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あんどうたかおのバスケにどっぷり

vol.78「逃げないこと!!」

男子では東京の八王子、九州の福岡第一・延岡学園、岡山学芸館、四国の明徳義塾など、女子では昨年末のウインターカップ準優勝の岐阜女子をはじめとして、全国各地で多くなっているアフリカ系留学生。また、福井の北陸や静岡の藤枝明誠、女子では伝統校・桜花学園、東京の明星学園のように中国の留学生を加えて成績を残している高校が増えています。その一方で、福岡大大濠、洛南、能代工の様に頑なに純粋日本人で勝負する高校も存在しています。

そのアフリカ系留学生がついに神奈川県にもやって来ました。
身長200cmのAbu Philip君、茅ヶ崎市のアレセイア湘南高校(以下アレセイア)の1年生です。
アレセイアは2000年に校名変更及び男女共学化を行い、それと並行してバスケットボール部の強化を図り、コーチを招聘しアフリカ系留学生を始めとする優秀な中学生を入学させました。
最初の数年は、中途入学で公式戦に出場出来なかったり、怪我人が出たり、部員数が少ないなど、結果を残せませんでしたが、最近になってようやく陣容が整い、この新人戦から力を発揮するようになりました。


神奈川県新人戦決勝 アレセイアvs厚木東

今のところ、多くのアフリカ系留学生は母国でしっかりとバスケットを教育されてはいないので、うまくはありませんが、身体能力が高いので日本で上手くなる可能性は高いですね。

ではその留学生の長所とは何でしょうか?

まず高さがあることです、ほとんどが2m以上の長身者で、バスケットという競技の特徴から言って、高さは大きな武器になります。
長身者は背が高いだけではなく手も長いので、ジャンプ力と相まって最高到達点は3m以上にもなり、バスケット競技では大いに有利になります。
目立った利点としては得点できることです。
305cmの高さのリングに近いのでシュートの精度は高くなり、特にダンクシュートは得意ですね。身体能力が高ければ、シュートの技術は不要で得点できますからね。
高さを活かすことではブロックショット(相手のシュートを抑えたり叩いたりして妨害すること。以下BS)が一番効果的ではないでしょうか。

日本人は一般的に身長が低くジャンプ力もそれほどないので、日本人同士のゲームはBSに対する警戒度は低く、それほど対策は立てていません。そのためBSされるとショックなんですね。大体がボールは手から離れた空中で叩き落とされることが多いので、余計ショックです(笑)。

そして、地味ですがチームに一番貢献するのは、実はリバウンドです。
BSやダンクは派手で、ボクシングに例えれば必殺右フックみたいな感じですが、リバウンドはジャブと言って良いでしょう。
一発で相手を倒すわけではありませんが、ジワジワと効いてきます。
シュートが得意なシューターと呼ばれる選手達は、味方選手がリバウンドを獲れるか獲れないかで心理面で大きな差が出てくるのです。リバウンドが獲れると分かっていると気楽にシュートを撃てるため、入る確率も高くなりますが、リバウンドが獲れないと分かると「決めなくてはいけない」とプレッシャーがかかり、確率が低くなる傾向があるからです。

さて1月中旬に行われた平成25年度神奈川県高校新人大会では、準決勝でウィンターカップ出場の法政二高に76-53、決勝の厚木東高に102-80で大勝して優勝しました。さらに平成25年度関東高等学校バスケットボール新人大会では1回戦で甲府西高に75-62で勝ち、2回戦では幕張総合に79-65で勝ち上がりました。ただし大会は大雪によりここで中止となり、優勝を逃したことになったのかな?

アレセイアは単に留学生だけが活躍するというのではなく、#4塚本雄貴(177cm横浜市平戸中)と#6コラン陽介(185cm武相中)のガードとフォワードが良く、さらに塚本と#8安藤郁哉(165cm軽井沢中)の二人のガードをはじめとするディフェンスが強いことが勝因となっています。

対戦した高校の先生たちの意見は、留学生に「お手上げだよ」と「手掛かりが掴めた」と二つに分かれました。高体連の先生の中には「留学生」というだけで拒否反応を示す人もいます。

しかし、私は賛成です! 頭を下げてでも練習ゲームをしてもらったほうが良いと思っています。
なぜなら、今までは体験する機会がなく、頭の中だけで「想像」…いや「妄想」していただけだった2mの世界が体験できるのだから素晴らしいじゃないですか!

