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SPORTSよこはまVol.2・スポーツ医科学センター

スポーツ医科学センター 運動とリラクゼーション

横浜市スポーツ医科学センター診療局長 高田 英臣(内科医)

はじめに

  2008年4月から「特定健康診査・特定保健指導」が始まります。これはメタボリックシンドロームの健診とも言うべきもので、受診対象は40〜74歳の国民6千万人弱になります。メタボリックシンドロームについては新聞やテレビ、週刊誌で何度か眼にされたことがあるでしょう。
  実はこの概念は新しいものではなく、20年も前から報告されています。古くはシンドロームX、死の四重奏、内臓脂肪症候群とか様々な名称で呼ばれていましたが基本的には同じものです。1999年にWHO(世界保健機関)がこれらを整理してメタボリックシンドロームという名称にしました。そして2005年には日本の診断基準が報告されました。メタボリックシンドロームの健診は従来のように異常を指摘するだけでなく、早期に医療が介入し、その改善に向けて日常生活の指導にまで踏み込んだ画期的なシステムです。

メタボリックシンドロームとは?

  この診断には4つの基準項目があります。まず必須条件は肥満があることでウエスト周囲計で判定します。男性は85cm以上、女性は90cm以上なら該当し、腹部の内臓脂肪面積が100cm2以上あることに相当します。これに加えて1.中性脂肪150mg/dl以上かつ/または低HDLコレステロール40mg/dl未満 2.収縮期血圧130mmHg以上かつ/または拡張期血圧85mmHg以上 3.空腹時血糖110mg/dl以上 です。必須条件の肥満に加えて、この1.2.3.のうち2項目以上あればメタボリックシンドロームと診断されます。高中性脂肪、低HDLコレステロール、高血圧、糖尿病で、すでに薬物治療を受けている場合は、それぞれの項目に含めます。実は中高年の男性のうち30%はウエスト85cmを越えているとする報告もあります。1.から3.の項目は健康診断で実施する項目で特別なものではありません。ちょっと心配になった人は健康診断票を眺めてみてください。ウエストサイズがよく分からない人は測ってみてください。立った状態で軽く息を吐いた後、臍(へそ)のレベルでメジャーを巻いた時の数値です。

なぜいけないのでしょうか?

  メタボリックシンドロームの4つの項目は偶然に存在しているという訳ではないことが分かってきました。1.から3.の異常は連鎖反応的にできあがってくるのです。つまり、過食と運動不足→内臓脂肪蓄積→インスリン抵抗性ときます。内臓脂肪蓄積とインスリン抵抗性は脂質代謝異常、糖尿病、高血圧を起こす引き金となるのです。そうすると、一つひとつは軽症でも重複してくると重症の動脈硬化を起こしてくるのです。
  日本は長寿の国ですが、死因のトップは癌、そして脳血管障害、心疾患と続きます。脳血管に動脈硬化が起こると脳卒中、心臓の血管に起こると心筋梗塞を起こすリスクが高くなります。すなわちメタボリックシンドロームから致死的疾患、最悪の場合は突然死を誘発してくるわけです。古くは死の四重奏と呼ばれた所以です。
  この現象をダイナミックにとらえたのが「メタボリックドミノ」という概念です。生活習慣のゆらぎが「ドミノ倒し」の最初の一つの駒を倒す引き金とイメージし、それがやがて大きな3つの駒(高脂血症、糖尿病、高血圧)を倒し、流れがどんどん加速され広がっていく様子を表現したものです。
  日本人の死因の上位である心疾患(心筋梗塞や狭心症)の発生は、肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪のうち1つでもあると5倍、2つで10倍、3〜4つで30倍と突然、跳ね上がっていくことからもメタボリックシンドロームの重要性が理解できるでしょう。

治療はまず減量から

  メタボリックシンドロームの治療の第一歩はまず減量、正確には内臓脂肪を落とせばいいということです。内臓脂肪はつき易く落ちやすいのが特徴です。これは治療の立場からはラッキーです。皆さんも、そう言えば思い当たることがありませんか? 「肥ったな」とか「痩せたな」というのは、実は人に言われなくても自分が一番最初に気づきます。ズボンやスカートをはいた時のふとした感覚です。減量して体重が1〜2kg減っても、誰も気づいてくれません。だけど本人には手ごたえがあるはずです。そう、ズボンやスカートのウエストが少しゆるくなった経験があるでしょう。これは腹部の内臓脂肪が落ちた確かな手ごたえです。ちょっと頑張れば効果が実感できるとなると、俄然やる気がでますよね。

