ハマスポ

 
横浜市風景シルエット
 
       
 

ハマスポロゴハマスポ

横浜市風景シルエット
 
注目ワード
 
元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.121「家で簡単にできる筋力トレーニングを紹介」

3月24日(火)、東京2020の延期が発表されました。まずは、開催中止が避けられたことに安堵しました。好意的な発言は多くのアスリートからも出てはいますが、複雑な気持ちで受け止めているアスリートもいると思います。特に2020を競技人生の集大成として目指してきたアスリートにとって、1年は大変重いものです。

しかし、今やるべきことは自身、そして自身の周りの人を守ることです。前を向いていくしかありません。できうる準備を最大限にするしかないことは皆、理解していることでしょう。すべてのアスリートを応援したいですね。

 

さて、4月7日(火)、政府から神奈川県を含む7都府県に緊急事態宣言が発出され、私の大学も入構禁止になってしまいました。

多くのスポーツ施設が使用禁止となり、運動する機会が減少してしまった方もいると思います。緊急事態宣言が出されても公園などでのウォーキングやジョギングの制限はされていませんが、なかなか、外に出ることが難しい方もいると思います。

そこで、今回は家で簡単にできる筋力トレーニングを紹介します。

 

寂しげなグランド

 

筋には、大きく3つの発揮の仕方があります。

1つ目は腕を曲げて物を持ち上げるような動かし方(短縮性筋収縮:コンセントリック)、2つ目は物を持ち、引き延ばされながらも力を発揮しているような動かし方(伸張性筋収縮:エキセントリック)、もう1つは物を持ち、そのまま動かさず保持しているような状態です。

イメージしにくいかもしれませんが、例えば腕相撲で相手を押し倒していくときが1つ目、負けそうになって押し戻されていくときが2つ目、力が拮抗して動かないときが3つ目です。

3つ目の筋発揮の仕方をアイソメトリックス(アイソメトリクス)と言います。筋の長さを変えないので等尺性筋収縮ともいいます。このアイソメトリックスのトレーニングは比較的安全で、場所を取らないトレーニング法として知られ、筋力の増加も認められています。やり方しだいですが、時間も少なく済ませることが可能です。体幹トレーニングなどで知られるスタビライゼーショントレーニングもこの一種です。

私は現役時代、どうしても練習ができないときなどは筋力の維持を目的に、アイソメトリックストレーニングを行っていました。短時間で最大努力の筋力を発揮することもできるので効率が良いトレーニングといえるでしょう。

 

~アイソメトリックス トレーニング~

まず、上体から。
図1は、身体を正面から見た図です。両手を合わせる形にして内側、矢印の方向に力を入れます。力は、最大でもいいですし少し緩めても大丈夫です。自身で加減しましょう。時間は、10秒くらいまでで良いと思います。こちらも調整しながら無理なく、数秒でも良いと思います。

気を付けることは呼吸です。トレーニングの間、呼吸を止めないようにしましょう。呼吸を止めてしまうと急激な血圧上昇を引き起こしてしまう可能性があります。数秒でしたら息を吐き続けるのも良いと思います。手を握って逆に引くようにすれば背中が鍛えられます。

図1

 

続いて、下半身です。
図2は脚を前方に伸ばしてクロスしている図です。この状態で上にある脚は下へ力を入れ、下にある脚は上に力を入れます。四頭筋(腿の前の筋肉)やハムストリングス(腿の後ろの筋肉)が鍛えられます。

図2

 

図3は、脚の間に枕やクッションを挟んで内側に力を入れます。内転筋(腿の内側の筋肉)が鍛えられます。

図3

 

~プライオメトリクス トレーニング

伸ばされた筋肉を即座に収縮させるプライオメトリクスのトレーニングは、さまざまなものがあります。インターネットなどで探してみると多くのトレーニングが紹介されています。
また、実施した角度より大きく変わる場合は筋力アップの効果がそれほどでもないという報告もありますのでさまざまな角度で試してみるのも良いと思います。このトレーニングは、筋の使い方というよりも筋力への効果が高いと思います。私は、筋力維持くらいのイメージでやっていました。

このような状況の中、運動不足にならぬようにしなければなりません。プライオメトリクストレーニングは場所を選ばず時間もかからない簡易で効果のあるトレーニングです。試してみてくださいね。

 

 

緊急事態宣言が発令されるという経験は誰もが初めてのことだと思いますが、みんなでこの状況を乗り越えていきましょう!

 

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

ブログ

http://skarube.blog46.fc2.com/

※タイトル・本文に記載の人名・団体名は、掲載当時のものであり、閲覧時と異なる場合があります。