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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.74「ドーハ」

 

 

今、私はカタール・ドーハに来ています。陸上競技の世界最高峰のシリーズであるダイアモンドリーグ第1戦が5月6日に開催され、日本代表のリレーチームを率いて参戦しています。

 

ドーハ

 

 

リレーは男子4×400mリレーで1人400m、4人で1600mを走ります。マイルリレーともいいます。日本ではこの時期、春季サーキットシリーズという大会が開催されていて、4月29日に広島、5月3日は静岡、8日には川崎でゴールデン・グランプリが開催されています。これらの大会は春季サーキットシリーズといって国内では大変重要な大会なのですが、この春季サーキットシリーズの出場をせずになんではるばるドーハにレースをしに来ているのかというと、4×400mリレーのリオ・オリンピックの参加資格を得るために来ているのです。

 

ポスター

 

 

陸上競技のリレーはほかに4×100mリレーがあります。こちらは既にリオ・オリンピックの参加資格を得ています。2015年5月にバハマ・ナッソーで開催された世界リレー選手権で入賞したからです。つまり、リオ・オリンピックに出場するチームは、世界リレーにおいて既に8か国は決まっています。日本の男子4×400mリレーは、世界リレーには出場はしましたが入賞できませんでした。リオ・オリンピックに出場できるのは16か国です。残りの8か国は、2015年1月11日から今年の7月11日までの記録のランキング上位に参加資格が与えられます。しかも、2つのレースの平均のランキングです。

 

日本の4×400mリレーの順位は17位。つまり、枠から漏れています。ちなみに女子の4×100mリレーも17位、4×400mリレーは15位にいて、いずれも微妙な位置にいます。
16位はベネズエラ、差はなんと0.01秒差、15位のアイルランドとも0.11秒差で接戦です。日本としては15位のケニア(1秒38差)まで追いついて安全圏内に入ることが一先ずの目標です。その為には3分02秒08以内で走らなければなりません。
日本の2レースは3分02秒97と3分03秒47です。3分03秒45を出せばベネズエラは抜くことだけは出来るわけです。

 

そこで、日本チームはなんとか世界上位16位以内に入るため、ナショナルリレーチームを編成し、4月30日にアメリカ・フィラデルフィアで開催されたペンリレーという大会に参加しました。ペンリレーはペンシルバニア大学のフランクリン・フィールドで行われる伝統ある大会で、120年以上の歴史を持つアメリカ最古の陸上競技大会と言われています。
そして迎えた4月30日、ペンリレーでの日本チームの成績は3分05秒64でした。記録を上げることができませんでした。

 

ということで、代表チームはフィラデルフィアからドーハに飛びます。チケットは世界一周チケットです。

 

ドーハでは記録を必ず出さなければなりません。しかし、ドーハではランキング20位のカタール、21位のサウジアラビアが参戦しています。これらの国に負けてはいけません。さらに勝ったとしてもカタールに0秒48差、サウジアラビアに0秒36差をつけないと逆転されてしまうのです。

 

我々に課された目標は、「3分01秒台、カタール、サウジアラビアに負けない」ということです。

 

そして5月3日を迎えました。多少の風はありますがコンディションは最高。夜9時5分のレースですが、気温は29度から30度。少し暑いですが湿度は低く、記録を狙うには絶好のコンディションとなりました。

 

レース前

 

 

我々は勝ちに来たのではなく記録を求めに来たわけですから、選手たちは積極的にレースを展開していきます。レースは白熱したものとなりました。
1走田村朋也選手(住友電工)が果敢に飛ばし、強豪ボツアナに次いで2位で2走金丸祐三選手(大塚製薬)にバトンをつなぎます。ボツアナは世界リレーで入賞し、既にリオ・オリンピックの出場権を得ています。金丸選手も積極的な走りをみせ、3走小林直己(東海大学)に2位でバトンを渡します。3名とも良いペースで走ってきました。記録の期待は4走加藤修也選手(早稲田大学)にかけられます。加藤選手は1位ボツアナに追いつき抜きにかかります。しかし、ボツアナも簡単には抜かせてくれません。そしてラストボツアナに少し遅れて加藤選手がゴール。カタール、サウジアラビアにも差をつけ、記録は3分02秒45で2着に入りました。目標記録には届きませんでしたが、2レースの平均を3分02秒710とし、15位に押し上げることに成功しました。4人ともよく走ってくれました。

結果はこちらをクリック(IAAF)

 

集合写真

 

 

リオ・オリンピックのリレー出場権が決まる7月11日まではまだ2カ月もあります。その間にアフリカ選手権やヨーロッパ選手権など大きな大会があり、これから日本の上位に入ってくる国があるかもしれません。まだまだ安心はできません。したがって日本チームもあと2レースを想定しています。

 

陸上競技のリレー種目ではこんな感じでリオ・オリンピックに出場するために頑張っています。現在、いろんな競技でオリンピックの出場権を獲得すべく世界で戦っています。少し様子がお分かりいただけたでしょうか。

 

とにかく陸上競技大会でリレーが出場できないのは本当に寂しいものです。7月11日まで気が抜けませんが、なんとか出場へ向けて頑張りますので応援のほどよろしくお願いします!!
みなさんの声援が選手の背中を押してくれます!次のレースの予定は7月3日韓国・金泉のレースです。女子も出場します!!

 

 

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

ブログ

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