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SPORTSよこはまVol.21・スポーツ医科学センター

スポーツ医科学センター 減量するにあたっての運動の必要性

横浜市スポーツ医科学センター 健康科学課●今川 泰憲(スポーツ科学員)

はじめに

 運動しなくても食事量を減らせば減量はできますし、メタボリックシンドロームの予防と改善もできます。では、なぜ減量において運動が必要とされるのでしょうか? それは、食事療法では得難い、減量を効果的に行なう上で大変有用な臨床的効果が運動療法では得られるからです。そこで今回は、減量あるいは肥満対策において運動を実施する意義について、主にスポーツ科学的観点からみてみましょう。

●消費エネルギーを増加させて、エネルギー収支をマイナスにする

 減量するためには、摂取エネルギーと消費エネルギーの出納バランス(エネルギー収支)を負(マイナス)にする必要があります。運動は、消費エネルギーを増加させてエネルギー収支を負にすることを容易にします。運動嫌いな人にとっては、食事療法だけで減量する方が楽かもしれませんが、この方法では、安静時のエネルギー消費量を規定する基礎代謝までが低下してしまい、結果的にエネルギーを消費しにくい(太りやすい)体質をつくる原因になります(次項参照)。また、この方法では、食事制限による空腹感やストレスに耐えられず途中で挫折する人も多いのですが、運動で消費エネルギーを増やせば厳しい食事制限を緩和することもできます。このように、運動療法を加えた方が、無理なく、しかもより効果的な減量を行なうことができます。

●除脂肪体重の減少を抑制する(筋肉質で太りにくい体質をつくる)

 減量においては、筋肉や骨などの除脂肪組織をできる限り維持しながら、体脂肪だけを減少させること(減脂肪)が肝要です。一般に、食事制限のみで減量を行なった場合、体脂肪だけでなく筋肉量も減少します。一方、運動療法または食事・運動併用療法を用いた場合には、筋肉量は維持されるか増加傾向を示す場合もあります(例1.参照)。

例1. 減量を食事療法単独で行なった場合(Bさん)と運動療法を併用した場合(Aさん)の効果の違い

  Aさん
(食事・運動併用) Bさん
(食事療法単独) 体重(kg) 70.0 → 60.0 70.0 → 60.0 体脂肪率(%) 40.0 → 26.7 40.0 → 36.7 体脂肪量(kg) 28.0 → 16.0 28.0 → 22.0 除脂肪量(kg) 42.0 → 44.0 42.0 → 38.0 基礎代謝(kcal) 1,340 → 1,420 1,340 → 1,180

 AさんもBさんも体重減少量は同じですが、Aさんは体脂肪率と体脂肪量が大きく減少し、除脂肪量の増加によって基礎代謝が増えて減量前より太りにくい体質になったといえます。一方、Bさんは、体脂肪量だけでなく除脂肪量も減少したため、体重減少量の割に体脂肪率の低下が小さく、加えて除脂肪量の減少によって基礎代謝が低下したため、減量前より太りやすい体質になったといえます。今後減量される方は、ぜひ、Aさんのような減量を目標にしてください。

 筋肉量は、基礎代謝および安静時エネルギー消費量と強い正(せい)の相関を有することから、運動は単に活動中のエネルギー消費を高めるだけでなく、安静時に多くのエネルギーを消費してくれる筋肉質な体質をつくる上でも重要なわけです。そして、このことが減量後のリバウンド防止にも役立ちます。そのためには、水泳やウォーキングなど従来から推奨されてきた有酸素運動に加えて、筋肉を鍛えるレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を併せて行なうと効果的でしょう。

●運動終了後も、エネルギー消費の増加した状態が持続する

 運動中にエネルギー消費(酸素消費量)が増加するのは当然ですが、酸素消費量が増加した状態は運動後もしばらく持続します。これを運動後過剰酸素消費(EPOC)と呼び、高強度の運動や長時間運動を行った場合に顕著に現れます。EPOCは従来から知られている運動中の酸素負債だけでは説明できず、運動で生じた代謝産物の処理や脂質代謝の亢進(こうしん)、筋タンパク合成などが関与していると考えられています。EPOCは、筋肉量の増加による基礎代謝の上昇とは別の機序(メカニズム)で、安静時のエネルギー消費を促進するものであり、長期間の減量では、このEPOCの累積効果も体重減少に少なからず影響するものと推察されます。