「身長の大きな選手と対戦するための対策を立てる」…これは取りも直さず日本全体の課題であり、バスケット的だと思います。「外のシュートを入れれば勝てる」的な単純な発想では勝てません。ああやって、こうやってといろいろ考えることが日本人は苦手ですよね(笑)。しかしそれをすることが、選手とチームをレベルアップさせ強くする、と私は思います。

対戦して「何がOK」で「何がNG」なのかを指導者(先生)と選手(生徒)で話し合えば良いと思います。そしてアジャストして次のゲームで一歩でも近づけば、もしかすると勝つ可能性も出てくるかも知れません。それはそのチームがレベルアップしたことになります。
となると留学生のチームも考えるでしょう。「留学生だけに頼ってはいけない、もっと日本人ががんばろう、ディフェンスを強くしよう、もっと上手く留学生を使おう」など考えるはずです。そうなれば留学生チームのレベルがアップし、それは他のチームに刺激を与え、さらに負かそうと考えたり努力することで神奈川県全体のレベルアップに繋がると思います。

私はこの機会をチャンスと捉え、「バスケットを考え直せ!」と提案します。

今まで40年近く、NBAをはじめとするアメリカのバスケットを見てきたり、コーチやバスケット関係者から話を聞いてきた経験から「日本のバスケットは身長が低いから弱いのではなく、スキルが足らないから弱い」と感じました。

アメリカ大学留学の経験を持ち、アメリカの有名コーチと直接話を聞いている元男子日本代表アシスタントコーチでbjリーグ・大阪エヴェッサのコーチである東頭俊典君と話した時、日本人はペイント内(ゴール下のフリースロー・レーンといわれる4.9×5.8m)の四角地でのシュートのバリエーションが少ない、と教えてもらいました。
日本人はゴール下も、中距離も、3Pもほとんどジャンプシュートの形で撃っている…というのです。
ディフェンスが密集するゴール下はベビーフックやリバース・ショット、フローター等を使い分けるべき、というものです。ワンパターンのシュートではブロックする方も簡単ですからね。
その辺りはNBAのプレーを参考にしても良いでしょうね。

ただしNBAはパワープレー全盛のため、弊害もあります。ペイント内でもジャンプ力や力任せのプレーが多いのですが、これは日本人に向いていないし、高校生にもお勧めできません。
見習うべきはNBAにいるユーロやアルゼンチンの選手たちです。
身体能力の低さを技術で補っています。まあスマートなプレーですね。その良い例はペイント内のシュートです。普通のタイミングでシュートすればアフリカ系の選手に上空で叩き落とされますが、ポンプフェイクというシュートのマネをするとBSに跳んでくるので、相手を飛ばしておいてから足を踏みかえてステップインという、ゴールに近づくシュートを撃つのです。

有名な参考例があります。
もっともプレーしているのはアフリカ系の選手なのですが、アキーム・オラジュワンがする、その名も「ドリーム・シェイク」です。

話が少し逸れてしまいましたね(汗)。

それでは実際問題として、どういうプレーをすれば留学生に対抗できるのか?

私は分かっていますが、それはあえて書きません。

なぜ?

ここに書いたら指導者も選手も考えることをしないじゃないですか。それじゃ上手くも強くもなれません!考えて実行して、失敗してさらに考える。

もがいて苦しめば、勝てなくてもきっと良いチームになると思います。そうすれば神奈川県から全国に通用するチームが多くなるはずです。

ひとつだけヒントをあげましょう。

「逃げないこと!!」

あんどうたかお プロフィール

1946年生まれ。

月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。

現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。

NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。

過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。

横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。

現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。

また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。

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