子どもたちの豊かな未来のために 〜 横浜マリノス株式会社と横浜市教育委員会の食教育教室がスタート
by :スポーツ情報センター記者
横浜で学ぶ児童生徒の健康を守るために、食教育の新しい活動が誕生しました。横浜がホームタウンのプロサッカークラブ「横浜F・マリノス」と横浜市教育委員会が協力して「食とスポーツ」を結び付けた食教育教室を横浜市立小・中学校で実施することになったのです。
去る5月16日、実施に先立ち、横浜マリノス株式会社と横浜市教育委員会との協定締結式が、中区の横浜市体育協会内で行われ、プロジェクトが実現に至る経緯などが発表されました。
横浜市教育委員会の田村幸久教育長は、「横浜市内で必ず朝食を取る小学6年生は80%で、中学3年生になると64%まで下がるデータがあります。育ち盛りの時期に食の大切さを知り、自己管理する大切さを身に付けることが必要です」と話しました。横浜市は2006年10月に「横浜教育ビジョン」を策定し、その考え方を反映して、教育委員会は今年の3月に「食教育推進計画」を作成しました。
一方、横浜マリノスは1996年に始まった「サッカーキャラバン」で、約14万人の児童たちにサッカーの巡回指導を行ってきました。また専属管理栄養士の橋本玲子さんを中心に10年間、プロの選手を目指す小学生から高校生たちに食育を実践してきました。横浜マリノスの齋藤正治代表取締役は会見で、自身が経験した二つの出来事を打ち明けました。それは昨年のサッカースクールの夏合宿のある日の朝食時のことです。約80人の小学生の中で朝食を全部食べた人はクラブのコーチだけだったいう事実でした。またサッカーキャラバンで訪れた小学校の給食の時間に、おかずのわかさぎのフライを手をつけずにすぐ戻す子どもを見て感じたことがあったそうです。「子どもたちの家庭での食生活を案じました。私たちが培ってきた食とスポーツのノウハウを通じて、横浜の子どもたちの発育に貢献していきたいと思いました」と齋藤取締役は力強く語りました。
そして横浜マリノスの申し出により教育委員会との思いが合致して、食教育で連携することが決定したのです。この日をもって協定式は滞りなく締結されました。
齋藤取締役(左)と田村教育長(右)の調印式をもって、協定が締結されました。
5月20日、第1回目の食教育教室が横浜市立丸山台中学校で開催されました。1年生140人が参加して、2時間目の授業は横浜マリノスコーチ陣によるサッカー教室、3時間目は管理栄養士の橋本さんの食育に関する講演が行われました。
早朝からの大雨の影響でサッカーは体育館での実施となりました。それでも生徒たちは元気いっぱい、プロのコーチから直接指導を受ける機会に目を輝かせてサッカーを楽しみました。クラス対抗のミニゲームでは応援合戦が始まり、体育館は活気に満ちあふれました。
横浜マリノスのコーチ陣の指導の下、思いっきりサッカーを満喫した生徒たち
一汗かいた後は、橋本さんの食についての話がスタートしました。サッカーが上手になりたい、またダイエットを気にする中学生世代のために、もっと強くきれいになるための秘訣として、「運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠」が挙げられ、生徒たちは興味津々の様子。プロサッカー選手を例に挙げ、選手は1日に3,500〜4,000カロリーを消費するため、約1,500カロリーの昼食を摂取するそうです。大切なのはその内容で、主食(米飯、パン、パスタなどの炭水化物)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品)、副菜(野菜)、汁物、飲み物をバランス良く食べる大切さが伝えられました。また中学生にとって身近なコンビニエンスストアでの食事の選び方のアドバイスもありました。例えばお弁当を買ったら100%の野菜ジュースやオレンジジュースとヨーグルトをプラスすること。またサンドイッチは卵、ハム、チーズ、とんかつなどたんぱく質が入った種類を選ぶこと。そしておにぎりならサラダ(卵やハムが入っているもの)を加えることがお勧めだそうです。これなら生徒たちもすぐに実行できそうです。そして1日の始まりに重要な役割を担う朝食を取ることは、体温が上昇してやる気が出る、肥満の防止、常に安定した気持ちでいられるなどのメリットがあるそうです。生徒たちは橋本さんの話に熱心に耳を傾けて、時には積極的に質問する姿が印象的でした。
身近な題材から食育を学ぶ橋本さんの話に、一同はひきつけられました
サッカーと食育に親しんだ2時間は、あっという間に過ぎました。丸山台中学校の村尾美子先生は、「今日はスポーツの大切さや、いかに食事が大事かという話を伺うことができました。とてもいい話で、子どもたちに実践していただきたいですね。今日はみんなとても楽しそうでした。私たちは子どもたちが楽しんでいる姿を見るのが一番嬉しいのです」と笑顔で振り返りました。
またサッカーのコーチとして生徒たちとふれあった横浜マリノスJリーグアカデミーセンター長の田中豊さんは、「私は12年間小学校でサッカーキャラバンに携わってきました。13歳から15歳は体が一番成長する年代なので、食事はとても大切です。これからもっともっと広めていきたいですね」と力を込めました。そして最初から最後まで魅力ある話で生徒たちを引き付けた橋本さんは、「子どもたちの意識も大事ですが、子どもたちの食を担う保護者の方にも伝えていきたいですね。基本のことを続けることが、健康で強くなる食事なのです」と話しました。健康に関する情報があふれている今、食に関する知識も振り回されてしまいがちですが、コンビニの食材を上手に組み合わせたり、市販のお惣菜をプラスして栄養を取ることも、橋本さんは勧めています。
サッカーを通じて生徒たちとコミュニケーションをはぐくんだ田中さん
初めての食教育教室は、丸山台中学校の生徒たちの充実した笑顔で終わりました。 一人でも多くの小・中学生にスポーツと食の大切さを伝えるために、橋本さんたちはこれからも走り続けます。
子どもたちの健やかな未来のために、活動は始まったばかりです