●内臓脂肪を減少させ、メタボリックシンドロームを予防・改善する

 腹腔(ふくくう)内に脂肪が過剰蓄積した状態を内臓脂肪型肥満と呼びます。内臓脂肪型肥満は、他の生活習慣病(脂質異常症、耐糖能障害、高血圧など)の原因または誘因になるため、内臓脂肪を減らすことがこれらの生活習慣病の予防と改善に繋がります。それでは、果たして運動は、内臓脂肪を選択的に減じる効果があるのでしょうか? 内臓脂肪は皮下脂肪に比べて代謝回転(中性脂肪の合成と分解)が速いため、エネルギーバランスの急激な変化に即応する際には、内臓脂肪が選択的に動員される可能性があるといわれています。また、相撲力士と一般肥満男性の体脂肪分布を調べた研究では、BMI(体格指数)による肥満度は同程度でも、力士では内臓脂肪の蓄積がほとんどみられず、また、総コレステロール、中性脂肪、血糖などの代謝指標でもほとんど異常がみられなかったといいます。これについては、今後、更なるエビデンス(科学的根拠)の蓄積が必要ですが、少なくとも運動には内臓脂肪を減少させ、生活習慣病を予防・改善する効果があることは間違いありません。

●運動耐容能を高め、1回の運動でより多くのエネルギーを消費できるようにする

 一般に、肥満者では持久的な運動能力が乏しく、少しの運動でも疲労しやすい傾向があります(これには、体重を支える下肢や体幹の筋力が弱いことも関係しています)。1㎞歩いただけで疲れる、エアロバイクを30ワットの負荷で10分しかこげない、などなど。このような(低)体力では、1回の運動で多くのエネルギーを消費することはできません。しかし、心配は無用です。運動(とくに有酸素運動)を続けていくうちに呼吸循環系機能や末梢の血液循環などが改善され、より長時間、より強い強度でも運動を遂行することが可能になります。すなわち、1回の運動でより多くのエネルギーを消費できるようになるわけです。このような運動耐容能の増加は、二次的に日常生活での身体活動レベルをも高め、それによるエネルギー消費量の増加も減量に大きく寄与するものと期待されます。

イラスト

●体重支持力を高め、活動的に動ける身体をつくる

 肥満者では、自己の体重を支える筋力(体重支持力)が弱く、それが原因で膝や腰などの疼痛(とうつう)や関節障害を招く場合が少なくありません。このような方では、症状の悪化を恐れて、運動や日常の身体活動(歩行、階段昇降など)が消極的になり、ますますエネルギー消費が低下するという悪循環に陥ります。運動(とくにレジスタンストレーニング)は、筋力の増加を図ることで関節の支持力を高め、痛みを軽減し、より活動的に動ける身体をつくります。このことが、積極的な運動参加を促し、エネルギー消費を高めて減量や肥満予防に結びつくといえます。体重支持力を効果的に高めるためには、膝(大腿部)などの筋力を強化するレジスタンストレーニングと余分な体脂肪を減らす有酸素運動とを併用した運動プログラムが有効です。

おわりに

 健康づくりのためには、栄養・運動・休養を3本柱とする正しい生活習慣を確立することが大切です。これは減量の場合も同様で、適切な食習慣と運動習慣の獲得なくしては、効果を定着させることは困難でしょう。運動には今回述べた内容のほかにも、脂肪の燃焼効率の亢進、HDL(善玉)コレステロールの増加、筋のインスリン感受性の上昇、骨密度の低下抑制など、多くの臨床的効果が認められています。ぜひこの機会に規則正しい運動習慣を身に付け、運動がもたらす多くの生理学的恩恵を手にしていただければと思います。

