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スポーツ医科学センター
スポーツ医科学の現場から  取材●文/長嶋淳三(スポーツ医科学センター内科診療科)   今回のテーマ:
「スポーツ心臓とは」
 「スポーツ心臓」というと、言葉として聞いたことがある程度で、実際にどのようなものかについては意外と皆さんご存知ないのではないでしょうか。
 今回はそんな意外と知らない「スポーツ心臓」についてご紹介します。

スポーツ心臓の歴史
 スポーツ心臓の概念は、1899年に、一流クロスカントリースキー選手の心臓濁音界(胸を叩いて心臓の大きさを測定する方法による)が大きくなることが初めて報告されたことに始まります。この報告では“キング・オブ・スキーは心臓が大きい、心臓の大きい者が勝者となる”と提唱されました。しかしスポーツによる心臓の肥大が健康的な変化か、病的な変化かについては意見が定まらず、1960年代までは、一流スポーツ選手が比較的短命であることから、スポーツによる心臓の肥大は病的な変化であるとの考えもありました。1970年代には心エコー図法(超音波による検査法)の導入により、スポーツ心臓は健康的な変化であり、競技能力を高めるための生理的な適応であるという、現在のスポーツ心臓の概念に到っています。

スポーツ心臓のメカニズム
 スポーツ心臓とは主に、心臓の肥大と徐脈(一分間あたりの脈拍が少なくなる)をさします。心臓の肥大と徐脈は安静時にのみみられ、心臓内に貯められる血液量が一般人に比較し多くなります。しかし運動時にはこの貯められた血液は押し出され、脈拍も増加し、全身を巡る血液の量が増加します。これにより全身の筋肉・臓器への酸素供給が増え、競技能力を高めます。

スポーツ心臓の徴候
 まず最も特徴的な徴候は脈拍数の低下です。一般人の脈拍数は60〜70回/分程度ですが、スポーツ選手では40〜50回/分程度まで低下し、一流マラソン選手では30回/分台のこともしばしば認めます。心臓の肥大は胸部レントゲン写真や心エコー検査で診断できます。

競技によるスポーツ心臓の形の特徴
 スポーツは、マラソン・水泳などに代表される動的(持久的)スポーツと、重量挙げ、柔道などに代表される静的(筋力的)スポーツに分類されます。動的スポーツでは運動中には血圧はあまり上がらず、体を巡る血液量増やし、全身の筋肉への酸素補給を長時間にわたり維持するために、全身から肺を回って心臓へ戻ってくる血液が増えるので、心臓の容積の拡大を生じます。
 次に静的スポーツでは、運動中には血圧が300(mmHg)近く、またはそれ以上にまで上がり、心臓が血液を押し出す抵抗が増すので、心臓の筋肉自体が強化されぶ厚くなります。しかし現実にはスポーツ選手は少なくともトレーニングにおいては動的・静的の両者の要素を含んだ運動を取り入れていますので、個々の例が単純に何れかのメカニズムで説明できるわけではありません。
胸部レントゲンの比較
一般健常者 胸部レントゲンサイクリスト 胸部レントゲン

病的心との鑑別
 心臓の肥大は病気によっても生じ、特に心筋症と呼ばれる心臓の筋肉の病気では、スポーツ心臓と類似した心臓容積の増加や心筋の肥厚を認めます。わが国では年間100例以上のスポーツ関連の突然死が発生していますが、特に小児から青年期の突然死のほとんどが、この心筋症によるものです。したがって、スポーツ選手では心臓の検査は重要であり、特に心エコー図検査を用いた検診が効果を発揮します。
 スポーツ心臓の成立条件としては@高校生以上A耐久競技選手により多いB数年以上のトレーニングの継続が挙げられます。またもとの状態に戻ることができるのが特徴であり、トレーニング中止後一年以内に心臓肥大は消失します。よって中高年者で心臓の大きい方が、「学生時代にスポーツ選手であったために心臓が大きくなった。」というのは誤りで、何らかの病気が隠れていると考えるべきです。

おわりに
 横浜市スポーツ医科学センターでは多くのスポーツ選手の検診に心電図検査、胸部レントゲン検査に加え、心エコー図検査を導入しています。当センターでは循環器専門医、内科専門医、超音波専門医の資格をもった医師が診療にあたっております。定期検診義務のない、一般市民スポーツ愛好者の方にも最低一年に一度は心臓検診の受診が望まれます。どうぞお気軽にご相談ください。

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