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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.61「テキサスリレー」

3月28日(土)、アメリカ・テキサス州オースティンにあるテキサス大学で開催されたテキサスリレーで、日本の桐生祥秀選手(東洋大学)が追い風参考(+3.3m)ながら9秒87の記録をマークし、見事に優勝を果たしました。私も日本陸上競技連盟の男子短距離部長としてテキサスに行ってきました。

 

今回の9秒台は、追い風参考記録ながらも9秒台を出したということもすごいのですが、それよりも2着Ryan Baileyは自己ベスト9秒88でアメリカのリレー代表経験もある選手、そして3着のCharles Silmonのベストは9秒98、4着Mark Jelksも9秒99、8着Raquiem Mookie Salaamは9秒97、これらの選手に先行してゴールしたことの方が高い評価をしてよいと思います。

 

 

 

 

Texas Relays Men 100 Meter Dash Invitational

 

1着 9秒87 桐生 祥秀(日本)
2着 9秒89 Ryan Bailey(アメリカ)
3着 9秒91 Charles Silmon(アメリカ)
4着 9秒96 Mark Jelks SR(ナイジェリア)
5着 10秒02 Ronnie Baker JR(アメリカ)
6着 10秒07 Antoine Adams SR(セントキッツ・アンド・ネイビス)
7着 10秒15 山縣 亮太(日本)
8着 10秒17 Raquiem Mookie Salaam(アメリカ)

 

 

 

 

 

日本に帰国すると、ものすごい数の報道陣が待っていました。まあ事前に連絡は入っていたのですが、これほどまでとは思いませんでした。

 

しかし、報道陣の熱気と対照的に冷静な我々の対応との温度差に気づかれた方もいるかもしれません。我々はあくまで今回の記録は追い風参考(追参:おいさん)ですので公認の9秒台ではありませんから、そのような対応をしたからだと思います。我々にしてみれば、少し騒ぎ過ぎでは、という印象なのです。とはいえ、9秒台を予期させる記録を出したことに変わりはなく、これほど注目してくれることは大変ありがたいことです。

 

 

さて、気になるのが3.3mの追い風で9秒87なら公認では何秒なのか、ということだと思います。しかし、これは明確な数値を出すことは難しいのです。ただ、いくつか算出方法は研究されています。

 

簡単にわかりやすくいうと風速1mで0.1秒ないくらいですね。だいたい0.09から0.08秒などと言われています。しかし、体格や走り方、風の吹き方もありますので完全には正確ではないと思います。あくまで目安と思ったほうがいいでしょう。

 

今回のレース、+3.3mがもし+2.0mだったとしたら、9秒台は出ていたかもしれません。ただ、私の立場で憶測でものを言うことは避けたいです。しかし、期待させる記録なことは確かです。

 

Xデーは4月19日(日)、広島で開催される織田記念陸上競技大会となることが濃厚です。この大会は記録が出ることで知られている大会です。条件次第ですが、公認の9秒台が出る可能性は高いと思います。皆さん、注目してください。

 

 

 

 

それから、今回のレースとは別のことなのですが、今回テキサスに遠征して、テキサス大学オースティン校の広大なキャンパスと施設に驚愕しました。テキサス大学は学問でも名門校ですが、スポーツも大変盛んで、特にアメリカンフットボールは大学選手権47回の優勝を誇る強豪です。

 

アメリカでは、ご存知の方も多いと思いますが、アメリカンフットボールが盛んで、大学内のスポーツでは最もステータスがあります。大抵アメリカンフットボールのコーチや選手が学内スポーツを取り仕切っています。

 

そして、テキサス大学のアメリカンフットボールのスタジアムであるDarrell K. Royal-Texas Memorial Stadiumの収容人数はなんと8万5千人です。ちなみに日産スタジアムは7万2327人で、これが日本国内最高です。国立競技場は約4万5千人でした。新設している新国立競技場は8万人収容だそうです。まだ負けていますね。

 

しかし、一大学がそんなに大きな競技場を持っているなんて驚きです。テキサス大学にはこの巨大なスタジアムの他、アメリカンフットボール専用の室内練習場や陸上競技場やアリーナもあります。

 

 

 

 

アメリカの、特に州立大学の収入は日本の国立大学の5倍もあります。私立でも倍はあります。うらやましい限りです。それだけ教育に重点を置いているということでしょうか。また、事業収入も大きくて様々な事業を展開しています。事情が違うところも多いですが、日本の大学も手本にしなければなりません。

 

選手を先にテキサスへ行かせて、私は後からテキサスに入りました。私のテキサス遠征は弾丸ツアーで、テキサス滞在時間約30時間、機内2泊でした。なかなかキツかったです。でも良いレースが観られたし、収穫がありました。ちなみに4×100mリレーも38秒84で2着でした。本当は1着でしたが…(アメリカはあり得ない行為のため、ホントは失格のはずでした)。

 

 

今年の男子短距離にぜひ注目してください!

 

 

 

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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