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スポーツ医科学センター
メタボリックシンドロームについて
●文/横浜市スポーツ医科学センター スポーツ診療部長 高田英臣(内科医)

1 はじめに
 最近、よく眼にするメタボリックシンドローム(メタボリック症候群)。新聞やテレビ、週刊誌で特集を組んでますね。にわかに注目されてきたこの症候群、知ってますか?
 実は医学的にはこの概念は1988年頃から報告されています。古くはシンドロームX、死の四重奏、内臓脂肪症候群とか様々な名称で呼ばれていましたが基本的にはほとんど同じものです。1999年にWHO(世界保健機関)がこれらを整理してメタボリックシンドロームという名称にしました。2005年に日本の診断基準ができ、マスコミに取り上げられることが多くなり、俄然注目の症候群となったわけです。

2 どんなもの?
 断基準には4つの項目がありますが、まず必須条件は肥満があること。これはウエスト周囲計(へその高さの周囲計)で判断します。男性85cm以上、女性90cm以上で、腹部の内臓脂肪面積が100cm2以上に相当します。
これに加えて
(1)中性脂肪150mg/dl以上かつ/または低HDLコレステロール40mg/dl未満
(2)収縮期血圧130mmHg以上かつ/または拡張期血圧85mmHg以上 
(3)空腹時血糖110mg/dl以上です。
正常、内蔵脂肪型肥満の比較写真必須条件の肥満に加えて、この(1)(2)(3)のうち2項目以上あればメタボリックシンドロームと診断されます。高中性脂肪、低HDLコレステロール、高血圧、糖尿病で、すでに薬物治療を受けている場合は、それぞれの項目に含めます。どうでしょうか皆さん。実は中高年の男性のうち30%はウエスト85cmを越えているとする報告もあります。(1)から(3)の項目は健康診断で実施する項目で、特別なものではありません。。

3 なぜいけないの?
 メタボリックシンドロームの4つの項目は偶然に存在したという訳ではないのです。(1)から(3)の異常は連鎖反応的にできあがってくることが分かってきました。つまり、過食と運動不足→内臓脂肪蓄積→インスリン抵抗性ときます。内臓脂肪蓄積とインスリン抵抗性は脂質代謝異常、糖尿病、高血圧をきたします。そうすると、一つひとつは軽症でもまとまると重症の動脈硬化を起こしてくるのです。
日本は長寿の国ですが、死因のトップは癌、そして脳血管障害、心疾患と続きます。脳血管に動脈硬化が起こると脳卒中、心臓の血管に起こると心筋梗塞を起こすリスクが高くなります。すなわちメタボリックシンドロームから致死的疾患を誘発してくるわけです。
イラスト この現象をダイナミックにとらえたのが「メタボリックドミノ」という概念です。生活習慣のゆらぎが「ドミノ倒し」の最初の一つの駒を倒す引き金とイメージし、それがやがて大きな3つの駒(高脂血症、糖尿病、高血圧)を倒し、流れがどんどん加速され広がっていく様子を表現したものです。
 日本人の死因の上位である心疾患(心筋梗塞や狭心症)の発生は、肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪のうち1つでもあると5倍、2つで10倍、3〜4つで30倍と突然、確率が跳ね上がっていくことからもメタボリックシンドロームの危険性が理解できるでしょう。。
4 治療はまず減量!
 メタボリックシンドロームの治療はまず減量、正確には内臓脂肪を落とせばいいということです。内臓脂肪はつきやすく落ちやすいのが特徴です。これは治療の立場からはラッキーですね。皆さんも、そういえば思いあたることがありませんか?「肥ったな」とか「痩せたな」というのは実は人に言われなくても自分が一番最初に気づきますよね。ズボンやスカートをはいた時のふとした感覚です。減量して体重が1〜2s減っても、誰も気づいてくれません。だけど本人には手ごたえがあるはずです。そう、ズボンやスカートのウエストが少しゆるくなった経験があるでしょう。これは腹部の内臓脂肪が落ちた確かな手ごたえです。そうなると減量は俄然、やる気がでますよね。


5 減量は食事と運動で
 コンビニのおにぎり一つで200カロリーぐらいあります。このエネルギーを運動で消費するには、ざっと1時間のウォーキングが必要です。運動は減量にはいかに効率が悪いか分かるでしょう。1時間も歩かなければならないなら、おにぎりを我慢したほうが手っ取り早いですね。とはいっても、食事制限だけで減量すると、脂肪も減りますが同時に筋肉や骨も減っていきます。それで、もしリバウンドして肥ってしまうと脂肪がつきます。そして、結局同じ体重にもどってしまったら、前より筋肉と骨が少なく、脂肪が多い身体になります。これを繰り返していくと…。
 筋肉はじっとしていてもエネルギー消費が大きい組織です。だから筋肉が多い身体は肥りにくい身体でもあります。運動をすると筋肉が増えて骨も強くなります。そして脂肪が燃えて減ってきます。
 だから減量には運動と食事療法が必要なのです。運動は全速力で走るようなきついことは不要です。ウォーキングや軽いジョッギングの方が脂肪燃焼には効率的です。有酸素運動というのはこのことです。食事のとり方については栄養士が別項に書いていますので是非ご覧ください。

6 治療の3原則
イラスト 運動だけでは効率が悪い、食事制限だけでは筋肉や骨も落ちてしまう。それで運動と食事ですね。それに薬が加わって治療の3原則です。すなわちメタボリックシンドロームや生活習慣病の治療はこの3本柱が支えているわけです。もちろん、薬をのまなくてもいいなら、のまないに越したことはありません。だけど、「運動+食事でいくから薬はのまない」とか「そんなややこしいならもう薬でやります」という人が多いのです。運動と食事制限はこの症候群では誰もがまずやらなくてはならない基本であって、必要に応じて薬が加わるということです。
 メタボリックシンドロームをはじめ生活習慣病の治療の難しさは、薬を使わないことではなく、どんな薬をどのタイミングで使うかが頭を悩ますところなのです。その人によくあった、よく効く薬を選ぶことはあたり前ですが簡単ではありません。
 高血圧や高脂血症で「一回薬をのみだすと一生のまなくてはいけなくなるからのまない」という人がたくさんいます。病状がよくなれば当然、薬は減量するか止めるかになります。薬が不必要な状態となっているのに漫然とのみ続けなければならないことなどありません。だから薬をのむことに誤った認識を持っていると治療がうまくいかなくなります。

7 おわりに
 メタボリックシンドロームについて簡単に解説しました。お分かりになりましたか?日頃、お受けになっている健診の結果票を、是非もう一度眺めてください。自身の結果を見て、なにがどういけないのか、どうすればいいのかを知ることから治療が始まります。


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