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えのきどいちろうの横浜スポーツウォッチング

vol.19「本牧からJリーグへ」

2014年はブラジルW杯開催もあり、サッカーに注目が集まる年だ。そして、もうひとつJリーグ・ディビジョン3(以下、J3)の新設が話題を集めている。ついにわが国のプロサッカーリーグは3部までのすそ野を持つことになるのだ。2013年に「Jリーグ20周年」の記念行事が行われたから、つまり21年目の新しいステップだ。

そこに横浜からY.S.C.C.が参戦することが決まっている。中区本牧で創設28年を迎える地域密着クラブだ。「Y.S.C.C.」は横浜スポーツ&カルチャークラブの略。通称は「ワイエス」。横浜から横浜F・マリノス、横浜FCに続く第三のJクラブが誕生するのだ。これは当コラムとしては応援するしかない。Y.S.C.C.の地道な活動は首都圏のサッカー関係者の間で定評がある。クラブ母体が(2002年から)NPO法人というのも特徴的だ。「地域はファミリー」をモットーに幼児からシニアまで各年代のチームを編成する、老若男女参加型のクラブだ。

ていうか、僕に言わせればY.S.C.C.が体現しているものこそが「スポーツクラブ」というものだ。2006年からはサッカーだけでなく、テニス、バドミントン、バスケットボール等の「ほほえみ教室」も開設した。Y.S.C.C.はまず誰のためにあるかというとトップ選手のためではなく、地域コミュニティのためにあるのだ。

「J3参戦が決まってから取材を受けることが増えたんですけど、記者さんから異質だって言われます。他のクラブは例えばブラウブリッツ秋田のように、これまでJリーグがなかった地域を盛り上げようっていう期待が大きいんです。その点、横浜はF・マリノスとFCってビッグクラブが既にあります。我々もJリーグ参入ありき、という意識ではないんです」

「Jリーグの理念をJ参戦以前から着実にやってきたという自負があります。だからクラブの本体は今後も地域活動やサッカー教室の方にあって、そのトップチームがたまたまJリーグで戦ってるっていうイメージです。Jリーグ入りで地域活動の方がおろそかになってしまったら、我々の考えとは違ってしまいますね」(NPO法人Y.S.C.C.理事長 吉野次郎氏)

 吉野 次郎 理事長

吉野理事長のコメントはブレがない。僕も含め、J3がどういうステージになるか誰もイメージできないでいるなかで、Y.S.C.C.は大方針が決まってる強みがある。といって「プロ」の「興行」を成り立たせていくのは、吉野さんをはじめスタッフも未体験ゾーンではないか。観客動員は見通しがついているのだろうか。

「10年かけて、まずプロらしいクラブにしていこうって話をしています。我々からするとJリーグ参入は戦って勝ちとったものじゃなく、たまたまこのタイミングでアマチュアの最高峰・JFLにいただけってところもあるんです。『昇格』『参戦』っていうより、『Jリーグが降りてきてくれた』っていう言い方のほうがしっくりくる」
「毎回、1,200〜1,600人くらい入れば何とかなるってメドは立ちました。28年やってますからOBの数だけでも何万人ってことになるんです。何らかのカタチでY.S.C.C.にタッチした人、OBもそうだし、少年チームの親御さんもそうでしょう。Y.S.C.C.に関わりを持った人が観客層の中心だと思うんです」

これはビッグクラブにない、手作りの魅力だなぁ。Y.S.C.C.はもう一度、Jリーグがやろうとしてたことをやり直してくれそうだ。僕はY.S.C.C.がJリーグの新しい可能性を、そして横浜の新しい可能性を拓いてくれる気がしている。またそうでなければ、先行する横浜F・マリノス、横浜FCとの共存は難しいだろう。

実はJリーグ史のなかで横浜は特別な場所だ。それはもちろん「横浜フリューゲルス」の失われたホームタウンという意味で。その消滅の物語は関係者、選手、サポーターはもちろん、Jリーグそのものに傷跡を残した。Y.S.C.C.の挑戦はJリーグ史にとっても積極的な意味がある。

余談ながらY.S.C.C.の個性はオフィスのたたずまいにも現れていると思う。僕はスカパーや『サッカーマガジン』等の仕事を通じて、それなりにJリーグクラブの取材をしている。が、Y.S.C.C.みたいなところは見たことがない。明らかに過去最高。これはね、一見の価値ありますよ。

Y.S.C.C.オフィスは本牧埠頭の「USSシーメンスクラブ」の一角に所在するのだ。外国人船員の福利厚生を目的としてつくられたクラブ(現在は日本人もウェルカム!)だ。Y.S.C.C.オフィスの向こうにはビリヤード台が並んでいて、その向こうに外国通貨の両替窓口がある。横にはカウンターバーとレストラン。僕は映画を見ている錯覚に陥った。読者も遊びに行ってみてほしい。横浜という街のリアリティがうかがえる。

実はY.S.C.C.理事長の吉野次郎氏のお兄さん(吉野太郎さん)が、ビリヤード台の向こうで両替商を営んでおられる。本牧はホントに地元なのだ。Y.S.C.C.は理事長のお兄さんの縁で、外国人船員クラブの一角を間借りする。横浜だねぇ。そんなJリーグクラブ、今までなかったと思います。

えのきどいちろう プロフィール

コラムニスト

1959年8月13日生まれ
中央大学在学中にコラムニストとしての活動を開始。以来、多くの著書を発表。ラジオ・テレビでも活躍。

Book
「サッカー茶柱観測所」「F党宣言!俺たちの北海道日本ハムファイターズ」ほか

Magazine/Newspaper
「がんばれファイターズ」(北海道新聞)/「新潟レッツゴー!」(新潟日報)ほか

Radio/TV
「くにまるジャパン」(文化放送)/「土曜ワイドラジオTOKYO」(TBSラジオ)ほか

Web
アルビレックス新潟オフィシャルホームページ
「アルビレックス散歩道」

Web
ベースボールチャンネル
「えのきどいちろうのファイターズチャンネル」

※タイトル・本文に記載の人名・団体名は、掲載当時のものであり、閲覧時と異なる場合があります。

 
 
                           
 
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