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SPORTSよこはまVol.26:スポーツ医科学センター

スポーツ医科学センター 高齢になるとかかりやすい病気[中高年に起こりやすい骨・関節の不具合]

横浜市スポーツ医科学センター 整形外科診療科長●清水 邦明(整形外科医)

 骨・関節や筋肉は長い年月の間に徐々に変化していきます。最も強くみずみずしい20歳前後をピークに、人間の体は緩やかに変性(加齢的変化)を生じていきます。例えば背骨(脊柱)や下肢の関節(股関節/膝関節/足関節)においては、長年体重を支えること(=荷重負荷)により、徐々に軟骨が摩耗し、また骨の余分な「ぜい肉」がついて変形を呈してきます。これに骨・関節を守る筋力の衰えも加われば、変化はさらに進んでしまうことになります。また肩など上肢の荷重のかからない関節でも、周囲を覆っている筋肉の変性や筋力・柔軟性の低下により痛みが生じやすくなります。さらに、若い時にはバランスが取れていた骨を作る働き(骨芽細胞)と骨を壊す働き(破骨細胞)が、高齢になると骨を壊す働きの方が上回り、徐々に骨自体がもろくなっていきます。今回、骨・関節の代表的な加齢変化である、変形性膝関節症、腰部脊柱管狭窄症、肩関節周囲炎(五十肩)、骨粗鬆症の4つについて解説します。

1. 変形性膝関節症

人間の膝関節の骨は本来その表面を3-4mmの厚さの軟骨で覆われていますが、加齢とともに少しずつ軟骨の摩耗が生じてきます。生理的な膝関節における荷重線(体重が主にかかる位置)は関節の中央より内側に寄っているため、年齢を重ねると一般に膝内側の軟骨摩耗が進み、内側の痛みとなって症状が現れることが多いのです。内側の軟骨の摩耗は→荷重線がさらに内側に移動→さらに内側の軟骨が摩耗という悪循環となります。お年寄りにしばしばO脚が見られるのはこのためです。もし中年以前に骨・靱帯・半月板などの膝関節構成体に損傷を受けてバランスが崩れていれば、より軟骨の摩耗や骨の変形は進みやすくなります。軟骨の摩耗や骨の変形は内側ばかりでなく、外側中心に起こる場合あるいは前方のお皿(膝蓋骨)と大腿骨前面の間に起こる場合があり、それぞれ外側の痛み、膝前面の痛みを呈することになります。「膝に水が溜まる」のは軟骨の摩耗などが関節内の炎症を引き起こして、過剰に水(=関節液)が産生(さんせい)されるからです。
変形性膝関節症 加齢変化から膝を守るためには、膝を守る筋肉(主に大腿四頭筋)を鍛え、また大腿・下腿の筋肉の柔軟性を維持することが最も大切です。軟骨の摩耗が大きく進んでいなければ、軟骨を保護するヒアルロン酸の関節内注射も有効な場合があります。しかし、変形が進んで体操や注射などでコントロールすることが困難になった場合には手術が必要になります。手術はO脚を矯正して荷重バランスを変更する「骨切り術」、摩耗した軟骨面と骨の一部を削って痛みを感じない金属をはめ込む「人工関節置換術」などが行なわれます。

2. 腰部脊柱管狭窄症

背骨(脊椎)にはその中央に脊柱管という神経の通り道がありますが、加齢に伴い脊柱管の後方や側方の靱帯が肥厚(ひこう)してスペースが狭くなり、神経の圧迫症状を呈して来る場合があります。これが脊柱管狭窄症で、多くの場合下肢全体の痛みやしびれ、重だるさが主症状です。症状は両下肢に出る場合も片足に出る場合もあります。これらの症状は座位よりも立位(台所仕事など)や歩行を続けていると明らかとなり、座って休むと軽減するという特徴(=間欠性跛行(はこう))があります。また腰を前屈(かが)みに保つと神経の圧迫が軽減されて症状が和らぐこともしばしば見られます。治療としてはまず背骨を良好な姿勢に保つための運動療法と血流を改善させる内服(プロスタグランジン製剤)が行なわれますが、改善しなければ硬膜外神経ブロック、さらには脊柱管を拡げる手術(除圧術)が必要な場合もあります。

