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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.98「18年トラックシーズン開幕」

 2018年トラックシーズンが始まりました。4月29日(日)には広島で織田記念陸上が、5月3日(木)は静岡で国際陸上が開催されました。5月20日(日)には、昨年まで川崎で開催されていたゴールデングランプリが大阪で開催されます。
 

 

 日本人2人目の100m9秒台が期待された織田記念陸上大会では、セイコー所属の山縣亮太君が10秒17で優勝しました。10秒17という記録は決して悪くない記録なのですが、どうしても9秒台に期待がかかってしまうので、残念な記録にみえてしまいます。でも、それは日本の短距離のレベルが上がっているということと、それを観ている皆さんの期待が大きくなったということなのでしょう。
 

 

 静岡国際でも男子400mHでデサント所属の安部孝駿君が48秒68の自己ベストをマークして優勝しました。この記録も良い記録です。20日の大阪の大会でも好記録が期待されます。楽しみですね。
 

 

 さて、今年の陸上界は大きなルール変更がありました。いくつか紹介したいと思います。まず、競技会から退場(除外)させられる“レッドカード”というサッカーのようなルールができました。
 

 例えば、競技を妨害する行為などがあった場合、その程度にもよりますが、警告が与えられます。警告にはイエローカードが出されます。どんな行為が妨害なのかというと、スタート時にほかの競技者がスタートについているのにスタートにつかないでいたり、音をだして妨害したり、何もないのにレースを中断させたり遅らせたりすることで、イエローカード2枚でレッドカードが出され、その競技会から除外となります。
 

 スタートの時に「ピクッ」と動いてしまった時も警告の対象です。しかし、悪意のあるものではない場合が多いですし、すべての「ピクッ」が警告となるわけではありません。中学生の大会ではうまく静止できないことが多いですからね。
 

 そしてこの警告の対象は競技者だけではなく、コーチも対象で、競技会を妨害しようとするすべての人が対象となります。一度その競技会でレッドカードを出されてしまうと、その競技会のすべての種目で除外となり、ほかの種目にエントリーしていても出場ができなくなってしまいます。

 つまり、100mでレッドを受けてしまったら後に残っている200mやリレーにも出場できなくなってしまうということです。大会期間中はイエローカードが累積されますので、予選で1枚、準決勝で1枚としてしまうと合計2枚でレッドカードとなります。種目が変わっても、です。その大会期間中有効なのです。違う競技会に累積することはありません。
 

 これが国内の大会でも有効となります。しかし、大会によってはその種目だけにすることも可能で、これは主催者の判断となります。中学生の大会や高校生の大会では配慮がありそうです。
 

 リレーのゾーンも変更となります。今までは4×100mリレーのバトンの受け渡しを行うバトンゾーンは20mでしたが、これが手前に10m延びて30mとなります。日本代表クラスでは影響は少ないかもしれませんが、走力差のある中学や高校では戦略的にこのルールを有効活用するチームが出てくるかもしれません。学校の体育授業でのリレーの教え方も変わってくるかもしれませんね。

 跳躍競技では、試技の制限時間が変わります。跳躍競技のうちの走り高跳び、走り幅跳び、三段跳びでは今まで試技時間は1分与えられていましたが、これからは30秒となります(競技者4人以上の場合)。これにより、よりスピーディーな競技展開になります。良い風を待ったり、集中したりする時間が短くなって影響を受ける競技者がいるかもしれません。
 

 他にもいくつかの変更が発表されました。陸上競技のような歴史と伝統のある競技でも、ルールの変更は毎年のようになされます。観る人によりわかりやすい、スピーディーな競技運営が優先されている感も否めませんが、より良い陸上競技界とすべく日々進化しているのでしょう。
 

 5月はゴールデングランプリが大阪であり、そのあと我々は関東インターカレッジという大会を迎えます。例年新横浜の日産スタジアムで開催されることが多いのですが、今年は日産スタジアムが使用できず、相模原市麻溝のギオンスタジアムを使用します。
レッドカードが出ませんように。

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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