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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.107「女子リレー強化」

 日本陸上競技連盟は、1月12日(土)と26日(土)に女子リレー強化に向けて、リレーメンバーの選考トライアルを行いました。男子のリレー、特に4×100mリレーは、オリンピックや世界選手権などの世界規模の大会でもメダルを獲得していますが、現在、女子リレーは世界規模の大会に参加することさえ危ぶまれています。

 かつて、リレー種目も個人種目と同じように参加標準記録を突破すれば出場できたのですが、近年はリレーに出場できる国数は16か国と固定されています。ですから、以前より世界規模の大会に出場することが難しくなってしまったのです。


トライアルの様子(遠いですが)

 昨年(2018年)の世界ランキングは女子4×100mリレーが国別で26位、女子4×400mリレーは同32位で厳しい位置にいます。
 ちなみに男子はイギリスに次いで第2位です。本年度は世界大会がなかったので記録的には少し下がっているはずなので、女子は厳しい状況にあります。

【2018年度女子4×100mリレー世界ランキング】
 1位 41秒88 イギリス
 2位 42秒05 アメリカ
 3位 42秒15 オランダ
 4位 42秒29 ドイツ
 4位 42秒29 スイス
 6位 42秒52 ジャマイカ
 7位 42秒59 中国
 8位 42秒73 バーレーン
 9位 42秒75 ナイジェリア
 10位 43秒06 フランス

 2018年度の女子4×100mリレーの世界ランキングでは、同じアジアの中国は42秒59で7位に位置しています。日本記録は2011年にマークされた43秒39で、本年度のランキングでいうと13位相当です。

 同じく、4×400mリレーも日本記録は3分28秒91で14位相当です。ですから、世界選手権やオリンピックに出場することは決して不可能ではありません。

 ただ、出場するだけでなく男子リレーのようにメダルとまではいかないまでも、決勝に残って戦いたいのです。4×100mリレーでは、4人の100m走の合計記録からだいたいですが、2秒5から7くらいを引いた記録で走ることができます。

 日本記録43秒39で走るには4人の合計で45秒9から46秒1くらいが必要で、1人11秒5くらいの記録を持つメンバーでリレーを編成しなければなりません。

 2018年度の100m日本ランキングトップは11秒41で福島千里さん(セイコー)です。2位市川華菜さん(ミズノ)で、11秒43、3位世古和さん(CRANE)11秒50と11秒5はクリアしています。

 4番目は日本体育大学の広沢真愛さんで11秒53です。4人の記録を足すと45秒87、2秒5を引いて43秒37で日本記録が出る計算となります。今の状態でも日本記録近くは十分出せる力があると思います。

 今回の選考で、女子4×100mリレーと女子4×400mリレーそれぞれ9名が選考されました。このメンバーが、国立スポーツセンターや沖縄での強化合宿を経て、3月に女子4×100mリレーはシンガポールで、女子4×400mリレーはテキサスで実戦トライアルをします。

 そして、4月ドーハでのアジア選手権、5月日産スタジアムで開催される世界リレー選手権大会を目指します。


前回の世界リレーの様子(2017年バハマ・ナッソー)

 世界リレー選手権大会で決勝に進出すると、今年9月に開催される世界選手権に出場することができます。さらにその世界選手権で8位に入賞すると、東京オリンピックの出場権が与えられる予定です。

 したがって、ここからすでに東京オリンピックへの戦いが始まっているといえます。今回の女子リレーメンバーのトライアルによる選考は、時期は遅くなってしまいましたが、とても画期的な取り組みであると思います。

 男子リレーは世界基準となりました。女子もきっとできるはずです。私は、アドバイザーという形で女子リレーにかかわっています。少しでも力になれたらと考えています。まず最大の目標は5月11日-12日、日産スタジアムで行う世界リレーで決勝に進出する、もしくは、日本記録近い記録を出すことです。

 日本人選手にぜひ熱い声援を送ってくだい!

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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