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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.30「インカレ」

 9月9日(日)から12日(水)の4日間、第81回日本学生陸上競技対抗選手権(全日本インカレ)が国立競技場で開催されました。日本の学生陸上競技の最高峰の大会です。高校生でいうと全国高校総合体育大会(インターハイ)です。

 私の大学はわずかに入賞2つでした…。のでコメントは控えます。横浜関係者では男子110mHで山手高校出身の佐藤大志選手(青山学院大)が、女子1500mで白鵬女子高校出身の望月晴佳選手(順天堂大)が優勝しました。2人とも接戦を制し大学チャンピオンとなりました。おめでとうございます。

 この全日本インカレには8月のロンドンオリンピックに日本代表選手として出場した学生が出場していました。女子4×100mリレーに出場した市川華菜選手(中京大)は100m、200、4×100mリレーに優勝と3冠を達成し、男子200mと4×100mリレーに出場した飯塚翔太選手(中央大)は100m、男子4×400mリレーの中野弘幸選手(愛知教育大)が400mで、棒高跳びの山本聖途選手(中京大)もそれぞれ優勝を果たしました。オリンピック選手が負けるわけにはいきませんからプレシャーもある中よく頑張りました。

 一方、オリンピック選手でも怪我で欠場する選手も多くみられました。学生にとってオリンピック出場は身体に大きな負担を与えていたことでしょう。中でも慶應義塾大学の山縣亮太選手が100m準決勝で怪我、200mでも中央大学の飯塚翔太選手が途中で止まるなどオリンピックの影響かとも思われるアクシデントがありました。私がオリンピックで無理をさせてしまったのではないかと少し責任を感じてしまいます。みな若く、まだまだこれからが世界との勝負です。頑張ってほしいものです。

 さて、話は変わりますが、ダッシュVol.7でも走るコツを少し紹介しましたが、今回も“速く走るにはシリーズ”として少しお話したいと思います。このシリーズは不定期です。
今回のテーマは「もも上げ」です。

 お父さんお母さん世代は速く走るために「もも上げ」をやった世代と思います。わたしも中学時代は「もも上げ」全盛期でした。この「もも上げ」実は今はほとんどやられていません。といいますか、解釈が少し違う感じで存続しています。ただ、「ももを高く上げて!」はもうほぼ死語ですね。

 もも上げは、東京オリンピック後の1970年代、日本陸上競技連盟が招聘したポーランド人コーチのゲラルド・マック氏が伝えたトレーニング方法の1つとされています。そのトレーニング法はマック式と呼ばれ、日本の陸上競技界に急激に浸透していきました。後になってこのマック式の「もも上げ」は間違っていると批判されたのですが、マック氏は「ももを上げなさい」と指導したのではないようです。マック氏の指導を日本が勝手に「もも上げ」と解釈し、それが広まってしまったのが真相と言われています。

 特に日本人は骨盤が欧米人よりも立っていますので余計に「もも上げ」の効果は少ないと思われます。

図1

図1の左は骨盤が前傾した姿勢です。中央は骨盤を立てています。欧米人は骨盤が日本人よりも前傾していると言われています。お尻が上を向いている感じです。立つという表現は適格ではないかもしれませんが、日本人は骨盤が立った感じが多く、お尻が下がった様に見えます。この状態でももを上げると右の図のように脚は高く上がりますが、ももを上げることで腰がもっと落ちてしまい、力が抜けてしまうのです。

図2

 世界一流選手の疾走時の動作を分析した結果、ももが高く上がっている選手ほど速いという結果にはなっていません。さらに言うと、脚を降り出す角度やお尻のほうに引き付ける角度なども速さとはあまり関係がないと報告されています(図2)。では、どうしたら…。

 私はどのように指導しているかというと「ももが上がることが悪いことではない」とまず説明し、無理にももを上げないように言っています。

 地面に足がついて力を地面に伝え、その反発が身体に返ってきます。多少動員はしますが、その反動で帰ってくる分だけ上がればいいという感じです。ボールを下に落とすとその高さのエネルギー(位置エネルギー)を落ちることで運動のエネルギーに変換しバウンドしてくるのに似ています。地面に力を伝え、うまく受け取ることができればももは上がってきますし、効率よく走ることができるようになります。このうまく受け取るのが難しいのかもしれませんが、無理にももを上げるのはよくありません(特に日本人は)。

 「もも上げ」よりも「もも下げ」な感じなのです。イメージできましたか?

 またいつかコツを伝授しますね。

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会男子短距離部長。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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