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スポーツ医科学センター
昔からの健康法
●文/藤牧利昭(横浜市スポーツ医科学センター)

 今日、代替医療としての東洋医学への関心が集まってきています。代替医療とは、いわゆる西洋医学以外の療法で、中国医学(漢方薬、鍼灸、気功) やインド医学(ヨーガ) のほか、心理療法(サイコセラピー)、食事療法、健康食品療法、薬用・香料植物(ハーブ)療法、電気療法、免疫療法などがあるといわれます。
 現代医学の主流である西洋医学に対して、できたら投薬や手術をせずに治りたいという希望から、体に優しい医療、癒しの治療効果が、日本だけでなく、欧米でも評価され始めています。アメリカのNIH(国立衛生研究所) が東洋医学の研究を進め、イギリスではいくつかの代替医療に健康保険が適用され、整骨整体医療、ホメオパシー、ハーブ療法も注目されているようです。
 ここではいくつかを紹介しましょう。

イラスト青竹踏み
 ツボの宝庫・足裏刺激で血液循環良好に
 二つに割った青竹を床に置き、その上に立って踏みつけます。いすに腰掛けて行ったり、足を叩きつけたりする方法もあるようです。使用するのは本物の青竹のほかに、人工のもの、イボ状の突起をつけたものもあります。
 東洋医学では血液の循環に重きをおき、とくに抹消の血液循環が悪いと体に変調をきたすと考えるので、いわゆるツボの宝庫である足の裏のツボを刺激できるのが良いと言われています。硬い革靴を履く時間の長い現代人では、その必要性が増したのかも知れません。
 また、ジョギングやウォーキングを行う人は、足底筋膜炎になりやすいのですが、その対策としても有効と考えられています。足の裏を適切に刺激することにより、全身の血液循環が良くなり、頭の働きも良くなるという説もあります。フィットネスクラブでは、青竹踏みを取り入れた教室を開催しているところもあります。

イラスト乾布摩擦・冷水摩擦
 皮膚を鍛えてからだの抵抗力アップ  
 乾いたタオルなどの布で体をこすって摩擦する乾布摩擦は、皮膚を鍛え、体全体の抵抗力を高めて病気にかかりにくくなると言われます。
 乾布摩擦をすると、皮膚の血行がよくなり、全身の血液循環が改善されるとされています。また、裸になるので外気浴をすることにもなり、皮膚の体温調節機能が刺激され、寒冷に対する抵抗力を高めるとも言われています。
 皮膚を刺激する方法としては、冷水摩擦もあります。皮膚をこする刺激と同時に冷温刺激が加わるので、より効果があるという説もあります。
 一方、乾布摩擦をして皮膚をこすると、皮膚は乾燥しやすくなり、小じわが寄ったり、ひび割れたり、かゆくなったり、皮膚が黒ずんでシミができることがあるという説もあります。また、寒いと抹消血管が収縮しますので、血圧の高い中高年者は「早起きして庭先で乾布摩擦」は避けましょう。


薬湯…ゆず湯ほか
 薬効成分で保温・心身のリラックス 
 昔から日本では、季節おりおりの自然の恵みを活かし、薬効のある植物や果物、野菜を浴槽の中に入れた薬湯を楽しんできました。各種の薬効成分が疲労を癒し、精油成分が肌をコーティングして保温効果を高め、香りによる心身のリラクセーション効果もあると言われます。
 冬場の代表格は、ゆず湯で、ゆずの果実5~6個を輪切りにして布袋に入れ、浴槽に浮かべます。冬至の日には、かぼちゃを食べ、ゆず湯に浸かる方も多いことでしょう。ゆずやレモンなど柑橘類の皮に含まれる成分には、血行を良くする作用があると言われます。また、ゆずに含まれるクエン酸、リンゴ酸は、肩こりや筋肉痛を予防し、ビタミンCやフラノボイドが活性酸素を消去すると言われます。種のペクチン質は、血糖上昇の予防、コレステロール値を抑え、血行も良くして、小ジワ、シミ、ソバカスに効果があるとも言われます。
 ほかに、しょうが湯は、血行と新陳代謝を促進して身体を温め風邪の予防に、大根湯は、皮膚に膜を作り保温効果を高めると言われています。

イラストラジオ体操
 手軽で全身をバランスよく使った体操 
 「昔からの」というほど古くはないのですが、昭和初期に普及し、現在でも広く親しまれているエクササイズとしてラジオ体操があります。
 ラジオ体操は、昭和3年に「国民保健体操」として放送が開始され、広く普及しました。今でも建設作業、運転手など身体作業が重要な職場や、朝の公園などで行われています。
 「軍国主義的」ということで、体操そのものを否定する向きもありますが、近年、国連国際高齢者年にちなんで作られた「みんなの体操」を含め、いつでもどこでも誰でも手軽にでき、全身をバランスよく使った体操といえます。

イラスト
相撲健康体操

 最新の科学的トレーニング理論に合致  
 相撲は、日本古来の格技ですが、そのトレーニングは最新の科学的トレーニング理論に合致したものが多いのです。
 「しこ」や「鉄砲」は衝撃によって筋肉を鍛えるプライオメトリックスですし、すり足などは、筋力トレーニングのスローリフトを先取りした形です。最近、相撲の基本動作から相撲健康体操が考案され、注目されています。本来、力士の能力を最大限に引き出すための「けいこ」ですが、いわゆる「重心」や体の中心軸である背骨を強く安定させることは、最近、話題のコア・トレーニングそのものです。

防衛体力・東洋医学
 健康維持する力を高め自然治癒力アップ  
 一般に「体力」といえばスポーツの競技成績に直接関係する筋力、パワー、持久力などの行動体力を思い浮かべます。1960年代以降、持久力トレーニングが健康づくりに有効とされ、研究も一気に全世界に広まり、今日では、体力づくりが健康づくりにつながることは常識となりました。
 これに対して、環境が変化しても体内条件を一定に維持する恒常性、外からの刺激に適応する適応性、病原菌などに抵抗する免疫力などの働きによって、健康を維持する自動調節能力を防衛体力といっていますが筋力や持久力のように、体力テストで数値化することが困難なのが弱点です。
 近年、東洋医学が注目されているのは、遺伝的要因や環境要因が異なる一人ひとりの人に、「その人にとって最も有効な方法はなにか」を優先させているからでしょう。「同じ原因があっても、環境条件によって、結果は異なる」というのが東洋思想の大きな特徴と言われます。人間が本来備えている「自然治癒力」を重視し、さまざまな環境要因に働きかけて、一人ひとりがその人なりに健康を獲得していくというのが東洋医学的健康法と言えるのではないでしょうか。
 今後、ますます病気の予防が大切になりますが、生活習慣や食習慣の改善、免疫力、自治癒力の強化という一次予防には、古くからの健康法が有効なようです。早期発見と治療の二次予防には、現代の医療体制が有効なのでしょう。

実証データ
 最近は、「データに基づく医療」が重視されています。「血行が良くなる」「代謝を促進」などは、データがとりにくいので、「科学的に実証された」とは言いにくいことを理解しておいてください。

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