3. 肩関節周囲炎(五十肩)

打撲した、捻(ひね)った、過剰に使ったなど思い当たる原因がないのにいつの間にか肩の痛みが出現し、可動域(動かせる範囲)に制限が出てきたら、多くの場合五十肩です。肩周囲の筋肉の新陳代謝が低下し、筋の柔軟性が損なわれた結果として生じる症状と考えられます。前方への挙上(きょじょう)や外からの挙上も制限されますが、典型的には体の後ろに手を回す動き(エプロンを縛るなど)に明らかな制限が出ます。放置していても半年や1年という長い時間をかけて自然に改善する場合がありますが、一方で著しい可動域制限(凍結肩)に陥ることもあります。
新陳代謝を促し、筋の柔軟性を回復させるためには体操やセルフマッサージなどの運動療法が重要になります。

4. 骨粗鬆症

骨粗鬆症 人間の骨の密度は骨を形成する骨芽細胞と破壊・吸収する破骨細胞の働きのバランスによって決まってきます。年齢を重ねると破骨細胞の働きが勝るようになり、徐々に骨吸収が進んで骨密度が低下します。骨密度が健康成人の70%未満になると骨折の危険性が増す「骨粗鬆症」と定義されます。男性でも加齢とともに骨密度は低下しますが、女性ホルモン(エストロゲン)に骨芽細胞を活発にする働きがあるため、閉経後の女性は特に骨密度が低下しやすくなります。また喫煙や過度の飲酒も危険因子と考えられます。
骨密度は病院での簡単なX線検査で測定できます。少しでも骨密度低下を防ぐためには、カルシウムやビタミン類をバランスよく摂取すること、適度な運動や日光浴(紫外線によって、カルシウム吸収を促すビタミンDが作られます。)などが大事ですが、骨粗鬆症の治療として今第一に選択されるのが破骨細胞の働きを抑える飲み薬(ビスフォスフォネートなど)です。

横浜市スポーツ医科学センター TEL. 045-477-5050・5055 ホームページ

●スポーツクリニック(内科・内科循環器科・整形外科・スポーツ整形外科・リハビリテーション)
横浜市スポーツ医科学センター横浜市スポーツ医科学センター●トレーニングルーム
●大・小アリーナ(体育館)
●25m室内温水プール
●研修室・会議室

 

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横浜市スポーツ医科学センター 整形外科診療科長●清水 邦明(整形外科医)

 骨・関節や筋肉は長い年月の間に徐々に変化していきます。最も強くみずみずしい20歳前後をピークに、人間の体は緩やかに変性(加齢的変化)を生じていきます。例えば背骨(脊柱)や下肢の関節(股関節/膝関節/足関節)においては、長年体重を支えること(=荷重負荷)により、徐々に軟骨が摩耗し、また骨の余分な「ぜい肉」がついて変形を呈してきます。これに骨・関節を守る筋力の衰えも加われば、変化はさらに進んでしまうことになります。また肩など上肢の荷重のかからない関節でも、周囲を覆っている筋肉の変性や筋力・柔軟性の低下により痛みが生じやすくなります。さらに、若い時にはバランスが取れていた骨を作る働き(骨芽細胞)と骨を壊す働き(破骨細胞)が、高齢になると骨を壊す働きの方が上回り、徐々に骨自体がもろくなっていきます。今回、骨・関節の代表的な加齢変化である、変形性膝関節症、腰部脊柱管狭窄症、肩関節周囲炎(五十肩)、骨粗鬆症の4つについて解説します。

