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あんどうたかおのバスケにどっぷり

vol.112「竹田が竹田らしくなり川村が一皮むけた2017年のビーコル」

 

 

 新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 

 今年のビーコル(横浜ビー・コルセアーズ)は新年早々2日からスタートしました。三が日のホームゲームは初めてのことで、チームとしてはお客さんが入ってくれるのか大変気にしていましたが、ふたを開ければ2日2,681人、3日3,160人と両日で6千人弱、昨年暮れの仙台戦より600人も多くの方が脚を運んでくれました。

 

 2日夕方の4時Tip Off(ゲーム開始)という時間が良かったのかもしれませんが、箱根駅伝を始めサッカーもラグビーも1日からTV中継されるので、お正月にスポーツ観戦するのが日本の一つの文化になってきたこと、そしてバスケットも世間から認められた証になるでしょう。

 

 13勝14敗で西地区4位の京都ハンナリーズは、浜口コーチの元、ディフェンスが強くパスが良く回り、日本代表を経験している日本を代表するシューター岡田やドイツのプロ経験を持つPG石崎を擁し、勝ち星こそ少ないものの評価の高い良いチームです。

 

 そしてもうひとつの特徴が連戦(Bリーグは同一チームと2日に渡って戦う)のゲーム①(1日目)に負けてもゲーム②では勝つことです。12月には22勝5敗のA東京と21勝6敗の栃木という東地区でブッチギリの1、2位チームにゲーム②では勝っています。これは浜口コーチの分析力と指示通りに修正できる高い能力を選手たちが持っているからです。

 

 

【ゲーム①】
 Bリーグでは外国籍選手が出場(オンザコート)できる枠はQ(クォーターの略。1ゲームは4回のQに分けられます)で制限されています。各チームはゲーム前に申告します(オンザコートルールの詳細は最後に書きました)。

 

 多くのチームは「2-1-1-2」or「1-2-1-2」に設定します。

 

 このゲームではビーコルが「1-2-1-2」に対し京都が「2-1-1-2」と違った設定をしたので前半が一つの山場になりますが、帰化選手は「0人及び1人」枠なら外国人とはならないため、ビーコルはパプ(#10ファイ・パプ月瑠)が帰化選手なので出場でき、これが帰化選手のいない京都相手ではビーコルの強みでもあります。そのため、第2Qと後半立ち上がりの第3Qでは有利になります。

 

 このゲーム、ビーコルのシューティング・スターのタク(#1川村卓也)は立ち上がりから3P(3点シュート)が好調で、第3Qまで5本の3Pを含む20得点、チームも58-44とリードしています。

 

 となれば京都は最終Qでタクに強いディフェンスを仕掛けてくるのは誰もが判ります。

 

 今までならそれでもシュートをするのがタクでした、勝負を付けるのが俺の仕事だ、とばかりに強いディフェンス相手に強引にシュートに持って行くことが多く、シュートが入れば逃げ切り、入らなければ逆転負け、というパターンが殆どでした。

 

 ところがこのゲームではリードが大きいせいもありましたが、無理にシュートまで持ち込むことはしませんでした。様子見をしている感じです。

 

 I/S(インサイドの略、ゴール下近辺)のJウォッシュ(#42ジェイソン・ウォッシュバーン)やJP(#4ジェフリー・パーマー)とタクの3人に京都ディフェンスが集中しているとき、マークが手薄になったビーコルのベテラン達はそれを見逃しませんでした。

 

 ケン(#25竹田謙)は3Pやミッドレンジ(3Pラインの内側でゴール下の四角い色違いの場所の間。中間距離)でボールを貰い、ディフェンスをかわしてバシバシとシュートを決めました。

ケン

 

 

 さらにケンジ(#13山田謙治)は、ドリブルでI/Sへ入ってのシュートを何本も決めます。今までもATB(Attack The Basket。ドリブルでリングに攻め込むこと)でI/Sへ入って行くことは多くありましたが、バスケットIQが高く状況判断が良いケンジに対し、京都ディフェンスは「センターを引き付けてパスをされる」と思ったのか、ゴール下なのにノーマーク状態が何度も有りました。シュート力のあるケンジは当然イージーショットで得点します。

ケンジ

 

 

 「ペイント内(ゴール下周辺の色が付いた四角いスペース)でノー・マークはいくら何でも失礼でしょう(笑)」とケンジが話すように、京都ディフェンスの裏をかいたベテランらしいプレーで2人で23得点(ケンジ13点、ケン10点)。これが効いて、タクが無得点でも悠々と83-75で新年初勝利、そしてホーム6勝目をあげました!!