減量は食事と運動で

  コンビニのおにぎり一つで200カロリーぐらいあります。このエネルギーを運動で消費するには、ざっと1時間のウォーキングが必要です。運動は減量にはいかに効率が悪いかが分かるでしょう。1時間も歩かなければならないならおにぎりを我慢したほうが手っ取り早いですね。だけど、食事制限だけで減量すると、脂肪も減りますが同時に筋肉や骨も減っていきます。それで、もしリバウンドして肥ってしまうと脂肪がつきます。そして、結局同じ体重にもどってしまったら、前より筋肉と骨が少なく、より脂肪が多い身体になります。これを繰り返していくと……。筋肉はじっとしていてもエネルギー消費が大きい組織です。だから筋肉が多い身体は肥りにくい身体でもあります。運動をすると筋肉が増えて骨も強くなります。そして脂肪が燃えて減ってきます。だから減量には運動と食事療法が大切なのです。運動は全速力で走るようなきついことは不要です。ウォーキングや軽いジョギングの方が脂肪燃焼には効果的です。有酸素運動というのはこのことです。まず、1日1時間のウォーキングから始めてください。連続して1時間も取れない人は15分を4回でもかまいません。自分のできるペースで、無理をすることはありません。長続きすることが大切で、やがて習慣になると歩くことが楽しくなるはずです。体力がついてきたらウォーキングとジョギングを併用すればいいでしょう。

治療の3本柱

  減量には運動だけでは効率が悪い、食事制限だけでは筋肉や骨も落ちてしまう。それで運動と食事が大切だと分かりましたね。それに重症度に応じて薬が加わって治療の3本柱となります。すなわちメタボリックシンドロームや生活習慣病の治療は、この3本柱が支えているわけです。もちろん、薬をのまなくてもいいならのまないに越したことはありません。しかし、「運動+食事でいくから薬はのまない。」とか「そんなややこしいならもう薬をのみます。」という人が多いのです。薬物療法か運動+食事療法かのどちらかを選ぶのではなく、運動と食事療法は誰もがまずやらなくてはならない基本であって、必要に応じて薬が加わるということです。高血圧や高脂血症で「一回薬をのみだすと一生のまなくてはいけなくなるからのまない。」という人がたくさんいます。病状がよくなれば当然、薬は減量するか止めるかになります。だから薬をのむことに誤った認識を持っていると治療がうまくいかなくなります。

おわりに

 メタボリックシンドロームについて簡単に解説しました。日頃、健診をお受けになっている方は、是非もう一度、結果票を眺めてください。自身の結果を見て、なにがどういけないのか、どうすればいいのかを知ること、目標を設定することから治療が始まります。「健康を守るのは自分のためであって自分の責任である」。そんな自覚を持って日々の生活を送ってください。

スポーツ医科学センター 運動とリラクゼーション

横浜市スポーツ医科学センター診療局長 高田 英臣(内科医)

はじめに

  2008年4月から「特定健康診査・特定保健指導」が始まります。これはメタボリックシンドロームの健診とも言うべきもので、受診対象は40〜74歳の国民6千万人弱になります。メタボリックシンドロームについては新聞やテレビ、週刊誌で何度か眼にされたことがあるでしょう。
  実はこの概念は新しいものではなく、20年も前から報告されています。古くはシンドロームX、死の四重奏、内臓脂肪症候群とか様々な名称で呼ばれていましたが基本的には同じものです。1999年にWHO(世界保健機関)がこれらを整理してメタボリックシンドロームという名称にしました。そして2005年には日本の診断基準が報告されました。メタボリックシンドロームの健診は従来のように異常を指摘するだけでなく、早期に医療が介入し、その改善に向けて日常生活の指導にまで踏み込んだ画期的なシステムです。

メタボリックシンドロームとは?

  この診断には4つの基準項目があります。まず必須条件は肥満があることでウエスト周囲計で判定します。男性は85cm以上、女性は90cm以上なら該当し、腹部の内臓脂肪面積が100cm2以上あることに相当します。これに加えて1.中性脂肪150mg/dl以上かつ/または低HDLコレステロール40mg/dl未満 2.収縮期血圧130mmHg以上かつ/または拡張期血圧85mmHg以上 3.空腹時血糖110mg/dl以上 です。必須条件の肥満に加えて、この1.2.3.のうち2項目以上あればメタボリックシンドロームと診断されます。高中性脂肪、低HDLコレステロール、高血圧、糖尿病で、すでに薬物治療を受けている場合は、それぞれの項目に含めます。実は中高年の男性のうち30%はウエスト85cmを越えているとする報告もあります。1.から3.の項目は健康診断で実施する項目で特別なものではありません。ちょっと心配になった人は健康診断票を眺めてみてください。ウエストサイズがよく分からない人は測ってみてください。立った状態で軽く息を吐いた後、臍(へそ)のレベルでメジャーを巻いた時の数値です。

なぜいけないのでしょうか?

