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SPORTSよこはま2010 APRIL Vol.18

スポーツ医科学センター スポーツと健康

横浜市スポーツ医科学センター長●中嶋 寛之

1.メタボからロコモへ

  皆様もご存知のように平成20年度から厚労省主導でメタボ対策が始まりました。メタボとはMetaboric Syndromeの略で、いわゆる内臓脂肪が原因となって肥満が生じ、その結果その下流にある高血圧・糖尿病・高脂血症などが重なって発生する危険な病態をさします。これらを薬で治すとなると、それぞれの治療が必要となるのでお金もかかります。しかし、定期的にスポーツや運動をしたり、食事の習慣を改善したりすることにより肥満を退治できれば、これらの病気を治療したり予防したりすることができるのです。薬剤費がかからないということは、今問題になっている医療費の削減にもつながる一石二鳥の政策ということになるので、厚労省も肝いりで力を入れているわけです。
  実際の運動方法としては、手軽でお金もかからない方法としてウォーキングやジョギングなどが勧められています。しかし、ひざや腰の痛みがあるため歩くことや走るのが困難な人は、プールでの水中運動や器具を用いてのひざ・腰に負担のかからない運動など個別の運動指導が必要となります。
  さて、メタボは内科的な病気が中心で年代的には中高年が対象となりますが、近年のように高齢化が進み65歳以上の人口の割合が21%を超えた超高齢社会では、内科的な疾患がないにもかかわらず老齢のために筋力が弱ったり、ひざや腰の痛みのために動きが不自由になったり、自立した生活を送るのに不便を感じたりする人が多くなりました。
  一般に介護の対象となる人は、脳卒中などの脳血管性疾患や心筋梗塞などの心臓循環器系疾患や認知症などが多いと思われていますが、高齢になればなるほどひざ痛や腰痛などの運動器疾患が原因で要介護となる人が多いのです。その背景には、骨粗鬆症、ひざ・腰の変形性関節症、脊柱管狭窄症などの整形外科的な病気もありますが、老齢による全身的な筋力やバランス能力の低下が原因の場合もあります。日本整形外科学会では、これらの運動器の機能の低下による要介護・寝たきりの人たちを予防しようとして「ロコモ」対策を提唱しています。ご存知の方も多いと思いますが、ロコモとはLocomotive Syndromeの略で、骨・関節・筋肉など運動器の機能低下による要介護予備軍に対する警報の意味がこめられています。平均寿命が延びたのに比してこれらの運動器の耐用年数が相対的に短くなっていることが原因といえます。
  これからは幼少の頃から少なくとも80年、できれば100年位の運動器の耐用性を見込んでおくことが必要です。それには子どもの頃からのスポーツや体育に始まり、高齢に至っての介護予防につながるようなスポーツ活動や運動習慣を身につけておくことが勧められるのです。
  それでは、どのような基準でロコモ対策のチェックがされているか具体的に項目をあげてみましょう。皆様も要注意者に該当しないかどうか当てはめてみてください。

2.ロコチェックの7項目

 1)片脚立ちで、靴下がはけない。
 2)家の中でつまずいたり、滑ったりする。
 3)階段を上るのに、手すりが必要である。
 4)横断歩道を青信号で渡りきれない。
 5)15分くらい続けて歩けない。
 6)2kg程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である。
 7)家のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難である。

  これらの項目は日常自立した生活を送るのに必要な動作で、一つでもできない場合は、骨や関節あるいは筋肉などの運動器になんらかの支障があると考えられます。介護予備軍となる危険性があるので予防のための対策が必要であるといえましょう。
一般的に高齢者に必要なトレーニングの内容としては、

