。

 ドイツから帰国すると、時差ボケとともに日本の蒸し暑さには参りました。ドイツも連日30度を超える気温でしたが、湿度が低いので日陰は涼しく、大変過ごしやすい環境でした。ホテルに冷房はついていませんが、全く問題ありませんでした。夕方からは寒かったりします。日本は40度前後まで気温が上がっていますよね。夜でも暑い。

 近年、気温だけでなく、WBGT(暑さ指数WBGT :Wet Bulb Globe Temperature))が注目されています。WBGTは、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカのYaglouとMinardによって提案された「気温」「湿度」「輻射熱(地面や建物・体から出る熱)」の3つを取り入れた指標で、気温とは異なる数値です。

 このWBGTが28(厳重警戒)を超えると熱中症患者が著しく増加することが環境省によって報告されています。そして、WBGT30以上は運動原則中止で、特に子どもは中止すべきとされています。

(環境省より)

 今年の高校総体(インターハイ)は、7月24日(木)から29日(火)まで広島県で開催されたのですが、この暑さに対応し、暑い時間帯は競技を中断するなどスケジュールの変更や準決勝の廃止、タイムレース決勝(順位をタイムで決める)など、大幅に内容を変更して開催されました。

 この対策によって、短距離種目などは、強い選手が一緒に競うことができない、フィールド種目の試技数が少ないなど、問題は多少あったかもしれませんが、長距離種目では、地区大会の結果からタイム順に組を編成したことから、記録も向上し、レベルの高いレースが展開されました。まだまだ課題はありますが、検討が重ねられ、今後、より安全で効率的な大会となっていくのだと思います。

 これからも日本の夏の猛暑は続くと予想されます。今後、夏季に開催される大会は、こうした工夫を重ねて、暑熱対策を万全にして開催されていくものと思います。高校の甲子園大会でも比較的涼しい午前開催と夕方から夜に試合が開催されていますよね。賛否あるようですが、とにかく事故のないように運営してほしいものです。

 WBGTは、熱中症予防情報サイトで確認できます。地図をクリックするとその場所のWBGTが確認できます。WBGTをチェックして、もし運動を実施するのであれば、水分(ミネラルを含む)を十二分に摂取して、暑熱対策をしっかり、くれぐれも無理のないようにしてください!

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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