 
 
 ゲーム後タクは「今日は周りの日本人が安定したプレーをしたのが良かったので」と、自分が無理にシュートに行かなくても良いと感じたようです。

 

 

 

【ゲーム②】
 京都の傾向からすれば、ゲーム①は落としてもゲーム②は絶対に取るためにアジャスト(修正)して、ディフェンスが一段と強くなる筈。さらに平均12.4得点の岡田にボールを集めて来る筈。

 

 案の定、岡田がスパートして立ち上がりの3分間で4得点をあげました。そして京都は前日にも勝る強いディフェンスでビーコルを抑えに来ました。対してビーコルはゲーム①でたったの8得点しか出来なかったJウォッシュと安定した動きのJPの二人がI/Sで得点して第1Qを18-20とまあまあの感じで終わると、第2Qはタクとマーシー(#0細谷将司)をベンチに置き、前日大活躍のケンとケンジのベテラン2人を起用しました。

 

 このQは第1Q同様JPとJウォッシュのI/Sと、ケンジのペネトレイトや3P、ケンの絶妙なスティール(相手ボールを奪うこと)からの速攻などで、34-30と逆転して前半を終了。結局タクとマーシーの出番は無く、二人は十分に脚を休ませることが出来ました。それでもリード出来る、つまりベンチ・スタート(ベンチ・メンバーともいう。控えメンバー)が強いということですが、これが新年を迎えての新しいビーコル・スタイルなのです。

 

 ベンチ・メンバーの得点をベンチ・ポイントと言いますが、これが多いチームは強いとNBAでも良く言われます。2年前のゴールデンステート・ウォリアーズや黄金時代のサンアントニオ・スパーズがまさにそれで、スターターの5人と同じくらいか時には上回る得点をしていました。

 

 後半に入り京都はさらに強いディフェンスでビーコルを抑えにかかり、徐々に点差を詰められ残5分47秒に38-38と同点にされますが、ここで嫌なムードを打ち破ったのはケンです。

 

 エンド・ライン沿いでボールを受けたケンはポンプ・フェイク(シュートの振りをすること)してディフェンスを跳ばしておいて、ワンドリブルしてユックリとしたジャンパー(ジャンプシュート)を決め、京都に逆転させませんでした。これが勝因のひとつでしょう。

 

 その後はJウォッシュなどの活躍で、最終Q残3分を切った時点で67-56として、安全圏に入ったと思いましたが、京都も意地があり、必死の追い上げを見せ残1分11秒に岡田がこのゲーム10点目となる3Pを決め67-64と3点差に詰めてきました。

 

 この切羽詰まった時に動いたのがタクです!

 

 ドリブルでリングにアタックし、このゲーム4点目で初となるFG(Field Goal。野投)を決め69-64と引き離します。

タク

 

 

 しかし残0分36秒、岡田の3Pシュートにカズが突っかけてファールを取られました。岡田と言えばクラッチ・シューターでFT(Free Throw。自由投)の確率は90%でFTの名手です。それも3PへのファールなのでFTは3本与えられます。3本とも入れられ69-67になることも覚悟しました。

 

 しかしそれを阻止したのは国際プールに応援に来てくれたブースターさん達です。FTラインでボールを受けた岡田に対し地鳴りのようなブーイング。国際プールは天井が高く音が響きづらい構造になっていますが、下から沸き上がり上からも降り注ぐようなブーイングで、鳥肌が立ったと言う人も居ました。

 

 それが岡田に指先を狂わしたのでしょう。1本目を外し、2本目も外し、ついに最後の3本目まで外してしまいました。

 

 そのリバウンドをJPが確保した時点で京都はギブアップ。ファールゲーム(リードされているチームが終盤故意にファールをして相手がFTを落とすことを期待するギャンブル・プレー)されますが、FTを6本中5本決め74-64で逃げ切り、ホームで初の連勝となりました。

 

 このゲームのMVPは、通常なら2ゲームで25点以上得点する岡田を、16点に抑えたビーコルのエースキラー・カズ(#2高島一貴)のディフェンスでしょうね。

カズ

 

 

 さて問題です。タクはゲーム①の第4Qからゲーム②全部、計5Qで何得点したでしょうか?
 答えは――たったの4点です!!

