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    イベントレポート

復活、体操ニッポン!栄光への序章 〜 全日本ジュニア体操競技選手権大会

by :スポーツ情報センター記者

 「日本女子、5位入賞!」、池谷幸雄さんの大きな声が体育館に響き渡る。喜び万歳する子どもたち…。8月13日、北京五輪体操女子は団体総合決勝で5位の成績を収め、ロサンゼルス五輪以来24年ぶりの入賞を果たしたのだ。この日横浜文化体育館では、「体操の甲子園」と呼ばれる全日本ジュニア体操競技選手権大会の、東西Aクラス決勝大会が行われていた。その最中に舞い込んだ吉報。大会実行委員長の池田敬子さんは、「今、北京の塚原千恵子さん(体操女子監督)から電話で入賞の報告を受け、この横浜の大会に感謝したいと話していました」と打ち明け、「今日ほど嬉しい日はない」と目に涙を浮かべた。池田さんは日本体操界のパイオニア的存在。1956年メルボルン五輪に出場してから今日まで体操と共に歩んできた人生で、「今までの苦労を今日、たった一日で打ち消してくれました」と女子チームの躍進をたたえた。

   

ジュニアの育成に尽力してきた池田敬子さん(右)にとって、まさに「人生最良の日」となった

 今年で33回目を迎える大会は、東西ジュニアの決勝大会と全日本ジュニア選手権を兼ねている。取材前日には北京五輪体操男子団体総合決勝で、銀メダルを獲得した瞬間をテレビの前で応援したばかり。横浜文化体育館は、さながら五輪の会場のような雰囲気で、選手たちのレベルの高い演技に魅了された。

   

       

未来の五輪選手の卵たちが、日頃の練習の成果を遺憾なく発揮した!

 取材中に出会った池谷幸雄さんはソウル、バルセロナ五輪のメダリストで、現在はジュニア世代を中心とした体操指導に力を注いでいる。池谷さん自身、小学生から高校生の時、この大会に出場した思い出がある。「横浜の文化体育館の地に足を踏み入れることは、子どもたちの目標。僕はこの大会があったから五輪に行けた」と力をこめた。五輪を目指す子どもたちにとって、登竜門となる大会。22歳で現役を引退した池谷さんは、その後芸能界に携わって5年が経ち、「自分はもう一回何をやりたいのか」見つめ直した時、体操クラブを作る夢を見出した。「体操が五輪でメダルを獲っていない時期で、人気がなく低迷していた。僕は銀メダルまでしか獲れなかったので、金メダルを獲れる選手を育成しようと思った。そして当時は少年犯罪が目立ってきた頃。子どもの時に体を動かさないと、心に障害が起きてしまう。子どもたちに体を動かす環境を作ってあげたかった」。二つの決意を胸に、ついに「池谷幸雄体操倶楽部」を設立した。

   

テレビでもおなじみの池谷幸雄さん、五輪選手の育成と体操の普及に力に注いでいる

 自身のクラブの教え子の演技を真剣な表情で見守る池谷さんは、「体操は記録を狙ったり相手を倒す競技ではなく、見て採点してもらう競技。たくさんの方々に会場で見ていただき、迫力や面白さを感じてほしい」と話し、体操の普及を願った。そして池谷さんのクラブ所属の村上茉愛(まい)選手が、見事女子Aクラス個人総合優勝を果たした。小学6年生の村上選手はとても小柄で可憐な少女。「1年生にも身長で抜かされてます」と茶目っ気たっぷりに話し、「今日の優勝が今まで体操をやって来た中で一番嬉しい」と大きな瞳を輝かせた。兄の影響で2歳から体操を始めて、厳しい練習を乗り越えて初優勝。次のステップはジュニアナショナル選手だ。「夢は五輪で金メダルを獲ること」と誓った。16歳で迎える4年後のロンドン五輪に向かって、池谷さんをはじめコーチ陣と二人三脚で新たなる挑戦が始まる。

   

ロンドン五輪の星・村上茉愛選手!演技を終え、池谷コーチと反省会(右)

 瞬く間に終わりの時を迎えた北京五輪。これから語り継がれていく感動のシーンがたくさん生まれた。体操男子個人総合で、大逆転で銀メダルを獲得した内村航平選手もその一人。「体操ニッポン」の新しいヒーローは、一昨年の全日本ジュニア選手権のチャンピオンだ。「全国からダイヤモンドの原石を横浜に持ってくる」と話す大会実行委員長の池田さん。来年はぜひ横浜文化体育館に足を運び、選手たちの輝く姿に触れ、体操の魅力を存分に感じてほしい。 

   

「五輪でメダルを獲る選手」と池田さんが太鼓判を押す、男子Aクラス総合優勝の加藤凌平選手・中央(左)
表彰式でちょっぴり緊張気味の村上選手・右(右)

   

みんな頑張りました!メダルがよく似合ってます!