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減量と運動
●文/藤牧利昭(横浜市スポーツ医科学センター健康科学課)


生活習慣病の予防策として、肥満と減量について考えてみましょう。
肥満の判定
1.BMIと標準体重の計算例 肥満の判定は身長と体重の関係から、ボディ・マス・インデックス(BMI)を計算して行います。例(1)のように計算し、22が標準で、25を超えたら肥満とされています。身長別にどの位の体重が相当するかを表にしました(2)。以前の方法で計算した値(2右)と比較すると、以前の方法では、小柄な人の多くが「肥満」と判定されてしまうのです。ご自身や回りの人のBMIを計算してみてください。若い頃と体型が変わっていたら、その頃の体重を思い出して計算してください。何人か計算してみると、「筋肉質なスポーツマンはどうなるの?」という疑問が出るはず。ハンマー投げの室伏選手は190cmに近い長身ですが、体重も100kgに近く、BMIは27以上になります。彼は肥満?そんなことありません。筋肉マンですが、ムダな肉はありません。肥満で問題なのは、身長と体重のバランスよりも体脂肪です。皮下脂肪と内臓脂肪を合わせた体脂肪が身体の何%あるかが大切です。最近、簡単に測れる器具が出てきましたが、まだ、器具の違いや測定精度などに問題があるので、肥満の判定に使われていないのです。腕と背中の皮下脂肪を指でつまんで測る方法は、専用の器具と慣れた測定者が必要ですが、比較的広く用いられていますので、標準値を載せました(3)。
2.計算例3.標準的な皮下脂肪厚と体脂肪率

減量の原則
4.運動によるエネルギー消費量 減量に有効な運動は、30分以上連続が良いとか、10分刻みコマ切れ運動でも良いとか、軽めが良いからウォーキングだとか、筋力強化のダンベル運動が基礎代謝を高めるので効果的、などなど情報が氾濫しています。しかし、原理的には単純で、食べて摂取するカロリー量と動いて消費するカロリー量のバランスをマイナスにすれば良いのです。食べる方は、三度の食事と間食ですが、お酒の席での摂取カロリーも相当なものです。動く方は、ウォーキングとかテニスとか、まとまった運動(エクササイズ)と日常活動でのカロリー消費です。エクササイズのカロリー消費量の概算例を示しました(4)。一般的な時間設定にするため、運動時間が異なっていることに充分注意してください。運動でカロリーを消費するのは、結構大変だということが分かります。週3回やったとしても、一日平均にすると150カロリー以下になってしまいます。一日の消費カロリーは、成人で1500~2000カロリー以上ですから、日常活動も重要な意味を持つのです。

筋力づくりと有酸素運動
 最近、注目されているのが、レジスタンス・エクササイズ。ジムにあるマシンを使うと、高齢者でも安全に全身の筋力を高めることができます。筋力が上がれば、階段の昇り降りや荷物運びなど日常の活動に余裕ができるので、活動的な時間が増えて一日のカロリー消費量が増える。結果的に無理なく減量できるというものです。もっとも有効とされていたウォーキングだけだと、筋力が低下してしまうこともあります。逆にレジスタンス・エクササイズだけでは、ジムにいる間に消費するカロリー量が少なくなります。そこで両者を組み合わせ、レジスタンスとエアロバイクやベルトの上でのジョギングを交互に繰り返すスタイルが注目されるようになっているのです。
 トレーニングは一日おき?筋力アップを目指すなら、強い刺激が必要で、その分休養も必要です。しかし、軽いレジスタンス・エクササイズは毎日でも大丈夫。少しやりすぎたら、別の筋肉を使うエクササイズにすれば良いのです。
 水泳や水中運動は?今ひとつです。慣れてくると効率が改善されてカロリー消費量も減少するようです。また、水から上がった時の脱力感をカロリー消費と錯覚しがちです。無駄?そんなことありません。体重が多い人にはお勧めです。ウォーキングやジョギングの好きな人は脚の骨や関節に負担が掛かり過ぎることがあります。何回かのうち1回はプールに入ると良いでしょう。

数値計算
 摂取と消費が1日にマイナス300カロリーとしても、脂肪にすると30~40g程度、1月に1kg程度が目安のようです。体重の多い人でも、せいぜい月2kg程度のようです。それ以上だとリバウンドするとか。運動して1日に2kg減ったことがある?間違いではありません。ただし、汗などで身体から一時的に水がなくなっているだけです。次の日には戻っていますよね。ついでに言うと、運動すると一時的に体脂肪率は上がります。体重は100g単位で減りますが、脂肪の方は10g単位の減少ですから、体脂肪を体重で割った値は上がることになるのです。減量の効果は、運動で100カロリー消費するのも食事を100カロリー押さえるのも一緒です。食品成分表を見ると、食事を押さえる方がはるかに楽に思えます。その通りです。でも、楽をしようという考え方自体が間違いなのです。食事を控えたら、元気がなくなって不活発になり、1日のエネルギー消費量が少なくなる。運動で元気になれば、活動的になる。この差が大きいのです。弱い筋肉があると、運動に得意不得意が出来て、苦手なことは避けるようになる。だから筋力づくりも大切なのです。まずはウォーキングで結構ですが、長く歩けるようになったら、歩くための筋肉と他の筋肉で差が出ますし、効率よく歩けるようになるとカロリー消費も下がります。レジスタンス・エクササイズも行うと理想的。プールにも行きましょう。ウォーキングの時に階段の昇り降りも入れる。もっと元気なら上り坂、下り坂を歩く。さらに元気なら、軽く小走りを入れる。10歩でも20歩でも。

その田の減量
 ここで、スポーツと減量について考えておきましょう。スポーツ競技には、減量が成績向上につながる種目があります。マラソンや長距離走、体操、新体操、フィギュアスケートなども自分の身体が軽い方が有利です。レスリングや柔道では、減量して下のクラスに出られればチャンス拡大です。しかし、激しいトレーニングと減量を同時に行うと身体には強いストレスが掛かりますので、ジュニア時代には充分な管理が必要で、特に女子選手の場合は細心の注意が必要です。
 一方、若い女性の多くは、自分は太っていると感じていて、痩せたいと願っています。健康面から減量が必要な人ははるかに少ないのに、美しくなるために減量したいと考えています。細ければ美しい?細い手足で筋力が弱く、柔軟性もなく、膝が曲がり背が丸く歩いていたのでは美しいとは言えません。主観の問題ですが、私は、軽快にしなやかに動けてこそ美しいと思います。柔軟で、ある程度の強さを持った筋肉を使って、しなやかに伸びやかに動けることを目指していただきたいと思います。

まとめ
運動イラスト 減量のために有効なことは、エクササイズを採り入れる日数を多くすること、1日のうちで活動的な時間を多くすることです。そのためには、自分に合った適度な運動を行う、1度に無理をしない、同じことばかりでなくバラエティーに富んだことを行うことが大切です。 
 ストレッチは?ここまで取り上げていませんが、私は、個人的には一番大切だと思っています。科学的に広く認められている方法は先に述べた通りです。なぜ、エクササイズが面倒なのか?なぜ、活動的な1日を過ごせないのか?「あたま」と「からだ」が両方疲れているからです。温かい部屋で、好きな音楽を聴きながら、猫が伸びをするようなイメージでノンビリと優しくストレッチ。「からだ」の疲労が軽くなれば、意欲が出てきます。自然と身体を動かしたくなってきます。

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2004年5月25日作成 (財)横浜市体育協会
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