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あんどうたかおのバスケにどっぷり

vol.169「ビーコル初CS・ベスト4」

Bリーグに加入して7シーズン目、これまで勝ち越したことすらない横浜ビー・コルセアーズ(ビーコル)が2022-23シーズン B1リーグを33勝27敗・勝率.550で終え、中地区2位となりCS(日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2022-23。8チームによるトーナメント、詳細は順位表 | B.LEAGUE(Bリーグ)公式サイト (bleague.jp))初進出が決まった!
その結果、同じ神奈川県の川崎ブレイブサンダースとクォーター・ファイナルで対戦することとなる…いわゆる「神奈川ダービー」と言われるもの。
Bリーグ当初から使われていたワードだが、当時から弱かったビーコル関係者である私にすれば川崎はとても敵う相手ではなく、「神奈川ダービー」などと言われることが本当に恥ずかしかった。
ただ個人的に川崎とは前身の「東芝レッドサンダース」時代からの付き合いがあった。ユニフォームや「Red Thunders」のロゴをデザインしたり、ゲームの取材に行くと、終了後に共同インタビューを仕切ることになったり…私にとっては赤の他人ではないチーム(笑)。

5月14日(日)、Bリーグ・チャンピオンシップ クォーター・ファイナルvs川崎ゲーム②。ビーコルは、前日のゲーム①で91-86とチャンピオンシップ初出場初勝利の1勝目を挙げて迎えた。
この日、川崎から前日のゲーム①で故障したジョーダン・ヒースの欠場が発表された。
マイケル・ヤング・ジュニアは手術のため既に帰国し、シューターのマット・ジャニングはベンチ入りしたものの怪我が回復せず、唯一人残っていた外国籍選手のジョーダン・ヒースまで右大腿前部筋挫傷のため欠場となり、ビッグマンは帰化国枠のニック・ファジーカスただ一人となった川崎。
川崎・北卓也GMはコーチ時代から常に「川崎はディフェンスのチーム」と言っていた。だから、外国籍選手不在の中、このゲームでは残った日本人ガード達が強いプレッシャーを掛け、ファール覚悟で当たって来ると予想したが、まさにその通り、強いプレスでボールに当たって来た。

ファジーカス以外2m大の選手がいない川崎にすれば、208㎝のNo.10チャールズ・ジャクソン(以下CJ)、203㎝のNo.15デビン・オリバーのI/S(インサイド、ゴール下周辺)攻撃を守るためには、ガード陣が前で強く当たり、ゴール下は197㎝の蒲田裕也と207㎝のファジーカスが守ることが良いのだろうが、ゴール下の2人は機動力がなさすぎる。
この日のように相手の大型選手がいなかったり弱いと判明した時、往々にして犯し易いのは「相手の弱点のI/Sを集中的に攻めろ」ということ。一見理にかなった考えだが、普段から練習しそのような攻撃をしていれば何ら問題はないが、急ごしらえで「I/Sの誰それにボールを集めシュートさせよう。積極的にATB(Attack The Basket。ドリブルで攻め込む)しよう」とか新作戦を立てても簡単にパスは通らないもの。まして相手はI/Sを固めているのでパスカットされやすいし、ドリブルで割って入る隙間がない。
その上、普段から積極的に練習していないプレーをしようとするようになると、ミスが起こりやすいうえ、リズムが崩れるので難しい!

しかし、この日のビーコルはそんなことなく、しっかり地に足の着いたプレーを続けた。最初のシュートはNo.6赤穂雷太(196㎝)のスリー(3点シュート)だった。入らなかったものの、セカンドチャンス(オフェンス・リバウンドを獲り攻めなおすこと)でオリバーがドリブルで割って入ってからのターン(左脚を軸に身体を一回転させる)でシュートを決め、次もオリバーがペイント内で大きく右方向へターンしてシュートを決めた。さらにディフェンスで名手・藤井祐眞からオリバーがスティール、そして悠々速攻ダンク。
川崎がスローインをもたついている間にビーコルは上から当たり、キャプテンNo.18森井健太(178㎝)が長谷川技(たくみ)のドリブルミスを誘発し、そのまま速攻を決め8-0とした残8分02秒、川崎の佐藤賢次ヘッドコーチはたまらずCTO(チャージド・タイムアウト)。開始2分も経たずのCTOは屈辱だっただろう。
その後もビーコルはディフェンスの手を緩めず、森井、オリバー、そしてベンチから出てきたばかりのNo.5河村勇輝(172㎝)が連続で2本と計4本のスリーで26-8とした第1Q残3分34秒、川崎は2回目となる前半最後のCTOを取らざるを得なかった。
ここで勝負は決まった!