  1)有酸素運動
  2)筋力トレーニング
  3)バランス訓練
  4)ストレッチ

  などがあげられます。
  このうち、誰にでも勧められるのが有酸素運動で、ウォーキング、ジョギング、エアロバイク、水泳などをさします。筋力トレーニングはジムやスポーツセンターなどでウエイトやマシーンを使って行われますが、強い負荷や無理なメニューは血圧を上げ危険ですので、医師と相談しながら実施するのがよいでしょう。また回数も週1〜2回に制限したほうが良いでしょう。バランス訓練には手軽な方法として片脚起立やスクワットなどがあり、太極拳もお勧めの体操です。ストレッチは関節周囲の動きを良くして転倒予防などにも役立ちますので、毎日行ってもよい内容です。

3.ロコモ対策としてのトレーニング(ロコトレ)

  以上の高齢者向けのトレーニングを本格的に行わないまでも、手軽に自宅で実行できる方法として、日本整形外科学会ではロコモ対策のトレーニングを推奨しています。開眼片足立ち(片足で立つので通称フラミンゴ療法)を続けて1分間、これを1日3回程度(イラスト参照)。また、スクワット体操もひざ周囲の筋力を強めるのに適しています。「ふらつき」や「転倒」などを起こしては危険ですので、図のように机や椅子を手近に備えたり、つかまって支えとしたりして行うほうが安全です(イラスト参照)。

ダイナミックフラミンゴ療法
片方の脚で、左右各1分間ずつ立つ。足は大きく上げる必要はない。脚は前の方向に上げてもよい。

ダイナミックフラミンゴ療法イラスト

スクワット
①の姿勢を保ちながら、いすに腰掛けるようにお尻をゆっくり下ろす。ひざは曲がっても90°を超えないようにする。腹筋や背筋、太ももの後ろの筋肉に力が入っているかを確かめながら行うとよい。動作はゆっくりと行う。呼吸は深呼吸をするように、ゆっくりお尻を下ろすときに息をはき、立つときに息を吸う。

スクワットイラスト

  高齢者はさまざまな故障を抱えている人が多いので、前述のようにトレーニングにも医学的な配慮が必要となります。横浜市スポーツ医科学センターでも、今年度からロコモ対策を盛り込んだ新しい内容のバランス・歩行教室を開設しております。この機会に是非関心のある方は利用されることをお勧めします。
 

スポーツ医科学センター スポーツと健康

横浜市スポーツ医科学センター長●中嶋 寛之

1.メタボからロコモへ

  皆様もご存知のように平成20年度から厚労省主導でメタボ対策が始まりました。メタボとはMetaboric Syndromeの略で、いわゆる内臓脂肪が原因となって肥満が生じ、その結果その下流にある高血圧・糖尿病・高脂血症などが重なって発生する危険な病態をさします。これらを薬で治すとなると、それぞれの治療が必要となるのでお金もかかります。しかし、定期的にスポーツや運動をしたり、食事の習慣を改善したりすることにより肥満を退治できれば、これらの病気を治療したり予防したりすることができるのです。薬剤費がかからないということは、今問題になっている医療費の削減にもつながる一石二鳥の政策ということになるので、厚労省も肝いりで力を入れているわけです。
  実際の運動方法としては、手軽でお金もかからない方法としてウォーキングやジョギングなどが勧められています。しかし、ひざや腰の痛みがあるため歩くことや走るのが困難な人は、プールでの水中運動や器具を用いてのひざ・腰に負担のかからない運動など個別の運動指導が必要となります。
  さて、メタボは内科的な病気が中心で年代的には中高年が対象となりますが、近年のように高齢化が進み65歳以上の人口の割合が21%を超えた超高齢社会では、内科的な疾患がないにもかかわらず老齢のために筋力が弱ったり、ひざや腰の痛みのために動きが不自由になったり、自立した生活を送るのに不便を感じたりする人が多くなりました。
  一般に介護の対象となる人は、脳卒中などの脳血管性疾患や心筋梗塞などの心臓循環器系疾患や認知症などが多いと思われていますが、高齢になればなるほどひざ痛や腰痛などの運動器疾患が原因で要介護となる人が多いのです。その背景には、骨粗鬆症、ひざ・腰の変形性関節症、脊柱管狭窄症などの整形外科的な病気もありますが、老齢による全身的な筋力やバランス能力の低下が原因の場合もあります。日本整形外科学会では、これらの運動器の機能の低下による要介護・寝たきりの人たちを予防しようとして「ロコモ」対策を提唱しています。ご存知の方も多いと思いますが、ロコモとはLocomotive Syndromeの略で、骨・関節・筋肉など運動器の機能低下による要介護予備軍に対する警報の意味がこめられています。平均寿命が延びたのに比してこれらの運動器の耐用年数が相対的に短くなっていることが原因といえます。
  これからは幼少の頃から少なくとも80年、できれば100年位の運動器の耐用性を見込んでおくことが必要です。それには子どもの頃からのスポーツや体育に始まり、高齢に至っての介護予防につながるようなスポーツ活動や運動習慣を身につけておくことが勧められるのです。
  それでは、どのような基準でロコモ対策のチェックがされているか具体的に項目をあげてみましょう。皆様も要注意者に該当しないかどうか当てはめてみてください。

