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    イベントレポート

SPORTSよこはまvol.34(12月号) 元プロ野球選手工藤公康さんにインタビュー 少年野球肘について

by :スポーツ情報センター:なかむら


工藤 公康さん
1963年5月5日生まれ。名古屋電気高等学校(現・愛知工業大学名電高等学校)3年生の夏、甲子園にて、ノーヒットノーランを達成。1982年、ドラフト6位で西武に入団しエースとして活躍。以後’94年〜福岡ダイエー(現・福岡ソフトバンク)、’ 99年〜読売巨人、’07〜年横浜、’10年〜埼玉西武でプレー。
現役29年間で最年長記録を次々と更新した鉄腕。2011年12月9日引退。
現在は、テレビ朝日「報道ステーション」スポーツキャスターなどのメディアで活躍するほか、現役時代から行っている野球教室、子どものケガ予防などにも力を入れている。2男3女の父。
通算成績(2010年終了時)
 635試合 224勝142敗3セーブ10ホールド 防御率3.45 116完投 24完封 2859奪三振

平成25年1月19日関内ホールで行われる「野球少年の夢実現のための講演会」で講演される元プロ野球選手の工藤公康さんに少年野球肘についてご自身の思いを語っていただきました。

■今はプロ野球の解説の仕事などをしていらっしゃいますが。

 自分でわかっていても「伝える」ということは難しいですし、まだまだ勉強しなければいけないことがたくさんあります。
 自分の感覚はあるんですが、それを「感覚」ではなく、理論で説明するのが大事なんです。
 子供の野球教室でもそうですが、子供に感覚で説明してもわかってもらえないので、子供たちに教えた時に、子供たちが理解しているかどうかはある程度は顔を見ればわかるので、そこが基準です。
 それが中学生だったら(言い方も)変わるし、高校生だったらもっとまた変わります。

■プロで29年間現役で活躍した方はなかなかいらっしゃらないと思いますが。

 そうですね、長くやるというのはトレーニングさえしてれば長くできるものではないし、子供の頃の食事の内容も当然大事ですし、運動して体に刺激を与えて骨を強くするのもことも必要、やり過ぎは良くありませんが、やらな過ぎるのはもっと良くないです。
 やはり、運動なり、スポーツなり、子供らしい遊びというのを取り入れるのは強い体を作る上で大事ですね。
 自分の子供のころは、休みの時は親に外に遊びに行けと言われていましたし、田舎に遊びに行った時は山に行ったり、木登りしたり、川で泳いだり・・そういう事が出来た時代ではありました。
 危ないと思っても「男の子はそれ位出来なきゃいけない」と言われて、切り傷、擦り傷、転んで打ち身とか頭打って血が出ちゃったりとかはしょっちゅうで、それで帰宅しても親がびっくりするわけでもなく、「赤チンでも塗っておけ」と、そういう時代でしたね。
 学生時代は、子どもの頃から培われた土台もあったし、僕らの時代は「走れ、走れ」だったので、「走る」という事で疲れたり、動けなくなったり、ということは無かったです。
 高校では学校から寮までがだいたい13km位あるんですが、それを走って、寮まで行って着替えた後に練習で投げたり打ったり、ランニングしたり、、トータルすると1日20kmくらいは走っていましたね。
 野球というのは技術面のウエイトが高いスポーツなんですけど、その技術を覚えるためにはすごく体力が必要なんです。反復練習しか練習方法がないので。
 体力がないと、途中でやろうとしている事ができなくなってしまったりとか、身につかなかったりとか。
 練習や試合が疲れて出来ない、という事をなくす為にはどうしても体力が必要です。そういう意味で「走る」というのは必要ですね。下半身を壊さないという意味でも。
そういう基礎体力の上に技術面が乗ってくるということなんです。

★プロ野球を見ていると、ピッチャーは割と選手生命が短いというイメージがあるのですが?

 長い期間プロの1軍で活躍できる人は少ないですね。だから技術がついていかないんですよ。身に付かない。身に付ける為の体力がなくなってしまうんでね。
 でもその体力ばかりに目を向けると、「なんでこんなしんどい事をしなければならないんですか」「なんでこんなにランニングする必要があるんですか」「僕はピッチャーで投げるだけなのに」となってくる。
 勿論、その説明は出来るんですけど、スポーツには必要とされる筋肉の質というのもあって、ボディービルの様にただ「筋肉を太くする」というのもあれば、100m走や投てきの選手の様に「瞬間的に力を出す筋肉」、3000m、5000mを走るような「スピードを維持しながら力を持続する筋肉」があるのですが、ピッチャーはその全ての要素が必要なんです。
 ピッチャーは反復練習で球数を投げて、それでいて球の速さはある程度維持できないといけない。それには持久系ばかりではく瞬発力も必要。持久系は回復力という点にもつながります。
 それら要素が必要なんで、非常に鍛え方が難しいんです。

★工藤さんが試合の中で球数を投げ続けるコツのような方法は何かありますか?

