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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.51「国立競技場」

5月11日(日)国立競技場で現国立競技場最後の陸上競技大会が開催されました。2020年東京オリンピック開催が決まり、国立競技場の建て替えが決定したことから、11日のIAAF(国際陸上競技連盟)のセイコーゴールデングランプリが陸上競技最後の大会となったのです。私は、テレビの解説者として大会に参加しました。大会前には小学生と中学生を対象とした陸上教室もあり、そちらの講師もしてきました。最後の大会にかかわることができて嬉しく思います。

陸上教室の講師の依頼はテレビ解説よりも後に受けました。テレビ解説と講師の両方は準備の関係で大変でしたが、自分自身がもう一度グラウンドに立ちたい気持ちが強く、引き受けました。

サッカーやラグビーもそうですが、国立競技場は陸上競技の聖地です。大学1年生の時、初めて国立競技場で走れた時は本当に嬉しかったですね。陸上競技をやっている者として一度は国立競技場で走りたいと思って、あまり調子は良くなかったのですが、無理やり走った記憶があります。その後、1991年には世界陸上東京大会で走ることができました。1997年には400mハードル(H)で日本記録を樹立しました。そんな思い出の国立競技場がなくなるのはとても寂しいのですが、新しい国立競技場も本当に楽しみです。

陸上教室は大会前の1時間程度でしたのでたいしたことはやれませんでしたが、小学生にもこの競技場で走った思い出を残してほしかったので一緒に100mを走りました。

本当は私が走りたかったのですが…。

国立競技場の正式名称は国立霞ヶ丘競技場といいます。1964年東京オリンピックのメイン会場でしたのでオリンピックのために建てられたと思われている方が多いと思いますが、実はオリンピックのためではなく、1958年アジア大会と東京国体のために竣工された競技場です。あまり知られていないかもしれませんね。

現在の国立競技場の前は、明治神宮外苑競技場がありました。この神宮競技場は1924年に完成しています。その前は大日本帝国陸軍の青山練兵場で、さらにその前、江戸時代は広大な野原だったようです。日本陸上競技大会の最高峰、日本選手権大会はこの1924年に第12回大会が神宮競技場で開催されています。

横浜では三ツ沢公園陸上競技場があります。三ツ沢公園陸上競技場は県内初の公認陸上競技場で1951年に完成しました。1998年に横浜国際総合競技場(現名称:日産スタジアム)ができるまではここが横浜市のメイン競技場でした。陸上競技場の隣にある蹴球場(三ツ沢公園球技場、現名称:ニッパツ三ツ沢球技場)は1964年の東京オリンピックではサッカー会場にもなっています。

現国立競技場では、1991年世界陸上ではカール・ルイスが100mで9秒86の世界記録を樹立しています。同年、走り幅跳びではマイク・パウエルが8m95の世界記録を跳んでいます。この記録は今でも世界記録として残っています。私の400mH日本記録(当時)は現在でも国立競技場日本人最高記録だそうです。どうでもいいですが…。

国立競技場は7万人収容で、完成当時アジア最大の競技場でした。この競技場を手本にしている競技場が日本各地に存在しています。

国立競技場は「力強さ」「簡潔」「優美」というデザインコンセプトで建築家の片山光生が設計した素晴らしい競技場なのですが、実は観客席からみると110mHという種目で8レーンのスタートが見えないという欠陥があります。観客席が前にせり出しているので8レーンのスタート位置が隠れてしまうのです。前述したように国立競技場を手本にした陸上競技場は日本には多くあります。ですから、110mHの外レーンのスタートが見えにくい競技場がたくさんできてしまいました。

新国立競技場のデザインは斬新ですが、サブトラックが作られないという情報があります。サブトラックはメインの競技場に付設するウォーミングアップ場なのですが、これがないと世界陸上や日本選手権、国体、インターハイなどを開催するには支障があります。新国立競技場の建設計画にはサブトラックはありません。地下にでもよいのでぜひサブトラックを作っていただきたいですね。

また、サッカー専用競技場にしたほうがいいのではという悲しい声も多く聞かれますが、サッカー開催の時は観客席が前に移動するなどしてとにかくトラックだけは残してほしいです。どうかご理解を。

現国立競技場は7月から解体工事に入るそうです。そして2015年10月、新国立競技場に着工し、2019年3月完成予定だそうです。結構かかりますね。

解体した現国立競技場の走路の切れ端、記念に欲しいですねぇ。

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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