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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.111 「世界リレー結果」

 5月11日(土)から12日(日)世界リレー2019横浜大会が日産スタジアムで開催されました。スタジアムに足を運んで声援してくださった方もいらしたと思います。またテレビで観戦してくださった方も多いと思います。観客動員数は、大会1日目が1万5千人、大会2日目は2万人を超え、大会としてはとりあえず成功したと言えるでしょう。

 世界リレー会場「横浜国際総合競技場」開場前

 

 さて、大会のほうですが、見ごたえのあるレースばかりで大変盛り上がりました。また、日本チームにアクシデントもあり、ドラマチックな大会でもありました。

 まず、日本チームにとって良かったものから紹介しましょう。
 第1に良かったのは男子4×400mリレーです。前回のコラムでも紹介しましたが、この大会は今年10月にカタール・ドーハで開催される世界選手権の参加資格がかかっています。4×100mリレーと4×400mリレーは、総合で10位までに入るとその資格が与えられます。

 男子4×400mリレー日本チームは見事に予選を突破し、決勝でも第4位に入賞、世界選手権の参加資格を見事獲得しました。予選、日本チームはベルギーやフランスなど強豪国のいる中で、エースのウォルシュ・ジュリアン選手(富士通)を第1走に起用する前半型作戦で、3分02秒55でトップフィニッシュ、決勝進出を決めました。会心のレース!トップ通過は気持ちいいですね。
 決勝ではタイムを少し落としましたが、第4位という結果はオリンピック、世界選手権を通じて最高タイ(2004年アテネオリンピック第4位)の結果です。今大会で日本チームが1番獲りたかったのがこの男子4×400mリレーの世界選手権出場資格でしたので、日本にとっては大収穫でした。

 第2に、もう1種目、日本が世界選手権の出場資格を獲得したものがあります。
 それは、ミックスリレーです。ミックスリレーは、今年の世界選手権から新たに正式種目となるリレーで、男女2名ずつで1人400mを走ります。男女の走順は決められていません。こちらは、世界リレーの12位までの国に世界選手権の出場資格が与えられます。日本チームは惜しくも決勝進出を逃してしまいましたが、3分19秒71の日本最高をマークし、全体の11番目で世界選手権の出場資格を見事獲得しました。

 世界選手権の出場権とは関係ありませんが、そのほかにもリレー種目が開催されました。シャトルハードルリレーという種目では、日本チームは銀メダルを獲得しました。さらに2×2×400mリレーでも銅メダルを獲得しました。私はシャトルハードルのコーチとして現場にいました。シャトルハードルリレーは、バトンを引き継ぐのではなく前走者がフィニッシュしたのを見計らってスタートします。日本チームは、日本記録保持者の金井大旺選手(ミズノ)、世界リレーの後に金井選手に並ぶ日本記録を出した高山峻野選手(ゼンリン)、そして、日本女子トップハードラー木村文子選手(エディオン)、青木益未選手(七十七銀行)の日本最強メンバーで55秒59という好タイムで銀メダルを獲得しました。

 世界リレー会場「横浜国際総合競技場」シャトルハードルリレー

 

 2×2×400mリレーも皆さんなじみのないリレーと思います。
 私も初めて観ました。男女2人でチームを組み、交互に400mを2本ずつ走ります。きつそうですね。日本チームの男子は神奈川県の相洋高校2年のクレイ・アーロン選手で、見事な追い込みをみせ、銅メダルに輝きました。また、女子4×200mリレーでは日本記録を樹立、男子4×200mリレーも5位に入賞し健闘しました。

 残念だったのは、男子4×100mリレーと女子4×100mリレー、女子4×400mリレーでした。特に男子4×100mリレーはメダル候補でしたので、日本の期待を裏切る形となってしまいました。男子4×100mリレーの予選3組、日本はライバルアメリカと中国と同組でした。3走小池祐貴選手(住友電工)まではアメリカとトップ争いをしていましたが、小池選手から4走桐生祥秀選手(日本生命)へのバトンパスでミスが起きてしまいました。2人の手が被る形となってしまい、手をバトンから離してしまったことから、バトンが宙を舞ってしまったのです。桐生選手はそのバトンを見事なキャッチでつかみ取り、38秒56というタイムでフィニッシュしたのですが、日本チームは失格となってしまいました。
 バトンが宙に浮いたということはバトンパスとはみなされません。投げ渡したのと同じです。しかし、今回のミスは、日本チームとしては防げたミスと思います。

 大阪ゴールデングランプリの様子

 

 翌日の決勝は、なんとブラジルが金メダルを獲得しました。だれも(私も)予測していなかったと思いますが、ブラジルは強豪国です。優勝記録は38秒05でした。日本チームは世界リレーの1週間後、大阪ゴールデングランプリで同じメンバー、同じ走順で4×100mリレーを走り、38秒00をマークしました。この記録は2019年世界最高記録(当時)でしたから、世界リレーはほんとに惜しかった。残念です。

 日本男子4×100mリレーチームは今回の世界リレーで世界選手権の出場資格は得られませんでしたが、この38秒00という記録でほぼ出場ができると思います。世界選手権でのメダル獲得に期待したいものです。

 女子も今シーズンからナショナルチームが編成され、4×100mリレー、4×400mリレーともに世界を目指したのですが、決勝進出を逃し、さらに出場枠の10番目までにも入りませんでした。あとは記録で出場枠を獲るしかないのですが、記録的に日本の女子4×100mリレーチームは、今年の世界選手権出場獲得は絶望的です。女子4×400mリレーのほうはまだ少しですが、希望は残っています。出場するには記録を出すしかありません。なんとか出場を決めてもらいたいものです。

 今回、横浜で開催された世界リレーいかがでしたでしょうか。私は、大変盛り上がったと感じました。また次回も横浜で開催してくれることを強く願います!
 でも実はこの世界リレー、次回、開催されるのかは決まっていないのですが、、、。

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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