I/Sを攻め守る外国籍選手も外からスリーを決める外国籍選手もいない川崎では、CJとオリバーと河村を擁するビーコル相手に対等に戦う力はなかった。
終盤川崎の追い上げを食らったものの104-84で勝利し、チャンピオンシップ初出場にして、ベスト4進出を決めた。


【ハイライト】CSセミファイナル進出決定!出だしから勢いに乗り握った主導権を渡すことなく勝利! 2023.5.14| 川崎 84-104 横浜BC
横浜ビー・コルセアーズ公式Youtubeチャンネルより)

シーズン前にはまさかこれほど強くなるとは思ってもみなかった。
本来外国籍選手が新しく2人加入というのはあまり良いことではない。3人中1人が替わるくらいが良いと思っている。2人残っていれば、チームの雰囲気や作戦を伝承出来るからだ。2人替わるとなると新チームといってよく、作り直すのに時間が掛かり、スタートが遅れてしまう。
しかし、ビーコルはCJとオリバーが早く馴染み、力を発揮したのが今シーズン成功のカギの一つだった。

そして一番の要因は誰もが指摘するようにNo.5河村勇輝の存在である。河村を中心に良い展開をしている。
しかし「河村のチーム」ではない!!
彼自身が常に記者会見で話すのは、「決して河村のチームではありません。ビーコルは全員が活躍するチームです」ということ。
それを証明するように青木勇人ヘッドコーチが良く言葉にする「日替わりでヒーローが出てくること」やキャプテン森井が言う「全員がスター!」。
これこそがビーコルの強みだ!

ここで今シーズンを河村の主要スタッツを元にして簡単に振り返ってみよう。


【Stats作成】あんどうたかお(画像をクリックすると大きな画像が開きます)

10月1日のシーズン開幕戦、ハイペースな展開で広島ドラゴンフライズ(今シーズン41勝18敗。以下同じ)に勝ち、幸先良いスタートを切った。ゲーム②はラッキー・シュートのブザービーターを決められ2点差負け。次節のvs島根スサノオマジック(48勝12敗)も勝てそうな接戦だった。しかし考えてみると、両チーム共にCS出場の強豪チームで、それらを相手に好ゲームを展開したことは開幕から強いチームになる気配はあった。

そして本領発揮したのが強豪名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(43勝17敗)戦ゲーム②。河村が22得点12アシスト、4度目のダブルダブル(1ゲームの中で、得点・アシスト・リバウンド等の内 2カテゴリーで2桁数を記録すること)で88-78の勝利。ただそれで気が緩んだのか次節の茨城ロボッツに連敗したのは痛かった。この当時は精神的にまだ発展途上だったのだろう。

快進撃が始まったのは12月に入ってから。
前シーズンBリーグ・チャンピオンの宇都宮ブレックス(32勝28敗)相手に河村がゲーム①・32得点、ゲーム②・34得点の活躍によりアウェーで連勝したのは大きな自信につながったと思う。
天皇杯を含む三遠ネオフェニックス(23勝37敗)3連戦も全勝したが、河村が新潟アルビレックスBB(13勝47敗)戦からのタイトなスケジュールに体調を崩し、3日後のシーホース三河(27勝33敗)戦は体調不良でプレーせず、仙台89ERS(19勝41敗)ゲーム①も連敗したが、その後は群馬クレインサンダーズ(29勝31敗)ゲーム①までリーグ戦5連勝。群馬とは年が明けての天皇杯も含め3連戦だったが、2勝1敗とした。
この結果、12月は天皇杯を含め10勝3敗と大躍進を遂げた。
今年に入り天皇杯を含め安定した戦い方が出て来た。勝率が同等か上位チームには1勝1敗で、勝率が低いチームには必ず2連勝する。それが出来ればシーズンの戦い方として合格点が与えられる。
但し残念ながら2月初めの千葉ジェッツ(53勝7敗)には歯が立たず連敗してしまった(涙)。
2月は天皇杯とワールドカップアジア予選の関係で、リーグ戦は4ゲームしか組まれなかったが、天皇杯セミファイナルの琉球戦で河村はスリー9本を含む45得点7アシストというとんでもない数字をたたき出した!!
3月、神奈川ダービーとなった川崎戦では、お互いベストメンバーで戦い、接戦の末、河村が勝負どころでスリーを決め81-79で破り、3月も5勝2敗と好調だった。
しかしとんでもない落とし穴が待ち構えていた。
4月2日vs滋賀レイクス(14勝46敗)ゲーム②で26得点4アシストを記録した河村だったが、このゲームで負傷していたことが判明。チームから「右大腿二頭筋損傷で全治4週間程度」と発表があった。
これからチームとして仕上げに入って行く時期に不在となるのはチームに大打撃。

それまで1ゲーム平均2.9本のスリーを含めた20.2得点と7.8アシストした選手がいなくなることだけでも大打撃。ましてや、ピンチの時にスリーを決める選手がいなくなるのはチームにとって大変つらいこと。
もっとも、一番辛いのは負けん気が強く勝利を欲しがる河村であることは間違いないが…。

4月8・9日のvs川崎2連戦ではオフェンスの歯車がかみ合わず、4月5日時点で平均81.9得点していたビーコルが、アウェーということもあっただろうが、平均を下回るゲーム①69点、ゲーム②77点しか取れなかった。
さらに当時10勝40敗、平均得点77.2点の富山グラウジーズ(15勝45敗中地区7位)にも87-91と大量失点と大乱調だった。
今さらながら河村の存在を再確認できた。