「スポ医科」は、あなたの健康をサポートします。

横浜市スポーツ医科学センター   TEL. 045-477-5050・5055  ホームページ

横浜市スポーツ医科学センター●スポーツクリニック
 (内科・整形外科・リハビリテーション)
●大・小アリーナ(体育館)
●トレーニングルーム
●25m室内温水プール
●研修室・会議室

スポーツ医科学センター 減量するにあたっての運動の必要性

横浜市スポーツ医科学センター 健康科学課●今川 泰憲(スポーツ科学員)

はじめに

 運動しなくても食事量を減らせば減量はできますし、メタボリックシンドロームの予防と改善もできます。では、なぜ減量において運動が必要とされるのでしょうか? それは、食事療法では得難い、減量を効果的に行なう上で大変有用な臨床的効果が運動療法では得られるからです。そこで今回は、減量あるいは肥満対策において運動を実施する意義について、主にスポーツ科学的観点からみてみましょう。

●消費エネルギーを増加させて、エネルギー収支をマイナスにする

 減量するためには、摂取エネルギーと消費エネルギーの出納バランス(エネルギー収支)を負(マイナス)にする必要があります。運動は、消費エネルギーを増加させてエネルギー収支を負にすることを容易にします。運動嫌いな人にとっては、食事療法だけで減量する方が楽かもしれませんが、この方法では、安静時のエネルギー消費量を規定する基礎代謝までが低下してしまい、結果的にエネルギーを消費しにくい(太りやすい)体質をつくる原因になります(次項参照)。また、この方法では、食事制限による空腹感やストレスに耐えられず途中で挫折する人も多いのですが、運動で消費エネルギーを増やせば厳しい食事制限を緩和することもできます。このように、運動療法を加えた方が、無理なく、しかもより効果的な減量を行なうことができます。

●除脂肪体重の減少を抑制する(筋肉質で太りにくい体質をつくる)

 減量においては、筋肉や骨などの除脂肪組織をできる限り維持しながら、体脂肪だけを減少させること(減脂肪)が肝要です。一般に、食事制限のみで減量を行なった場合、体脂肪だけでなく筋肉量も減少します。一方、運動療法または食事・運動併用療法を用いた場合には、筋肉量は維持されるか増加傾向を示す場合もあります(例1.参照)。

例1. 減量を食事療法単独で行なった場合(Bさん)と運動療法を併用した場合(Aさん)の効果の違い

  Aさん
(食事・運動併用) Bさん
(食事療法単独) 体重(kg) 70.0 → 60.0 70.0 → 60.0 体脂肪率(%) 40.0 → 26.7 40.0 → 36.7 体脂肪量(kg) 28.0 → 16.0 28.0 → 22.0 除脂肪量(kg) 42.0 → 44.0 42.0 → 38.0 基礎代謝(kcal) 1,340 → 1,420 1,340 → 1,180

 AさんもBさんも体重減少量は同じですが、Aさんは体脂肪率と体脂肪量が大きく減少し、除脂肪量の増加によって基礎代謝が増えて減量前より太りにくい体質になったといえます。一方、Bさんは、体脂肪量だけでなく除脂肪量も減少したため、体重減少量の割に体脂肪率の低下が小さく、加えて除脂肪量の減少によって基礎代謝が低下したため、減量前より太りやすい体質になったといえます。今後減量される方は、ぜひ、Aさんのような減量を目標にしてください。

 筋肉量は、基礎代謝および安静時エネルギー消費量と強い正(せい)の相関を有することから、運動は単に活動中のエネルギー消費を高めるだけでなく、安静時に多くのエネルギーを消費してくれる筋肉質な体質をつくる上でも重要なわけです。そして、このことが減量後のリバウンド防止にも役立ちます。そのためには、水泳やウォーキングなど従来から推奨されてきた有酸素運動に加えて、筋肉を鍛えるレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を併せて行なうと効果的でしょう。