 最初はプロの中ではやったことのない先発をやったりすると、力の限り投げてしまったりしますが、それは若いからできる事であって、試合の緊張感を重ねていくうちに、緊張やモチベーションを高めていく方法、終わった時にそれを抜いてあげて体をリラックスさせるとか、その方法論は続けていけさえすれば自然と身に付いていくものです。
 でも最初の「先発として投げていく」という段階が出来ない若い選手が非常に多い。
 たとえ1年調子悪くても、2年目以降で成績を残していければ、長く野球をやっていけるんですけど、そこもやっぱり基礎体力が必要なんですよ。1年間バンバン投げても疲れ切らない体力を作ることができるかどうか。それを2年3年続けても投げられる体力が本当にあるかどうかですね。
技術や要領という以前にまずは体力が必要ということなんです。 
「壊れる」というのも、投げ方、みたいな技術的な事もあるんですけれど、基礎体力がないとやはり故障しやすいですね。
 僕らのころ、小、中学校で体力測定ってあったじゃないですか。その項目の中に「懸垂」もあったんですよ。大体12〜20回で一番いい評価を貰えていた。それ位は楽にパスしていたんですけど、今の子供たちは1回も出来ないです。

 ボールを投げるというのは、思っている以上に肩肘に負担がかかるようになってきているし、今の子供たちは体に刺激を与えていることが少ないので、意外と骨も弱いように思います。
 骨を強くするためには当然、「牛乳を摂取した方がいい」などとは言われていますが、食べ物で摂ったものを生かすには刺激も必要なんです。
 そこも含めて、特に肘にそういう症状が出やすい、「野球肘」といわれているものですが、肘ばかりでなく、肩の障害も結構多く聞かれます。肩甲骨や周りの筋肉などに依存している肩も、特に肩甲骨はどこの関節にも属していないというのもあって、そこを耐えようとするには筋肉で耐えなければならない。だから肩の機能が落ちると肘にきてしまったりするんです。
 個人差はありますが、肘よりも肩にきてしまったりということもあるようです。
 僕の息子はテニスをしていたんですが、肩を痛めて、娘はゴルフをしていますが、ゴルフでも同じように肩を痛めました。同じ動作を数多くこなすとどうしても肩肘に負担がくるんです。
 今回は野球の為の講演会ということではあるんですが、他のスポーツをされている人達、特に肩肘をよく使うスポーツをしている子供たちにも知ってもらいたいと思っています。

■体全体の筋肉のバランスが必要?

 僕は中学1,2年の頃に肘を一回痛めてしまって。その影響で今でもちゃんと曲げられないんです。プロに入った時に一番最初に痛めたのも肘でした。
 そういったケガを子供の時にやってしまって、かなり休まなければならない様なケガだったりすると、体が成長して夢を追っている最中にまた出てしまう。 そうなって欲しくないんです。
 ピッチャーとして大してやっていなくて内野や外野やったりで、あまり「投げる」事ばかりをしてこなかった子供は、プロにいってもあまり痛めていないんです。

■やはりピッチャーを続けるとそういうケガをしやすい?

 今ではアマチュアでも、あまり1人のピッチャーに頼るのではなく、2,3人を用意しないと大会に出れないという規定も出来たみたいですけど、やはりその中でも実力が飛び抜けていると、その子に頼る事になってしまう。
 ピッチングが良い子はバッティングも良かったりするんで、外野とかにもいくんですが、それでもボールが来たら投げるので肩肘を休められない事になり、気が付いた時には手遅れになってしまいます。
 僕らが小学校の頃、野球を始めたばかりの頃は球拾いしかさせてもらえなかった。たまにキャッチボールさせてもらえたぐらいだったんですね。 
 それが逆に言えば、成長していく中で、たまにしか投げないから体にそんなに負担がかからないままできたということだったのかもしれません。
 中学校に上がっても最初の半年くらいは投げれない、打てない、球拾いだけ、そうすると小学校で負荷がかかって故障していた子もその期間に休ませることが出来るから治っちゃうんですよ。
 高校1年の時もそうですよね。だから、ある意味そういう上下関係の中でやってきたことは、投げられない時間が休養になって良かったかもしれない。意外と昔のシステムも良かった部分があったのかもしれないと自分の中では感じています。
 子供たちには、野球が好きでやりたいという気持ちはわかるけれども、体作りをしっかりやろうという事をまず教えてあげなければならないし、大事になってくるのはフォーム、技術なんですが、普段椅子に座っている生活が多いんで、股関節を広げるという事をしなくなってきている。
 最近の野球選手を見ていると、お尻が小さくてスラッとしている人が多い。あれはたぶん、そういう生活習慣のせいですね。
 だから投げたときに股関節が広がらず、つっぱったような形になる。可動域が狭いんです。
 体重はお尻で支えるとしっかり支えられるんですが、それができない人が非常に多いです。