 

 撃った本数も5本だけで「タクが撃たなくても勝てる」ことを証明してくれました。タクだけを抑えれば勝てると思っていた相手チームには、脅威でしょうね。

 

 ビーコル、次のホーム・ゲームは滋賀レイクスターズを迎えて1月28日(土)29日(日)に国際プールで行います。その前に21日(土)22日(日)にはアルバルク東京と東京の墨田区総合体育館で戦います。

 

 

 

【外国籍選手の登録数とオンザコートルール】
B1オンザコートルールは、試合ごとに各クラブが設定し、事前申請制する。
 a.B1およびB2リーグ戦におけるオンザコート数は以下のとおり
 b.各クラブの帰化選手の登録数は、1名以内
 c.各クラブの外国籍選手および帰化選手の登録数は、合計3名以内
  1)1試合(1~4Q)でオンザコート総数6枠が上限
   ※延長時限は両クラブともオンザコート2
  2)各クォーター0~2名の範囲でクラブごとに設定
  3)試合前に申請し、対戦クラブ間で共有
 d.帰化選手の出場については、下記のとおり オンザコート0の時間帯:帰化選手の出場可
  オンザコート1の時間帯:外国籍選手1名以内と帰化選手1名以内
  オンザコート2の時間帯:外国籍選手と帰化選手を合わせて2名以内
   ※帰化選手…満 16 歳となった後に国籍法に基づく帰化によって日本国籍を取得した選手
   ※外国籍扱いしない選手…日本国籍を持たずとも、日本で出生または出育し、日本の小学校および中学校を卒業して義務教育課程を修了した選手(JBA「基本規程」を適用)
 

 

 

 

【ウィンターカップ】
 ウィンターカップは毎年末に行われる高校生の大会で、男女とも各県より1校+高校総体(インターハイ)上位2チーム+開催県の計50チームによる完全トーナメントで競われます。

 

 

◆女 子
 神奈川県代表は横浜市の県立旭高で、現3年生が中心となり、昨シーズンから県内では敵なし状態でした。とはいえ最近の女子は全国的に見ると、県立金沢総合高が低迷したため、力は下がってました。

 

 このチームは熊谷日毬(3年161cm成瀬中)の得点を中心にして、落ち着いたプレーの菊地真琴(3年160cm神田中)と3Pが得意な安彦かすみ(3年160cm南瀬谷中)と長身・楠本唯奈(3年178cm共和中)と2年生富樫ひなた(170cm坂本中)でシーズンをスタートしました。

 

 熊谷が2年生の時は、チームの得点源としてクラッチシュートの連発で、終盤で逆転や引き離しのパターンが多かったのですが、3年生になった時に熊谷をPG(ポイントガード。司令塔)に据え、不安定だった楠本のI/Sが安定し、菊地と安彦の3Pやペネトレイトで得点するパターンとなり、ディフェンスもより強くなり、さらに昨年度のインターハイとウインターカップで経験を積めたことで、様々な場面でマイナスをプラスに変える力を身に付けたことで、県内では安定した力を発揮するようになりました。

 

 1回戦は岩手県の一関学院高と対戦し74-55、2回戦は石川県の鳳学園高相手に57-44と危なげなく勝ち進み、3回戦は難関の東京都代表・八雲学園高です。スタメンに180cm奥山と176cm佐藤、同じく176cm吉田を擁する高さと強さを持つ強豪チームです。ハイスコアの戦いとなり、八雲ビッグマン3人に各29点をたたき出され、結果としては89-99で敗れてしまいましたが、大健闘と言えます。

