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えのきどいちろうの横浜スポーツウォッチング

vol.53「ビーコル出航!」

 

 

 歴史的な試合に立ち会った。9月24日、横浜文化体育館、Bリーグ開幕節第1戦・横浜ビー・コルセアーズ vs サンロッカーズ渋谷だ。その週、他にさきがけて22、23日の両日、代々木第一体育館でアルバルク東京 vs 琉球ゴールデンキングスの試合が行われ、NHK-BS1で生中継(22日に関してはフジテレビが地上波ゴールデン放映!)された。特にLEDビジョンで動画が自在に映し出されるバスケットコートの演出は見る者の度肝を抜いた。日本じゅうのバスケット熱がグワッと高まった週だ。僕はJR関内駅改札でライターの北尾トロさんと待ち合わせていた。

 

 北尾トロさんは裁判傍聴ルポ等で知られる売れっ子ライター。あんまりスポーツの印象ないと思うが、長年のNBAファンだ。衛星放送でNBAの試合は見てきたが、日本国内でNBLやbjリーグをはじめ生のバスケを見る習慣がない。是非ともBリーグ開幕に引っ張って来たい層なのだ。反応が見たかった。「東京 vs 琉球」も地上波で見てもらって、ウォーミングアップはバッチリのはずだ。ビーコルたのむぜ、バスケ新時代の幕開けだ。北尾トロさんを熱狂させてくれ。

 

 関内駅前は雨上がりだった。CS進出を決め意気上がるベイスターズファンとは逆方向、横浜文化体育館(通称「ブンタイ」)のほうへ歩く。トロさんは「Bリーグ地上波中継、LINEで教えてくれてよかったよ。面白かった。LEDすごかったね」とテンションが高い。Bリーグ開幕戦のメディア露出は、1993年5月15日のJリーグ開幕戦(ヴェルディ川崎 vs 横浜マリノス、@国立競技場。ちなみにBリーグ開幕の2016年9月24日、東京ヴェルディ1969 vs 横浜F・マリノスは高知県春野で行われた天皇杯3回戦で奇しくも再現された!)を模して実施された。旧NBL、bj両リーグ王者激突のカードを組み、「ショーウインドウ」として地上波で見せたのだ。予算もガツンと使った。キャンペーン手法だ。実際には週末、各地で行われるBリーグ開幕節でLEDビジョンは使われない。が、観客の脳裏には地上波中継のイメージが残っている。何か従来の日本バスケとは違ったものが始まったんだと印象づけた。

 

 実はトロさんは2005年、bjリーグ開幕戦を有明コロシアムで見ているそうだ。雑誌企画で取材に訪れた。NBAのようなプロリーグがいよいよ日本でも始まると期待していた。応援チームは当時住んでいた東京都国分寺市から近いということで埼玉ブロンコスに決めていた。が、NBAのひいきチーム、シカゴブルズのようには夢中になれなかった。

 「ちょっと見ていて気恥ずかしかったんだよね。アメリカンな演出がいかにも無理してる感じでさ。試合もかなりしょぼかったんだよ。あぁ、こんな感じになっちゃうのかとがっかりした」

 ね、そういう人がBリーグをどう見るのか興味があるでしょ。旧bjリーグの名誉のために記せば、ラストとなった15-16シーズンまでの11年、競技レベルも場内演出も格段に進歩したと思う。その土台の上に横浜ビー・コルセアーズのBリーグ開幕戦がある。

 

 場内はすごい入りだった。3,297人はほぼフルハウスだ。海賊のクラブマークがライティングで映し出される。奥のステージに生オケが入って、音楽で盛り上げる構えだ。観客のテンションが高い。皆、ブースターやバスケファンであると同時に「歴史の証人」だ。トロさんも興奮してしきりに写真を撮っている。LEDビジョンやプロジェクション・マッピングを駆使する予算こそないが、きっちり開幕戦の祝祭性が表現できている。僕も来てよかったと思った。実はちょっと身内に不幸があり取り込んでいたのだ。「ブンタイ」に立ち込める熱気のなか、気分が明るくなった。さぁ、試合だ。ビーコル、いいとこ見せてくれ。

 