1. 変形性膝関節症

人間の膝関節の骨は本来その表面を3-4mmの厚さの軟骨で覆われていますが、加齢とともに少しずつ軟骨の摩耗が生じてきます。生理的な膝関節における荷重線(体重が主にかかる位置)は関節の中央より内側に寄っているため、年齢を重ねると一般に膝内側の軟骨摩耗が進み、内側の痛みとなって症状が現れることが多いのです。内側の軟骨の摩耗は→荷重線がさらに内側に移動→さらに内側の軟骨が摩耗という悪循環となります。お年寄りにしばしばO脚が見られるのはこのためです。もし中年以前に骨・靱帯・半月板などの膝関節構成体に損傷を受けてバランスが崩れていれば、より軟骨の摩耗や骨の変形は進みやすくなります。軟骨の摩耗や骨の変形は内側ばかりでなく、外側中心に起こる場合あるいは前方のお皿(膝蓋骨)と大腿骨前面の間に起こる場合があり、それぞれ外側の痛み、膝前面の痛みを呈することになります。「膝に水が溜まる」のは軟骨の摩耗などが関節内の炎症を引き起こして、過剰に水(=関節液)が産生(さんせい)されるからです。
変形性膝関節症 加齢変化から膝を守るためには、膝を守る筋肉(主に大腿四頭筋)を鍛え、また大腿・下腿の筋肉の柔軟性を維持することが最も大切です。軟骨の摩耗が大きく進んでいなければ、軟骨を保護するヒアルロン酸の関節内注射も有効な場合があります。しかし、変形が進んで体操や注射などでコントロールすることが困難になった場合には手術が必要になります。手術はO脚を矯正して荷重バランスを変更する「骨切り術」、摩耗した軟骨面と骨の一部を削って痛みを感じない金属をはめ込む「人工関節置換術」などが行なわれます。

2. 腰部脊柱管狭窄症

背骨(脊椎)にはその中央に脊柱管という神経の通り道がありますが、加齢に伴い脊柱管の後方や側方の靱帯が肥厚(ひこう)してスペースが狭くなり、神経の圧迫症状を呈して来る場合があります。これが脊柱管狭窄症で、多くの場合下肢全体の痛みやしびれ、重だるさが主症状です。症状は両下肢に出る場合も片足に出る場合もあります。これらの症状は座位よりも立位(台所仕事など)や歩行を続けていると明らかとなり、座って休むと軽減するという特徴(=間欠性跛行(はこう))があります。また腰を前屈(かが)みに保つと神経の圧迫が軽減されて症状が和らぐこともしばしば見られます。治療としてはまず背骨を良好な姿勢に保つための運動療法と血流を改善させる内服(プロスタグランジン製剤)が行なわれますが、改善しなければ硬膜外神経ブロック、さらには脊柱管を拡げる手術(除圧術)が必要な場合もあります。

3. 肩関節周囲炎(五十肩)

打撲した、捻(ひね)った、過剰に使ったなど思い当たる原因がないのにいつの間にか肩の痛みが出現し、可動域(動かせる範囲)に制限が出てきたら、多くの場合五十肩です。肩周囲の筋肉の新陳代謝が低下し、筋の柔軟性が損なわれた結果として生じる症状と考えられます。前方への挙上(きょじょう)や外からの挙上も制限されますが、典型的には体の後ろに手を回す動き(エプロンを縛るなど)に明らかな制限が出ます。放置していても半年や1年という長い時間をかけて自然に改善する場合がありますが、一方で著しい可動域制限(凍結肩)に陥ることもあります。
新陳代謝を促し、筋の柔軟性を回復させるためには体操やセルフマッサージなどの運動療法が重要になります。

4. 骨粗鬆症

骨粗鬆症 人間の骨の密度は骨を形成する骨芽細胞と破壊・吸収する破骨細胞の働きのバランスによって決まってきます。年齢を重ねると破骨細胞の働きが勝るようになり、徐々に骨吸収が進んで骨密度が低下します。骨密度が健康成人の70%未満になると骨折の危険性が増す「骨粗鬆症」と定義されます。男性でも加齢とともに骨密度は低下しますが、女性ホルモン(エストロゲン)に骨芽細胞を活発にする働きがあるため、閉経後の女性は特に骨密度が低下しやすくなります。また喫煙や過度の飲酒も危険因子と考えられます。
骨密度は病院での簡単なX線検査で測定できます。少しでも骨密度低下を防ぐためには、カルシウムやビタミン類をバランスよく摂取すること、適度な運動や日光浴(紫外線によって、カルシウム吸収を促すビタミンDが作られます。)などが大事ですが、骨粗鬆症の治療として今第一に選択されるのが破骨細胞の働きを抑える飲み薬(ビスフォスフォネートなど)です。

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