 

 ゲーム後「八雲とは練習試合を1回やっており、ダブルチームなどのトラップとゾーンディフェンスが有効だと考えていましたが、1、2回戦チームへのアジャストもあり準備不足でした。ダブルチームはある程度有効でしたが、ローテーションの練習が足りず、相手が慣れてくると簡単なシュートを許してしまいました」とコーチの講武先生は反省の弁を述べていました。続けて「しかしあの苦しい試合で、チームのフリースロー20/21は立派だと思います」とも。

 

 このゲームで熊谷が久々に32点という高得点をあげました。一時自分の得点を封印し、PGとして楠本を活かしたり、ディフェンスを引き付けて菊地や安彦のプレーを導き出したりし、チームの勝利に貢献してきましたが、昨年のインターハイでも自ら得点するなど、強い相手ほど力を発揮するタイプですが「相手のレベルが上がった時に得点できるのは、スコアリングセンスが高いと思う。単に得点を取っただけでなく、ディフェンスもリバウンドも頑張っていました」と講武先生は言っていました。

 

旭高校2

 

 

旭高校1

写真提供:日本バスケットボール協会

 

 

 

◆男 子
 神奈川県代表は川崎市の桐光学園です。1回戦はシードされ大分舞鶴高を81-57で下してきた兵庫県代表・育英高です。実は育英高はインターハイ2回戦で強豪・明成高を破ったチームなのです。立ち上がりに育英は3P が良く入り、11-33とリードされます。

 

 桐光はI/Sの要・植松義也(3年191cm柿生中)が、早々にファールトラブルでベンチに下がったのが痛く誤算でした。最長身の宮本一樹(2年195cm原中)は外から攻めるフォワード・タイプなので、I/Sで核になる選手が居ないためオフェンス・リバウンドも獲れず、田代幹(3年183cm豊田中)や東山勝彦(3年178cm南菅中)が外から撃つものの、確率が低くなります。かろうじて新田嵐(3年172cm南希望ヶ丘中)のATBや宮本の外からのシュートで得点出来るだけでした。

 

 第2Qに入り桐光は得意の強いディフェンスやトラップ(ボール獲得を目指し2人以上で強く守るディフェンスのこと)で育英を苦しめるものの、攻撃ではバスケットへアタックせず3P頼りになってしまい、追いつけず74-83で敗れてしまいました。

 

 やはりリングへアタックしたり、I/Sで得点しなければ簡単には勝てないし、チキンと言われてしまいます。3Pは入れば一気に点差を詰められる武器ですが、コンスタントに入るという保証はどこにもありません、というより簡単には入らないものと考えるべきです。現にこのゲームで、桐光は9/28で確率が32%、決して高くはありません。ゴール下まで攻め込まないから相手のファールは、桐光17個に対したったの11個、FTもたったの5投だけで、これじゃ勝てません!!

 

 数年前の悪い状態の桐光を見るようで寂しかったですねー!!

 

 

 ウィンターカップについての詳しい情報は以下のサイトをご覧ください。
こちらから → ウィンターカップ情報

 

 

 

【オールジャパン】
 男子は川崎ブレイブサンダースvs千葉ジェッツ、女子は富士通レッドウェーブ vs JX-ENEOSサンフラワーズとの戦いになり、男女とも神奈川県vs千葉県となってしまいました。

 

 残念ながら男女とも千葉に優勝をさらわれてしまいましたが、女子JXで34得点した渡嘉敷来夢に次いで23得点して優勝に大きく貢献したのは、金沢総合高出身の宮澤夕貴です。

宮澤選手

 

 

 182cmと長身ながら、今シーズンから3Pが大幅に改善され入るようになり、準決勝のトヨタ自動車アンテロープス戦でも間宮佑圭に次いで16点も挙げ、勝利に大いに貢献しました。

 

 

 オールジャパンの詳しい情報については以下のサイトをご覧ください。

こちらから → オールジャパン情報

 

 

あんどうたかお プロフィール

1946年生まれ。

月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。

現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。

NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。

過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。

横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。

現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。

また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。

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