■なかなか本人がそういう気にならないと、トレーニングも身にならないですよね?

 そうですね、だから僕は子供のトレーニングはやらなければならないこともあるんですが、野球自体を楽しんで欲しいというのもあるので、色々な方法を考えて子供たちの技術力アップを楽しく何かで出来ないか、肩を強くする、故障しない為の投げ方を違う方法で覚えられないかとかを考えています。
 例えば「ドッヂボール」はいいですね。
 プロでも肘を手術した後に練習するのは大きいボールからで、バレーボールやドッヂボールなど、手に持てないボールを思い切り地面に叩き付けるようにして、3m,5mくらいに投げるリハビリするとあまり肩肘に負担はかかりません。
 そのボールがやがてソフトボールになって、小さいけどあまり速く動かせないトレーニングボールになって、最終的に野球のボールを投げていく、その過程を子供にやらせると、負担にはなりにくいのでドッヂボールやらせるのもいいのかもしれないなと思っています。
 握れないボールなので、体を使って投げるようになる。ウォーミングアップ代わりにやればいいんですが、ここで大事なのは、子供が好きな競争の要素を入れてやって楽しいと思える練習を工夫して作っていくことなんです。
 それと最近よくやるのは、「鏡合わせ」という遊びで、2人1組で1人が動く、もう1人はその人についてくる、同じ動きをしなさい、という練習で、子供たちはだんだん見たままの人の動きをするようになってただ楽しんでやっているのですが、その効果は大人が知っていればいい。
 見たままを自分の体で表現するという訓練をしておくと、知らぬ間に身について後々「センスがある」と言われるようになります。
 外国はあまり最初から「やらせる」のではなく、遊ばせて「楽しい」と思わせています。
 それが何よりも大事で、続けていくことによってて上手くなろうという気にもなってくるし、その遊びの中から自然に身に付くフォームの方が大事なんです
 野球に限らず、故障をすると子供たちが夢を追えなくなるので、そうはなって欲しくない。
 そのためには子供たちよりは保護者なり、指導者の方々なり、ある程度の知識を持ち、理解してもらう事が大事になってくる。
 試合のシーズンに入る前に検診をしてもらって、その中で休んだ方がいい子にはシーズンまでに直してもらう。もしそれが可能ならば、その方が子供たちにとってはすごくいい時期になるのかなと思っていますし、僕はそういう事を広めていきたいと考えています。

■実際の講演会で「こういうことをしたい」という事は何かありますか?

 ミニ野球教室みたいなものですが、バットやグローブを使った練習であったり、縄跳びを使って肩や肘の位置が正しいポジションにあるかの確認をしたり。そんなことをやりたいと思ってます。
 技術的な話もそうだし、食事や睡眠も子供の成長という面でとても大事なので、生活習慣の話もしたいと思っています。

■最後に子供たちにメッセージをお願いできますか?

 とにかく野球を楽しんでもらいたい、その為にはケガを予防する、それにはケガを知ることが必要なので、子供たちばかりでなく保護者や指導者にも聞いていただきたいですね。
 どのスポーツも一緒だと思いますが、繰り返し使うことで、体は壊れてしまうし、大人の時にやるケガと違って子供の頃のケガは大人になった時に自分の弱点になり得ます。
 やっぱり弱点はない方が好きなことをやっていけるし、生涯の仕事になる場合もありますし、仕事にならなくても、一生楽しめるようになってほしいので、その為にもなるべく子供のうちからケガを抱えない方がいいですよね。
 子供を守るためには、保護者、指導者、みんなで守っていかなければならない。今は昔と違ってそれが出来る時代なのですから。

 
 
                           
 
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