2.ロコチェックの7項目

 1)片脚立ちで、靴下がはけない。
 2)家の中でつまずいたり、滑ったりする。
 3)階段を上るのに、手すりが必要である。
 4)横断歩道を青信号で渡りきれない。
 5)15分くらい続けて歩けない。
 6)2kg程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である。
 7)家のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難である。

  これらの項目は日常自立した生活を送るのに必要な動作で、一つでもできない場合は、骨や関節あるいは筋肉などの運動器になんらかの支障があると考えられます。介護予備軍となる危険性があるので予防のための対策が必要であるといえましょう。
一般的に高齢者に必要なトレーニングの内容としては、

  1)有酸素運動
  2)筋力トレーニング
  3)バランス訓練
  4)ストレッチ

  などがあげられます。
  このうち、誰にでも勧められるのが有酸素運動で、ウォーキング、ジョギング、エアロバイク、水泳などをさします。筋力トレーニングはジムやスポーツセンターなどでウエイトやマシーンを使って行われますが、強い負荷や無理なメニューは血圧を上げ危険ですので、医師と相談しながら実施するのがよいでしょう。また回数も週1〜2回に制限したほうが良いでしょう。バランス訓練には手軽な方法として片脚起立やスクワットなどがあり、太極拳もお勧めの体操です。ストレッチは関節周囲の動きを良くして転倒予防などにも役立ちますので、毎日行ってもよい内容です。

3.ロコモ対策としてのトレーニング(ロコトレ)

  以上の高齢者向けのトレーニングを本格的に行わないまでも、手軽に自宅で実行できる方法として、日本整形外科学会ではロコモ対策のトレーニングを推奨しています。開眼片足立ち(片足で立つので通称フラミンゴ療法)を続けて1分間、これを1日3回程度(イラスト参照)。また、スクワット体操もひざ周囲の筋力を強めるのに適しています。「ふらつき」や「転倒」などを起こしては危険ですので、図のように机や椅子を手近に備えたり、つかまって支えとしたりして行うほうが安全です(イラスト参照)。

ダイナミックフラミンゴ療法
片方の脚で、左右各1分間ずつ立つ。足は大きく上げる必要はない。脚は前の方向に上げてもよい。

ダイナミックフラミンゴ療法イラスト

スクワット
①の姿勢を保ちながら、いすに腰掛けるようにお尻をゆっくり下ろす。ひざは曲がっても90°を超えないようにする。腹筋や背筋、太ももの後ろの筋肉に力が入っているかを確かめながら行うとよい。動作はゆっくりと行う。呼吸は深呼吸をするように、ゆっくりお尻を下ろすときに息をはき、立つときに息を吸う。

スクワットイラスト

  高齢者はさまざまな故障を抱えている人が多いので、前述のようにトレーニングにも医学的な配慮が必要となります。横浜市スポーツ医科学センターでも、今年度からロコモ対策を盛り込んだ新しい内容のバランス・歩行教室を開設しております。この機会に是非関心のある方は利用されることをお勧めします。