ハマスポ

 
横浜市風景シルエット
 
       
 

ハマスポロゴハマスポ

横浜市風景シルエット
 
注目ワード
 
    イベントレポート

石井裕也投手のクリスマスプレゼント 〜 横須賀市立ろう学校を訪問授業

by :スポーツ情報センター:yoko

憧れの人がやって来た!

 「サイレントK」と呼ばれるプロ野球投手をご存知だろうか。横浜ベイスターズの石井裕也投手。先天性難聴を抱えながら、幼い頃からのプロ野球選手になる夢を叶えた石井投手は、横浜市港南区の出身。横浜商工高(現・横浜創学館高)、三菱重工横浜硬式野球クラブを経て、2004年秋、ドラフト6巡目で中日ドラゴンズに入団。そして今年6月、トレードで横浜へ移籍した。今シーズンは35試合に登板。2勝0敗、防御率2.38の結果を残し、セットアッパーとしてチームに確かな存在を築いた。

 シーズンオフを迎えた石井投手は12月10日、横須賀市立ろう学校を訪れた。横浜のファームチーム、湘南シーレックスの本拠地が横須賀市のため、今回の訪問が実現。生徒たちにとって憧れの石井投手とふれあえる、一足早いクリスマスプレゼントとなった。

横浜ベイスターズの石井裕也投手。困難を乗り越えて、プロ野球選手になる夢を叶えた

夢を叶えるまで

 学校訪問は「石井投手のお話を聞く会」からスタート。子どもたちが待ち受ける教室に、少し緊張した面持ちで登場した石井投手だったが、温かい拍手で迎えられ思わずはにかんだ。野球との出会い、プロの世界にたどり着くまでの道のり。気持ちを込めて丁寧に語る石井投手を、生徒たちは瞳を輝かせて見つめていた。

その道のりとは…

 今の石井投手があるのは野球が好きで、プロ野球選手になりたいという強い思いに支えられてきたからだ。小学生から野球を始めて、やがて横浜商工高(現・横浜創学館高)に入学。野球部の監督の熱意がきっかけとなった。「高校では毎日勉強したり、野球をしたり大変でした。でも夢に向かって頑張ろうと思いました。野球と学校を辞めようと思ったことは一度もありません」。

 高校卒業後は三菱重工横浜に入社。5年間の社会人野球の経験を経て、遂に中日に入団する。「夢が叶いました。プロは毎日試合があるので、精神的に強くならなければと思いました。気持ちで負けないように、バッターに向かっていきました」。3年目の2007年は日本シリーズの舞台で初登板。「初めての日本シリーズは緊張しましたが、日本一になれて良かったです」。

 そして今年、トレードで地元の横浜に戻ってきた。「今シーズンはチームとしては残念でしたが、自分の結果は納得しています。来年はクライマックスシリーズ、日本シリーズに出場できるようにチームに貢献したい」。石井投手は生徒たちに力強く誓った。

「夢をあきらめずに頑張ってほしい」と、石井投手は生徒たちに呼び掛けた

 「どうやってコニュニケーションをとるのか」。人生の転機で、いつも石井投手の前にその課題が立ちふさがる。しかし石井投手には野球があった。厳しい練習を乗り越えて、結果を残して石井投手は強くなっていった。

 生徒たちは石井投手の真摯な話に心を揺さぶられた様子。高等部の高橋美沙希さんは、「石井投手はどの世界でも難しいこと、厳しいことはあるという現実を見せてくれました」と話し、真っすぐに前を見つめた。高橋さん自身は養護学校の先生になる目標に向かって頑張っているそうだ。

忘れられない一日

 その後場所をグラウンドに移して、青空の下で石井投手と生徒たちはキャッチボールを楽しんだ。「ナイスボール」と声を掛けながら、一人一人とキャッチボールで思い出作り。中学部の関根俊博さんは大のベイスターズファンで、小学生の時は地域のソフトボールチームに入っていた。小学校の卒業文集に、「石井投手みたいになりたい」と書いたほど憧れの存在。待ちに待ったこの日はいつもより早く目が覚めてしまった。念願のキャッチボールを終えて、「石井投手のボールは速くて、グローブをはめていても手が痛くなった」と感触をかみしめて、夢のようなひと時に嬉しそうだった。

横浜大洋時代のファンには懐かしい!?現・球団広報の欠端光則さん(左端)もサポート〔左〕石井投手とのキャッチボールは生徒たちにとって夢のようなひと時〔右〕

石井投手の優しさでみんなが笑顔になった〔左〕 幼稚部の子どもたちも一緒に記念撮影!〔右〕

 ランチルームでの給食、そして午後は授業中の教室を回り、生徒たちと交流した石井投手。この日を生徒たちはきっと忘れない。

 横須賀市立ろう学校の鈴木由枝先生は、「私たちがどんなに研究を尽くして授業を行っても、生徒たちと同じ立場の方が話してくださることには敵わないですね。自分たちも頑張れば石井投手のようになれるかもしれない、そう思ってくれたのでは」と感慨深く振り返った。

体を動かした後は、お楽しみのランチタイム!共に過ごした時間が大切な思い出に…

授業中の生徒を優しい眼差しで見守る〔左〕 「石井投手みたいになりたい」と書かれた文集を見て嬉しそう〔右〕

 たった一日のかけがえのない出会い。生徒たちはこれからも石井投手を見つめ、その姿に自分を重ね、勇気や希望を与えてもらうだろう。応援してくれる人たちの思いを胸に。来春プロ野球が開幕する時、横浜ベイスターズの石井裕也投手は新たな成長をマウンドに刻む。

「横浜スタジアムに試合を観に来てください」と約束し、固く握手。再会が楽しみ!

※写真の転載は固くお断りします