  メタボリックシンドロームの4つの項目は偶然に存在しているという訳ではないことが分かってきました。1.から3.の異常は連鎖反応的にできあがってくるのです。つまり、過食と運動不足→内臓脂肪蓄積→インスリン抵抗性ときます。内臓脂肪蓄積とインスリン抵抗性は脂質代謝異常、糖尿病、高血圧を起こす引き金となるのです。そうすると、一つひとつは軽症でも重複してくると重症の動脈硬化を起こしてくるのです。
  日本は長寿の国ですが、死因のトップは癌、そして脳血管障害、心疾患と続きます。脳血管に動脈硬化が起こると脳卒中、心臓の血管に起こると心筋梗塞を起こすリスクが高くなります。すなわちメタボリックシンドロームから致死的疾患、最悪の場合は突然死を誘発してくるわけです。古くは死の四重奏と呼ばれた所以です。
  この現象をダイナミックにとらえたのが「メタボリックドミノ」という概念です。生活習慣のゆらぎが「ドミノ倒し」の最初の一つの駒を倒す引き金とイメージし、それがやがて大きな3つの駒(高脂血症、糖尿病、高血圧)を倒し、流れがどんどん加速され広がっていく様子を表現したものです。
  日本人の死因の上位である心疾患(心筋梗塞や狭心症)の発生は、肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪のうち1つでもあると5倍、2つで10倍、3〜4つで30倍と突然、跳ね上がっていくことからもメタボリックシンドロームの重要性が理解できるでしょう。

治療はまず減量から

  メタボリックシンドロームの治療の第一歩はまず減量、正確には内臓脂肪を落とせばいいということです。内臓脂肪はつき易く落ちやすいのが特徴です。これは治療の立場からはラッキーです。皆さんも、そう言えば思い当たることがありませんか? 「肥ったな」とか「痩せたな」というのは、実は人に言われなくても自分が一番最初に気づきます。ズボンやスカートをはいた時のふとした感覚です。減量して体重が1〜2kg減っても、誰も気づいてくれません。だけど本人には手ごたえがあるはずです。そう、ズボンやスカートのウエストが少しゆるくなった経験があるでしょう。これは腹部の内臓脂肪が落ちた確かな手ごたえです。ちょっと頑張れば効果が実感できるとなると、俄然やる気がでますよね。

減量は食事と運動で

  コンビニのおにぎり一つで200カロリーぐらいあります。このエネルギーを運動で消費するには、ざっと1時間のウォーキングが必要です。運動は減量にはいかに効率が悪いかが分かるでしょう。1時間も歩かなければならないならおにぎりを我慢したほうが手っ取り早いですね。だけど、食事制限だけで減量すると、脂肪も減りますが同時に筋肉や骨も減っていきます。それで、もしリバウンドして肥ってしまうと脂肪がつきます。そして、結局同じ体重にもどってしまったら、前より筋肉と骨が少なく、より脂肪が多い身体になります。これを繰り返していくと……。筋肉はじっとしていてもエネルギー消費が大きい組織です。だから筋肉が多い身体は肥りにくい身体でもあります。運動をすると筋肉が増えて骨も強くなります。そして脂肪が燃えて減ってきます。だから減量には運動と食事療法が大切なのです。運動は全速力で走るようなきついことは不要です。ウォーキングや軽いジョギングの方が脂肪燃焼には効果的です。有酸素運動というのはこのことです。まず、1日1時間のウォーキングから始めてください。連続して1時間も取れない人は15分を4回でもかまいません。自分のできるペースで、無理をすることはありません。長続きすることが大切で、やがて習慣になると歩くことが楽しくなるはずです。体力がついてきたらウォーキングとジョギングを併用すればいいでしょう。

治療の3本柱

  減量には運動だけでは効率が悪い、食事制限だけでは筋肉や骨も落ちてしまう。それで運動と食事が大切だと分かりましたね。それに重症度に応じて薬が加わって治療の3本柱となります。すなわちメタボリックシンドロームや生活習慣病の治療は、この3本柱が支えているわけです。もちろん、薬をのまなくてもいいならのまないに越したことはありません。しかし、「運動+食事でいくから薬はのまない。」とか「そんなややこしいならもう薬をのみます。」という人が多いのです。薬物療法か運動+食事療法かのどちらかを選ぶのではなく、運動と食事療法は誰もがまずやらなくてはならない基本であって、必要に応じて薬が加わるということです。高血圧や高脂血症で「一回薬をのみだすと一生のまなくてはいけなくなるからのまない。」という人がたくさんいます。病状がよくなれば当然、薬は減量するか止めるかになります。だから薬をのむことに誤った認識を持っていると治療がうまくいかなくなります。

おわりに

 メタボリックシンドロームについて簡単に解説しました。日頃、健診をお受けになっている方は、是非もう一度、結果票を眺めてください。自身の結果を見て、なにがどういけないのか、どうすればいいのかを知ること、目標を設定することから治療が始まります。「健康を守るのは自分のためであって自分の責任である」。そんな自覚を持って日々の生活を送ってください。