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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.110 「ドーハアジア選手権」

 4月21日から24日まで、「第23回アジア陸上競技選手権大会(アジア選手権)」がカタール・ドーハで開催されました。私は、日本代表のコーチとして行ってきました。カタール・ドーハは、今年9月に「第17回世界陸上競技選手権大会(世界陸上・世界選手権)」が開催されます。そのリハーサルの位置づけもある大会です。

 アジア選手権は、以前紹介したポイント制に重要な大会で、東京オリンピック出場に大きく影響するため、日本代表チームもトップ選手を派遣しました。

 アジア選手権は、昨年8月にインドネシアで開催された「第18回アジア競技大会(アジア大会)」とは異なります。アジア大会は、サッカーやバレーボール、柔道など、多くの競技があり、オリンピックのアジア版という大会です。アジア選手権は陸上競技のみで、世界陸上のアジア版です。

 


ハリーファ国際スタジアム

 今までは、アジア選手権よりアジア大会のほうがグレードとしては高い大会として認知されていましたが、国際陸上競技連盟が地域選手権の重要性を高める働き掛けをしたことからアジア選手権の重要度が上がりました。かつて、アジア選手権は若手選手が選考され、経験値を積むための大会のイメージでしたが、近年はそうではありません。各国トップ選手を派遣してきます。

 アジア選手権は2年ごとに開催されます。私も1998年、福岡で開催された大会に、4×400mリレーの代表選手で出場したことがあります。前回の大会は2017年にインドで開催されましたが、日本の金メダルは「0」でした。金メダル「0」は、日本にとって初めてのことでした。アジアの陸上競技のレベルもかなり上がってきており、簡単には勝たせてもらえません。

 この大会で優勝すると、先に紹介したドーハで開催される世界選手権の出場資格が与えられます。世界選手権は標準記録を突破することが必要ですが、この標準記録を突破しなくても出場が可能となります。標準記録が高い種目にとって、ここでの優勝は大きいです。

 さて、結果ですが、日本は金メダル5個を獲得しました。前回大会から大きくメダル数を増やしました。内訳は、男子100mの桐生祥秀選手(日本生命)、男子走幅跳の橋岡優輝選手(日本大学)、十種競技の右代啓祐選手(国士舘クラブ)、男子4×400mリレー、女子100mHの木村文子選手(エディオン)です。銀メダルは4個、銅メダルは9個でした。

 横浜市関係者では、前にも紹介した横浜市立中山中学校出身の館澤亨次選手(東海大学)が男子1,500mで第5位、都筑区にある荏田高校出身の江島雅紀選手(日本大学)が棒高跳で第6位に入賞しました。2人ともメダル圏内でしたので惜しかったです。また、出身高校は長野県ですが横浜国立大学を卒業した宮坂楓選手(ニッパツ)も、女子三段跳に出場し第8位に入賞しました。今後の活躍にも期待したいですね。女子100mHで優勝した木村選手も横浜国大卒業です。

 

 地元カタールは、金メダルを2つ獲得しました。男子800mのAbubaker Haydar Abdalla(アブドラ)選手、男子400mHのAbderrahaman Samba(サンバ)選手です。2人とも世界トップレベルの選手で、特にサンバ選手は現在世界ランク1位です。しかし、サンバ選手はアフリカのモーリタニア出身で2015年にカタールに帰化しています。アブドラ選手もアフリカのスーダン出身です。100m9秒91のアジア記録保持者のFemi Seun Ogunode(オグノデ)選手もナイジェリア出身で、アフリカからの帰化選手が数多くいます。3,000m障害の世界記録はカタールのSaif Saaeed Shaheen(シャヒーン)選手でケニアからの帰化選手です。元の名前はチェロノです。走高跳の世界チャンピオン、Mutaz Essa Barshim(バルシム)選手はカタール生まれですが、父親はカタール人、母親はスーダン人です。

 カタールの北にあるバーレンも同じように帰化選手による強化を進めています。アジアでも世界のトップクラスの選手がおり、なかなか日本は勝たせてもらえない時代になりました。そのなかで5個の金メダル獲得は価値があると思います。

 

 私はドーハに行くのは3回目ですが、今回はコンディショニングが難しかったように思います。入国した時は気温40度を超す猛暑で、外を歩くことも大変な状況でした。そして、大会が始まると大嵐となり、夜は肌寒いという気候で、選手も体調を整えるのが難しかったと思います。


カタール郊外

 しかし今大会、日本選手団はまずまずの結果を残すことができました。シーズンは始まったばかりですが、日本陸上競技界にとって幸先の良い大会となりました。

 

 アジア選手権では、男子4×400mリレーで金メダル、ミックスリレーでも銅メダルを獲得しました。
5月11日からはいよいよ「IAAF世界リレー2019横浜大会」が始まります。前回のコラムで見どころを紹介しましたが、先日エントリー国、そしてエントリー選手が発表となりました。来日してほしい!の選手もかなりエントリーしています。かなりの国が本気のメンバーでエントリーしてきています。

 日本の男子4×100mリレーはメダルが目標です。4×400mリレーは8位入賞、女子もなんとか入賞したいところです。だめでもB決勝2位までに入ること、そして少しでも良い記録でゴールすることが目標です。

 世界選手権で今年初めて実施されるミックスリレーも面白そうです。世界大会として初めて開催されるシャトルハードルのミックスリレーもあります。日本はこちらもメダルを狙います。

 ぜひ日本リレーチームに熱い声援をお願いします。

 

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IAAF世界リレー2019横浜大会 概要

期日:5月11日(土)~5月12日(日)
場所:横浜国際総合競技場(日産スタジアム) 横浜市港北区小机町3300
種目:9種目(男子3種目、女子3種目、男女混合3種目)
男子3種目(予選・決勝):(1)4x100mR (2)4x200mR (3)4x400mR
女子3種目(予選・決勝):(1)4x100mR (2)4x200mR (3)4x400mR
男女混合3種目(予選・決勝):(1)4x400mR (2)シャトルハードルR (3)2x2x400mR ※(3)は、決勝のみ

チケットについては、大会公式サイトチケット情報でご確認ください。

主催:国際陸上競技連盟
主管:日本陸上競技連盟
共同主管:横浜市
運営協力:神奈川陸上競技協会
大会事務局:【日本陸上競技連盟事務局内】
〒163-0717 東京都新宿区西新宿2-7-1 小田急第一生命ビル17階

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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