 横浜ビー・コルセアーズのロースターは一新されていた。川村卓也、竹田謙の元日本代表コンビが目玉補強だ。キャプテン山田謙治とはかつて栃木が優勝した際のチームメイトでもある。百戦錬磨の船乗りが海賊船に乗り込んだイメージか。特に現役引退から2シーズンのブランクを経て、再びコートに立つ竹田は注目に値する。また復帰という意味ではファイ・パプ月瑠(パプも元日本代表でしたね!)が再びビーコルのユニホームを着るのもビッグニュースだ。

 

 日立あらため「サンロッカーズ渋谷」はやっぱり強豪感がハンパない。横浜 vs 渋谷は「東横線シリーズ」とか「東横線ダービー」と呼ばれるのだろうか。試合が始まってトロさんが「おお、渋谷強いね、かなり力あるよ」と言う。まぁ、旧NBL勢は資金力でも環境面でも旧bj勢の上を行っている。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』でいえば旧NBL勢は正規海軍のイメージ、対するビーコルらbj勢は七つの海を荒らしまわる海賊船だ。第1クォーターは勢いに呑まれそうになったが、何とか食い下がって20対24のスコア。bj勢は使用球のサイズすら違うハンデを抱え頑張っている。僕は上々のすべり出しだと思った。

 

 大接戦になった。「ブンタイ」は歓声が絶えない。場内の演出は基本、bjリーグ時代を踏襲しているんだけど、トロさんは「へー、いい感じじゃん」と合格点をくれた。そうなんだよな、僕は旗揚げの有明コロシアムこそ行ってないけど、bjの演出を気恥ずかしいと感じたことはない。わかりやすくてすごく気持ちがアガるやり方だ。たぶん今日、初めてBリーグに来た観客もすぐ入れたんじゃないかな。つまり、雰囲気づくりも含め、bjの11年間はノウハウを蓄積した時間だったのかもしれない。

 

 試合は大変だったんだよ。スコアは20対24の後、17対14、16対14と推移して、第4クォーターに入る時点で53対52。トロさんは隣りで「渋谷はガード休ませて次で勝負に来るんじゃないの?」とかうるさいくらいだ。完全にバスケ熱が再燃している。トロさんは現在、松本市在住なのだが、「長野は信州ブレイブウォリアーズなんだよ。今度、千曲市へ見に行ってみようかな」と言い出した。いやいや、そこはビーコルでしょ。

 

 勝負の第4クォーター、渋谷が攻撃のギアを上げてきた。ここまで川村の3ポイント等で食らいついてきたんだけど、じわじわ引き離されていく。ビーコルはこの試合、フリースロー成功率が非常に悪かった。それも敗因の一つに挙げられる。第4クォーター10対29、トータルスコア63対81の負け。ただ次につながるものは確実に見せてくれた。負けから始まる物語もある。その分、初勝利の感激はひとしおに違いない。

 

 試合の勝敗以上に大事なことがある。この日、Bリーグ開幕戦が撒いた種だ。3,297人の観客の胸にクラブ関係者や選手らは種を撒いたのだ。それが芽をふき、葉を茂らせ、いつか花咲く日が来ると思う。北尾トロさんは「ブンタイ」を出てから、近所のジョナサンでバスケ話を延々していた。トロさんの心にも種が撒かれたんだろう。また誘ってみるよ。Bリーグ旗揚げおめでとう。ビーコル出航おめでとう。

 

 

追伸、横浜ビー・コルセアーズは開幕5連敗の後、敵地の三遠ネオフェニックス戦で初勝利を挙げ、そこから3連勝だ。本稿執筆の2016年10月19日現在は、まだホームアリーナで勝利していない。一日も早く地元ブースターの歓喜する姿が見たい。

 

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えのきどいちろう プロフィール

コラムニスト

1959年8月13日生まれ
中央大学在学中にコラムニストとしての活動を開始。以来、多くの著書を発表。ラジオ・テレビでも活躍。

Book
「サッカー茶柱観測所」「F党宣言!俺たちの北海道日本ハムファイターズ」ほか

Magazine/Newspaper
「がんばれファイターズ」(北海道新聞)/「新潟レッツゴー!」(新潟日報)ほか

Radio/TV
「くにまるジャパン」(文化放送)/「土曜ワイドラジオTOKYO」(TBSラジオ)ほか

Web
アルビレックス新潟オフィシャルホームページ
「アルビレックス散歩道」

Web
ベースボールチャンネル
「えのきどいちろうのファイターズチャンネル」

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