●運動終了後も、エネルギー消費の増加した状態が持続する

 運動中にエネルギー消費(酸素消費量)が増加するのは当然ですが、酸素消費量が増加した状態は運動後もしばらく持続します。これを運動後過剰酸素消費(EPOC)と呼び、高強度の運動や長時間運動を行った場合に顕著に現れます。EPOCは従来から知られている運動中の酸素負債だけでは説明できず、運動で生じた代謝産物の処理や脂質代謝の亢進(こうしん)、筋タンパク合成などが関与していると考えられています。EPOCは、筋肉量の増加による基礎代謝の上昇とは別の機序(メカニズム)で、安静時のエネルギー消費を促進するものであり、長期間の減量では、このEPOCの累積効果も体重減少に少なからず影響するものと推察されます。

●内臓脂肪を減少させ、メタボリックシンドロームを予防・改善する

 腹腔(ふくくう)内に脂肪が過剰蓄積した状態を内臓脂肪型肥満と呼びます。内臓脂肪型肥満は、他の生活習慣病(脂質異常症、耐糖能障害、高血圧など)の原因または誘因になるため、内臓脂肪を減らすことがこれらの生活習慣病の予防と改善に繋がります。それでは、果たして運動は、内臓脂肪を選択的に減じる効果があるのでしょうか? 内臓脂肪は皮下脂肪に比べて代謝回転(中性脂肪の合成と分解)が速いため、エネルギーバランスの急激な変化に即応する際には、内臓脂肪が選択的に動員される可能性があるといわれています。また、相撲力士と一般肥満男性の体脂肪分布を調べた研究では、BMI(体格指数)による肥満度は同程度でも、力士では内臓脂肪の蓄積がほとんどみられず、また、総コレステロール、中性脂肪、血糖などの代謝指標でもほとんど異常がみられなかったといいます。これについては、今後、更なるエビデンス(科学的根拠)の蓄積が必要ですが、少なくとも運動には内臓脂肪を減少させ、生活習慣病を予防・改善する効果があることは間違いありません。

●運動耐容能を高め、1回の運動でより多くのエネルギーを消費できるようにする

 一般に、肥満者では持久的な運動能力が乏しく、少しの運動でも疲労しやすい傾向があります(これには、体重を支える下肢や体幹の筋力が弱いことも関係しています)。1㎞歩いただけで疲れる、エアロバイクを30ワットの負荷で10分しかこげない、などなど。このような(低)体力では、1回の運動で多くのエネルギーを消費することはできません。しかし、心配は無用です。運動(とくに有酸素運動)を続けていくうちに呼吸循環系機能や末梢の血液循環などが改善され、より長時間、より強い強度でも運動を遂行することが可能になります。すなわち、1回の運動でより多くのエネルギーを消費できるようになるわけです。このような運動耐容能の増加は、二次的に日常生活での身体活動レベルをも高め、それによるエネルギー消費量の増加も減量に大きく寄与するものと期待されます。

イラスト

●体重支持力を高め、活動的に動ける身体をつくる

 肥満者では、自己の体重を支える筋力(体重支持力)が弱く、それが原因で膝や腰などの疼痛(とうつう)や関節障害を招く場合が少なくありません。このような方では、症状の悪化を恐れて、運動や日常の身体活動(歩行、階段昇降など)が消極的になり、ますますエネルギー消費が低下するという悪循環に陥ります。運動(とくにレジスタンストレーニング)は、筋力の増加を図ることで関節の支持力を高め、痛みを軽減し、より活動的に動ける身体をつくります。このことが、積極的な運動参加を促し、エネルギー消費を高めて減量や肥満予防に結びつくといえます。体重支持力を効果的に高めるためには、膝(大腿部)などの筋力を強化するレジスタンストレーニングと余分な体脂肪を減らす有酸素運動とを併用した運動プログラムが有効です。

おわりに

 健康づくりのためには、栄養・運動・休養を3本柱とする正しい生活習慣を確立することが大切です。これは減量の場合も同様で、適切な食習慣と運動習慣の獲得なくしては、効果を定着させることは困難でしょう。運動には今回述べた内容のほかにも、脂肪の燃焼効率の亢進、HDL(善玉)コレステロールの増加、筋のインスリン感受性の上昇、骨密度の低下抑制など、多くの臨床的効果が認められています。ぜひこの機会に規則正しい運動習慣を身に付け、運動がもたらす多くの生理学的恩恵を手にしていただければと思います。

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