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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.14「横浜市立間門小学校に」

 4月21日(木)横浜市立間門小学校に「走りのコツ」を教えに行ってきました。
 間門小学校は中区本牧町にあります。すぐ裏は三渓園で、校庭が大小2つもあります。かつては海岸がすぐ横まできていたので海水浴もできたそうです。今は海水浴ができない代わりになんと水族館があります。間門小学校は、この素晴らしい環境の中で、健康を教育テーマとし、横浜市の健康・スポーツの模範となる小学校だそうで、長い歴史と伝統があります。
出迎えてくださった校長先生の前田先生はスポーツに大変ご理解のある先生でした。この恵まれた環境を十分に活用し、いろいろなアイデアで子ども達をご指導されています。身体を動かすことの楽しさを常に追求、研究される熱心な先生で私も大変勉強になりました。私の卒業した小学校は、蒔田の小高い丘の上にあり、間門小学校の小さいほうの校庭くらいの広さのグランドが一つあるだけです。間門小学校の環境はうらやましい限りです。
 さて、私は今回、小学校6年生に「走り方」を教えに行ってきました。「走り」にはコツがあります。「走る動作」は単純ですが、単純な動作ほど細やかなスキルが必要となります。例えば、どこに足を着いたらよいかなど、数センチ、いや数ミリの単位で変わってきますし、関節の使い方も単に固めるのでもなく、緩めるでもなく力加減は大変難しいのです。そんなコツを少しでも体感してもらおうとレクチャーしてきました(写真1)。

(写真1)小学校6年生に「走り方」を教えに行ってきました
(写真1)小学校6年生に「走り方」を教えに行ってきました

 3クラスでしたので1クラス1時間分(40分授業)、ほんのさわり程度しか教えることができませんでしたが、子供たちは非常に熱心で、話をしっかりと聞いてくれるし(写真2)、なにより理解度が高く感じられました。別に持ち上げようという気は全くありません。本当に意識レベルの高い小学校でした。

(写真2)子供たちは話をしっかりと聞いてくれるました
(写真2)子供たちは話をしっかりと聞いてくれるました

 3時間分を終了し、給食をごちそうになって帰りましたが、前田校長先生とのお話は大変共感でき、あっという間に時間が過ぎてしまいました。私にとっても充実した一日になりました。ありがとうございました。
 こうした元アスリートが(現役アスリートも含む)小学校などを訪問するという活動は、子供たちにとって大変良い経験になると思います。アスリートでなくても文化的な活動をしている方でもよいのですが、子供たちが本物に触れる機会、本物を目の当たりにする機会があるということは感性や情動を刺激するツールとして非常に有効かつ重要な教育手段と思います。私たち元、現含め、アスリートにとってこれは使命だと思っています。私たちも今までいろいろなモノを受け取ってきました。これを伝えていくのが今の私たちの役目なのです。できるだけこうした活動は続けていきたいと思っています。またこれらの活動が私にとってもよい機会となっています。

(写真3)子ども相手にムキになって走る私
(写真3)子ども相手にムキになって走る私

 この走るですが、皆さんは何歳くらいから走ることができましたか?
 なんて覚えていませんよね。私もまったく覚えていません。
 また、「歩く」と「走る」の違いは何だと思いますか?
 「歩く」と「走る」の違いは、非支持期があるかないか、つまり両方の脚が空中に浮いているときがあるかないかで区別されます。空中に浮いているときをリープ動作やリーピングなどといいます。
 Espenshade(1967)によると走運動の出現は生後18カ月〜21カ月とされ、2歳ともなればかなり安定した走動作を獲得するとしています。筑波大学の宮丸教授は、生後17カ月〜23カ月の10名の幼児で10mの直線コースを走らせ(歩かせ?)、いつ走る動作がみられるのかを実験しました。まっすぐに歩けないとか転倒とか、大変な実験だったようですが、そのうちの1人に、生後17カ月(68週目)のときはリープ動作が見られなかったのですが、69周目でわずか0.04秒の空中に浮いた局面(リープ動作)が認められました。初めての走動作です(図1 疾走能力の発達 宮丸凱史より)。

(図1) 疾走能力の発達 宮丸凱史より
(図1) 疾走能力の発達 宮丸凱史より

 このときの歩幅は37.1センチで、歩いているときの歩幅(37.5センチ)とほぼ変わりませんでした。身長比は0.48で、身長の半分にも満たない程度のストライドです。
個人差はありますが、生後約8カ月でつかまり立ち、そのままつたい歩きを始めて、12カ月からは歩きだします。そして約1歳半では、すでに走り出すのですから人間ってすごいですよね。
 この走動作は疾走と呼べるものではありませんが、「走る」という動作は、このころから頭の中に刻み込まれていきます。以前神経の話をしましたが、幼少のころの運動経験は大きくなってからの運動能力に大きな影響を与えます。早く走りを覚えなければいけないということではありませんが、「走る」や「投げる」「跳ぶ」などといった基礎的動作は80ほどある(図2)とされていますが、6歳から7歳くらいまでにはそのすべてを修得している(しているのが望ましい)と言われています。


(図2)基礎的運動パターン

 間門小学校の子供たちは、小学校1年生から素晴らしい環境の中、野山を駆け回って、遊びや運動を楽しんでいます。自然環境はもちろん、充実した設備、発想力あふれた指導。ここで育った子供たちは将来どんな人間になっていくのだろうと楽しみになります。私もこんな小学校に行きたかった。

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会男子短距離部長。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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