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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.27「日本選手権」

 6月8日(金)から10日(日)まで大阪長居陸上競技場で第96回日本陸上競技選手権大会が開催されました。この大会は7月27日から8月12日までイギリスのロンドンで開催される第30回オリンピック夏季大会の陸上競技日本代表選手最終選考会です。


第96回日本陸上競技選手権大会が開催された大阪長居陸上競技場

 大会が終了し、翌11日(月)には既に内定しているマラソン男女やハンマー投げの室伏選手などを含め、男子25名、女子14名の総勢39名の代表選手が発表されました。横浜に関係する選手では、荏田高校出身の吉川美香(パナソニック)選手、横浜国立大学出身の木村文子(エディオン)選手が選ばれています。
 木村選手は広島登録ですので純粋な神奈川県人は吉川選手だけです。吉川選手は1500mでも世界選手権代表になったことのあるスピードランナーで、今回は5000mと10000mに出場する予定です。オリンピックでも活躍が期待されます。

 さて、華やかな代表決定の裏ではもう一つのドラマがあります。それは選手の現役引退です。オリンピックを区切りに引退をする選手は陸上競技に限らず沢山います。今回は、世界選手権400mHで2度銅メダルを獲得した為末大選手が日本選手権前にロンドンオリンピック挑戦で引退すると表明していました。


日本選手権400mHの予選で転倒した為末大選手

 彼のレースをご覧になった方も多いと思いますが、結果は予選で転倒しゴールはしましたが、予選敗退となってしまいました。そして競技場に一礼し、そのまま引退を宣言しました。
 私は予選レースの直前、彼のウォーミングアップを見ていました。ですから為末選手の脚の状態がかなり悪く、限界に近いことは知っていました。おそらく最後まで走りきるのがやっとなのであろうと—。私は一声かけて競技場に送り出しました。
 私は為末選手の大学の先輩にあたります。2000年シドニーオリンピックの時、為末選手は法政大学4年生、400mHでオリンピック日本代表選手を決めるレースで為末選手に敗北し、日本代表の座を逃したのが私です。なんとか他の種目でシドニーオリンピックは出場ましたが、私はこの年、一級線を退きました。


日本選手権400mHで優勝した岸本鷹幸(法政大学)選手

 そして今年、今回ロンドンオリンピック選考会となる日本選手権で優勝し、代表権を獲得したのが私の指導する岸本鷹幸(法政大学)選手です。岸本選手は私や為末選手の大学の後輩です。何か不思議な縁を感じます。「繋がってるんだな」と思いました。
 岸本選手は体形が似ている為末選手のレース運びやハードリングを研究し参考にしています。今回、為末選手に声をかけてもらいました。為末選手から受け取ったものは彼にとって大きな財産となるはずです。
 岸本選手は現在世界ランキング3位、決勝に進出できればチャンスはあると思っています。

 その他にも、アテネオリンピック4×400mリレーで4位に入賞したメンバーの山口有希(大阪ガス)選手や大阪世界陸上110mH日本代表の田野中輔(富士通)選手、同じく4×400mリレー日本代表の堀籠佳宏(富士通)選手など我々と一緒に戦ってきた選手がグラントを去ります。寂しいですが、後輩が彼らの意思を必ず継いでくれます。本当にお疲れ様でした。

 今回のロンドンオリンピック陸上競技日本代表は、大学生が多く非常に若いチームと言われています。先輩たちの気持ちを胸に、日本を元気にできるように精一杯戦ってほしいものです。

 また、前にも書きましたが、この日本代表メンバーにリレー種目が参加資格を獲得すれば追加となります。7月2日の時点で世界ランキング16位までの国が出場できるのですが、現在男子4×100mリレーが13位、4×400mリレーが14位です。女子も4×100mリレーが12位、女子4×400mリレーは圏外です。徐々にランキングを下げてしまっています。
 7月2日までにもう1大会出場する予定です。

 リレーも必ず出場権を獲得します。是非こちらも注目して下さい。

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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