そんな中、4月19日vs新潟アルビレックスBB(13勝47敗)戦も河村不在で苦戦が続いたが、OTO(オフィシャル・タイムアウト。Bリーグ独自のルールで第2・第4クォーター残5分を切った後、時計が止まるかシュートが決まった時点で両チームに関係ないタイムアウトが自動的に取られる。NBAでは2分を切った時点)後、森川が森井からのアシストで、3連続でスリーを成功、勝負を決め31勝目を挙げた。
この日3位のサンロッカーズ渋谷(28勝32敗中地区4位)vs信州ブレイブウォリアーズ(29勝30敗中地区3位)戦でSR渋谷が敗れると、中地区2位以上となりCS出場が決まるが、その時点では数分を残してまだゲーム中。多くのブースターがスマホでバスケットLIVEの中継を見ている。選手達もベンチで動画を見ている。
そして数分して歓声が上がった、SR渋谷が敗けたー!!
シーズン当初に宣言したCS出場だー!!
私は2階の共同記者会見場から見ていたが、まさかこんな日が来るとは思ってなかった!

ただCS出場は時間の問題だったので、大感激というほどではなく、CSでの対戦がほぼ決まっている川崎とどう戦うか…と言う方が気になった。
河村は次節の三河戦から出場を決めたが、不在時にディフェンスのシステムが崩れたのか、河村が戻ってきても歯車がかみ合っていないように見えた。

シーズン最終ゲーム。
富山は勝てばB1残留、敗ければB2降格というプレッシャーのかかったこのゲーム。バスケIQが高く、ATBも得意でスリーも得意なマイルズ・ヘソンに40得点され、81-84で敗れた。このゲームはI/Sの要で得点源の一人であるCJが大事を取ってベンチに座りっぱなしだったこともあったが、翌週のCSクォーター・ファイナル川崎戦に向けた調整ができず不安が残った。

その川崎は怪我人が多く、万全の準備で戦うことができなかったため、2勝できたが、問題は翌週に控えたセミファイナル、琉球ゴールデンキングス(48勝12敗西地区1位)戦。
琉球とは今シーズンは1月のリーグ戦で〇67-51、×70-76、2月の天皇杯×91-96と1勝2敗。しかしながら、敗けゲームも接戦で、ビーコルとすれば河村が万全の態勢なら対等に渡り合える相手だが、肝心の河村はレギュラーシーズン最終ゲームvs富山ゲーム②で故障個所を悪化させ、プレータイムを制限された上、脚に強度の負担を掛けられず、持ち前のスピードを活かせない状態…。
その上会場は、アウェーの沖縄アリーナ。横浜からビーコル・ブースターも大挙応援に駆け付けたものの、アウェー状態では勝つことは難しい。
ゲーム①はスロースターターが響き70-86と差を開かれた。ゲーム②では競った展開だったものの第4Qにファールがかさみ、琉球にFTを決められ、84-88で逃げ切られ2敗となりCSが終った。

とはいえ、前シーズン22勝35敗、東地区8位・全体16チーム中15位だったチームがCSに進出すると誰が予想しただろうか?
強いだけじゃなく良いチームとなってくれて本当にうれしい!
来シーズンはこのメンバーで再挑戦してトップに上り詰めて欲しい!!

【写真提供】横浜ビー・コルセアーズ

あんたかショートショート・その1【フリースロー】
レギュラーシーズンのビーコルの弱点は…、FT(フリースロー)だった。
チームとして今シーズンは691/1106、成功率62.5%という結果で、成功率リーグ・ワースト1位だった。特に低いのがCJで、一番FTを獲得していながら173/348で49.7% 。つまり2本もらっても1本も入らないことがあったという情けない数字だったが、CSでは何と15/21で71.4%と大進歩した!!
チームとしてもCSでは59/73、成功率80.8%という信じられない進歩を遂げている。今シーズンのBリーグ平均成功率は72.7%なので、それと比較しても素晴らしい数字で、いかに集中していたか判るというもの!

あんたかショートショート・その2【手助け】
ビーコルを見ていてうれしいこと、また誇れることして、選手が床に倒れたら、敵味方関係なく走り寄って、起き上がらせようと手を差し伸べること。
CJがやり始めたことで、それだけでも美しいのに、ビーコル全員がそれを見習って 相手選手であろうが、直ぐに駆け寄り、手を差し伸べる。
往々にして相手選手より早く手を出している。
床に倒れ込むということは、多くの場合相手チームの選手と接触しているケースが多い。原因は何であれ感情的になりやすく、そこでいざこざが発生することが多い。
でも駆け寄って手を差し出されたら「ありがとう」とまではならなくても、「この野郎!!」という気持ちにはなりにくいもの。
これがスポーツマンシップ!!
神奈川県のバスケ選手に広まって欲しい「ビーコル・スタイル」として!

あんどうたかお プロフィール

1946年生まれ。

月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。

現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。

NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。

過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。

横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。

現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。

また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。

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