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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.63「アジア陸上競技選手権大会」

 

 

 

6月2日から7日まで中国・武漢市でアジア陸上競技選手権大会が開催され、中国に行ってきました。この大会で優勝すると8月に中国・北京で開催される世界陸上の参加資格が得られるので、たいへん重要な大会です。

 

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男子100m走では、アジア新記録が樹立されました。記録は9秒91(+1.8)で、出したのは昨年仁川のアジア大会でアジア選手2人目となる9秒台(9秒93)をマークしたフェミ・オグノデ選手(カタール)です。

オグノデ選手は、この大会100m走に続いて200m走(20秒32)、4×400mリレー(3分02秒50)に優勝し、3冠を達成しました。

アジア人選手初の9秒台は、今大会8位に沈んだサミュエル・フランシス選手(カタール)で、フランシス選手は2007年、同じアジア選手権で9秒99をマークしています。

このカタールのオグノデ選手とフランシス選手ですが、実はアジア出身ではありません。ナイジェリア出身の選手です。アフリカ出身なわけですから黒人種(ネグロイド)なのです。

 

では、黄色人種(モンゴロイド)はというと、今年5月30日にアメリカ・オレゴン州ユージンで開催されたIAAFダイヤモンドリーグ第3戦で、中国の蘇炳添(そ へいてん)選手が黄色人種初(アジア人選手としてはフランシス選手、オグテノ選手に続き3人目)の9秒99をマークしました。ユージンの大会は追い風1.8mの好条件で、タイソン・ゲイ選手(アメリカ)が9秒88で優勝、2位が9秒90でマイク・ロジャース選手(アメリカ)、蘇選手はそのあと、3着に入りました。4着には世界陸上優勝経験者のキム・コリンズ選手(セントクリストファー・ネービス)、5着がネスタ・カーター選手(ジャマイカ)とそうそうたるメンバーの中、この記録と順位です。立派ですね。

 

日本は先を越されてしまった形になってしまったのですが、5月10日に川崎で開催されたゴールデングランプリでは、日本の高瀬慧選手(富士通)がこの蘇選手に勝っているので、日本人選手も9秒台のチャンスはあります。

 

今回の大会は、蘇選手はリレーのみの参加でしたが、中国にはもう1人10秒00の記録をもつ張培萌(ちょう ばいほう)選手が出場していました。張選手は100m走に出場し、オグノデ選手に次いで10秒15で2着に入り銀メダルを獲得しました。3着はイランのレザ・ガセミ選手が10秒19の記録で入り、レベルの高いレースとなりました。

日本人選手はというと、大瀬戸一馬選手(法政大)が残念ながら準決勝で敗退でした。あと一人で決勝進出だったので、あと一歩足りませんでした。

 

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中国はタレント発掘として、能力のあると思われる子供に英才教育をすることで知られていますが、蘇選手や張選手はどうなのでしょうか。情報があまりないのですが、もしかしたら幼少の時期から専門的なトレーニングを積んできたのかもしれません。

 

この英才教育システム、日本にもあるのは皆さんご存知ですか。日本オリンピック委員会(JOC)はJOCエリートアカデミーという中学生と高校生を対象とした競技者育成事業を東京赤羽にあるナショナルトレーニングセンターで行っています。1期生は2008年で、現在は卓球やレスリング、フェンシングで成果を上げ始めています。

 

また、日本スポーツ振興センターでは、ナショナルタレント発掘・育成(NTID)プロジェクトを2012年度から実施しています。こちらはJOCエリートアカデミーと違って広く門戸を開いています。JOCエリートアカデミーはその競技で秀でた成績を上げなければならないのですが、ナショナルタレント発掘・育成(NTID)プロジェクトは、その時々の募集に合致する人なら応募できるようになっています。そこから選抜された人は、専門的なスポーツ指導を受けることが出来る可能性が開かれます。

 

ちなみにいま募集しているのは、高身長の人です。身長が男子190cm以上、女子170cm以上の13歳以上30歳未満の人を募集しています。興味のある方は以下のページを開いてみてください。

アスリートエントリーサイト「Gateway」はこちらをクリック

 

2020年東京オリンピックまであと5年ですが、今から準備・強化していかないと東京オリンピックで日本が活躍するのは難しいでしょう。それにはタレント発掘・育成は非常に大事なことです。オリンピックが自国で開催されるなんてそうないことですし、それに関われることは大変貴重です。私も何か力になれればと思っています。

若きアスリートやアスリートを目指す皆さん、チャンスは皆さんにあるのです。

 

 

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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