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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.24「4×100mリレー」

 毎年この時期3月は沖縄に来ています。昨年に引き続き、沖縄から情報発信したいと思います。今いるところは沖縄市です。沖縄市は昨年までは横浜ベイスターズのファームがキャンプを張っていたところで、横浜ベイスターズは横浜DeNAベイスターズとして生まれ変わり、今年は宜野湾市でキャンプを張ったようです。私たちは、沖縄市と嘉手納町を中心にトレーニングをしていますが、この嘉手納はベイスターズのファームが2月1日から19日までキャンプを張っていた競技場です。

 2月の終わりの合宿ではかつて日本ハムファイターズでゴールデングラブ賞にも輝いた現横浜DeNAベイスターズ内野守備走塁コーチの白井一幸さんとご一緒させていただき(飲み会)、大変勉強になりました。白井さんは選手時代、プロ野球界ではタブー視されていたウエイトトレーニングを初めて取り入れた方でかなりの理論派です。
他の競技をやっている方との交流は、大変興味深く、面白いです。競技種目は違えども通じることが多々あり、とても共感できます。
この横浜DeNAベイスターズ、今年は中畑新監督のもと、大暴れしてくれることを祈っています。
さて、私たちは今年ロンドンオリンピックというビッグイベントがあるため、2月後半に第1次合宿、3月初旬からは第2次合宿を沖縄県で組んでいます。多くの競技が同じ境遇ですが、サッカーにワールドカップがあるように、陸上競技ではオリンピックが最大の目標となる大会です。4年に一度の歴史あるオリンピックで競技することは、陸上競技をする者にとって大変名誉あることで、誰もが憧れる舞台です。

 現在、男子短距離とハードルブロックが一緒にトレーニングをしています。皆、順調にトレーニングを消化しており、4月からのシーズンが楽しみです。

 先日、マラソンのオリンピック代表が決まりました。短距離やハードルは6月の日本選手権が選考会となります。ただし、リレーはそこで決まりません。リレーは今年の7月2日時点で世界のランキング16傑に入っているチームに出場の権利が与えられます。今回のコラムでは、代表権を獲得しなければ出場できない7月2日までの私たちの苦悩を紹介します。
世界16傑までにオリンピックの出場権が得られることは前回の北京オリンピックから決まりました。それまでは標準記録でした。標準記録を出せば何カ国でも出場できます。ですから、目標は明確でした。7月2日時点でとなると、その時の16傑がいったい何秒であるのかは誰もわかりません。
 この16傑に入るには、もちろん良い記録を出さなければならないのですが、記録を出すことだけでなく、記録を出した大会に条件が付いています。まず、対象となる記録は2レースの平均とすることです。そして次に、そのレースに3カ国以上のチームの出場がなければなりません。ですから日本のチームだけでの競技会でよい記録を出しても認められないのです。例えば学生の対抗戦などは認められません。いわゆる国際大会でなければなりません。そのため、7月2日まで、海外チームを招待した国内でのレースを含め、海外でのレースも視野に入れ出場権を獲得しに行くことも考えられます。しかし、陸上競技は個人種目であり、多くの選手は個人でもオリンピック出場を目指しています。ですから、リレーだけに特化することも難しいのです。リレーに特化して個人で日本選手権で負けると日本代表に選ばれませんし、リレーは日本として出たいし、というような感じになってしまうのです。
 現在日本は4×100mリレーが9番目、4×400mリレーが17番目の順位です。4×400mリレーは16傑圏外です。しかし、4×100mリレーも安心はできません。そこで、5月3日に静岡、5月6日に川崎でリレー競技をやります。4×400mリレーは海外でもう1つ(まだ発表できないです)。ここで世界ランキング上位に入る記録を出し、あとは個人種目の日本選手権に備えます。日本選手権は6月8日から10日(大阪・長居)です。この時点で安全圏に入っていなければ、また大会に出なくてはならないかもしれません。6月の最終週にはヨーロッパ選手権が控えています。ここで多くの国が記録を更新してくる可能性があります。とにかく、そこで記録が出されても届かないようなところまで記録を伸ばしておくことが大事です。
 目標記録は・・・、書きたいところですが、秘密事項です。
 とにかく、女子も含めてリレーに出場するには好記録を出さなければなりません。何秒出せばよいのかは明確ではありません。なるべく好記録なのです。そして好記録を出したとしても7月2日まで他の国の動向を注意深く見ていく必要があります。胃が痛い日々が続きそうです。

 北京オリンピックで4×100mリレーは銅メダルを獲得しました。今回もメダルを狙っています。メダルを狙うようなチームは、16傑なんてものともせず、楽々と出場権を獲得しなければならないでしょう。ですからこの合宿は大変重要な合宿なのです。日本の強力な武器であるバトンパスワークに磨きをかけています。このコラムがでる日(3月20日)に私たちの合宿の模様がメディアに紹介されると思います。機会がありましたらご覧ください。
 そしてぜひ、静岡、川崎注目してください!!

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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