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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.97「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ」

 新年度に入り、新天地で新たな生活に入られた方も多いと思います。日本陸上界では、4月6日(金)新年度のカンファレンスが国立医科学センターで開催されました。

 強化選手やそのコーチたちに今年の日本陸上界の方針や大会の選考方法などたくさんの話題がここで発表されます。また、今年からルールがかなり変更となるのでその講義もあり、選手たちも真剣に聞いていました。

 そして、2019年度からの話になるのですが、この年(2019年)のドーハ世界選手権参加資格が大きく変更されることになります。その話の詳細も説明がなされました。

 今まで世界選手権は、国際陸上競技連盟が決めた参加標準記録を突破して出場していたのですが、それがポイント制のランキングによる出場資格決定になります。種目ごとに出場枠が決まっており、決められた期間のポイント上位が世界選手権に出場できることになります。前回大会優勝者に与えられるワイルドカードを除いて各国3名までエントリーできるわけですが、ランキング制になると必ずしも記録が良い競技者が選出されるという訳ではなく、ポイントによって出場者が決まっていきます。大会でのポイント獲得は記録が高いだけではだめで、順位やその大会のグレードも関係してきます。これで真に強い競技者が選出できるようになるのかもしれません。

 しかし、まだ決まっていないことも多く、我々も不安になります。詳しい話はまたいつかしますね。

 

 さて、実は日本陸上界では明るい話題がありました。

 2月25日に開催された東京マラソンで、ホンダ所属の設楽悠太選手が2時間06分11秒の日本記録をマークしました。従来の記録は、現カネボウ監督の高岡寿成さんが2002年にマークした2時間06分16秒で、16年ぶりの更新となりました。
日本記録を樹立した設楽選手は、報奨金1億円をゲットしました。1億円とは!夢がありますよね。設楽選手は今回のカンファレンスにも出席していました。

 設楽選手のラップタイムは、5キロを14分51秒で通過、10キロは29分44秒、20キロを59分27秒です。箱根駅伝予選会で20キロを1時間以内で走ればかなりの上位に入ります。59分27秒なら10位以内でしょう。

 

 ラップはこんな感じです。

 5 km:14分51秒
10 km:29分44秒(14分53秒)
15 km:44分36秒(14分52秒)
20 km:59分27秒(14分51秒)
《ハーフ:1時間02分43秒》
25 km:1時間14分24秒(14分57秒)
30 km:1時間29分20秒(14分56秒)
35 km:1時間44分20秒(15分00秒)
40 km:1時間59分31秒(15分11秒)
《ゴール:2時間6分11秒》

 なんとキロ平均2分59秒と少しで走っている換算で、平均3分を切っています。キロ3分は100m18秒ペースです。これで42.195キロずっと走っているんです。驚きです。

 

 皆さんは2020年東京オリンピックのマラソン日本代表の選考方法をご存知でしょうか。今までのとは全く違う方法で選考がなされます。ややこしいので簡単に説明します。

 マラソンの出場枠は3枠。

 まず、マラソングランドチャンピオン(MGC)レースで2枠が決まります。このレースは2019年9月に開催され、優勝者は即時内定します。そして2位か3位でこのレースを含めこれまでに派遣設定記録を突破した上位1名が内定します。どちらも派遣設定記録を突破していない場合は、2位の選手が内定します。

 派遣設定記録は、男子は2時間5分30秒なので、1位2位で決まるのではないでしょうか。女子は2時間21分00秒ですから、2位が必ずしもではないかもしれませんね。MGCレースで男女2名ずつの枠が決まります。

 残り一枠は、MGCファイナルチャレンジといって、2019年度シーズンの男子は福岡、東京、びわ湖の3大会、女子はさいたま、大阪、名古屋の3大会において、2019年5月に発表される派遣記録を突破した最上位記録の選手に内定が出されます。つまり一番記録の良い人が選ばれるわけです。派遣記録を突破するものがいなかった場合、MGCレースの次点が内定することになります。

 現在、MGCレースの出場資格のあるランナーは、男子は設楽選手をはじめ12名、女子が6名です。これからまだ増えていくと思います。また、ワイルドカードといって、世界の主要大会で決められたタイムを突破したランナーや2018年度インドネシアで開催されるアジア大会で3位以内のランナーなどが追加されます。

 

 理解できましたでしょうか。わかりづらいですよね。すみません。

 簡単に言うと2019年9月以降に行われるMGCレースで2名が残り、1名はそれ以降に行われるレースで最も記録の良いランナー、と覚えてもらえれば概ね良いのではないかと思います。

 ※図は略式で正確ではありません。
 

 いままでの選考よりは明確になったのではないでしょうか。今まで、マラソンの選考はいつも話題になっていましたからね。疑惑の選考なんて言われて。まあ、でも陸連が選考した選手はちゃんと活躍していたりしているんです。やはり専門家の目は確かです。ただ、スッキリはしませんでしたよね。でも、私はこれをネタにしてしまえばいいんじゃないかと思っていました(おっと、不謹慎発言)。

 

 とにかく、現在、女子でもダイハツの松田瑞生さんが大阪国際女子マラソンで2時間22分44秒という好記録を出し、男女日本マラソンが面白くなってきました。そしてその選考も日本中が注目しています。MGCレース、いまから楽しみですね。

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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