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あんどうたかおのバスケにどっぷり

vol.45「NBAチャンピオン」

 10-11シーズンのNBAチャンピオンがついに決まりました。

 とその前にNBA(National Basketball Association)の仕組みからお話しましょう。
 現在NBAは30チームあります。それが所在の地区によって東西の2カンファレンスに分かれ、さらにその中は5チームで構成される3ディビジョンに分けられています。
 レギュラーシーズンは11月初めから4月中旬まで行われ、各カンファレンスで上位8チームによるプレーオフと呼ばれるトーナメントが行われ優勝チーム同士でNBAファイナルスを戦います。
 トーナメントと言っても1ゲームだけじゃなく7戦4先勝システムで、プロ野球の日本シリーズと同じです。

 ここで重要になるのがホームコート・アドバンテージです。
 ホームでのゲームが有利なのはどの競技でも同じことで、NBAではレギュラーシーズンでの勝率が高いチームに与えられます。と言うことは、順位が決まったあとでも1勝でも多く挙げておいた方が良いので、消化ゲームは無くて最後まで全力で戦わなければなりません。
 だから面白いんです。

 今回は東は2位マイアミ・ヒート、西は3位ダラス・マーベリックスがファイナルスへ進出してきましたが、ヒートが58勝24敗、マーベリックス57勝25敗と、僅か1勝差でヒートにホームコート・アドバンテージが与えられました。

ゲーム(1) 6月1日 @マイアミ
ゲーム(2) 6月3日 @マイアミ
ゲーム(3) 6月6日 @ダラス
ゲーム(4) 6月8日 @ダラス
ゲーム(5) 6月10日 @ダラス
ゲーム(6) 6月13日 @マイアミ
ゲーム(7) 6月15日 @マイアミ 

 7戦までもつれ込むと最後はアドバンテージを持つチームのコートで対戦することになり、非常に有利、と言うわけです。(いずれも日本時間。現地時間前日となります)

 さて今回の組み合わせ、実は06年にも戦ってまして、その時は4勝2敗でヒートが勝ってます。
 その時のメンバーで残っている主力選手はヒートはドウェイン・ウェードとウドニス・ハスレム。マーベリックスではダーク・ノウィツキーとジェイソン・テリーの二人です。

 中でもドイツ人のノウィツキーは当時主力選手ながら、土壇場でシュートを決められず「チキン(臆病者)」呼ばわりされ、落ち込んだこともあり、このチャンピオンシップに掛ける思い入れは並大抵ではありません。

 今回のファイナルスは逆転の連続と点差が少ないので、全米でもかなり注目を浴びる対戦となりました。

ゲーム(1)
 51-43と負けていたヒートが引っ繰り返して92-84での逆転勝ちです。このゲームはマーベリックスにとってみると、「ファイナルスと言う無言のプレッシャーに緊張して、何が何だか判らないうちに終わった」と言う感じだったと思います。

ゲーム(2)
 残り時間4分の時点でホームのヒートが90-81と9点もリードしてました。となれば誰もがそのまま「大声援を背に受けるヒートが突っ走って勝つ」と思ったものです。
 しかし5年前の屈辱を胸に秘めるベテランのテリーとノウィツキーが目を覚まします。
 テリーが短いシュートを決め、ノウィツキーが3P(スリーポイント・シュート)を決め追い上げ、残り26秒の段階で又もノウィツキーが3Pを決めて、ついに93-90と逆転しました。5年前にチキンと呼ばれた面影がありません。逆にダウン・ザ・ストレッチ(終盤残り時間が数分の大事な時間帯)に強いクラッチ・シューターとなってます。
 直後に3Pを入れ返され同点に追いつかれたものの、最後にチームを救ったのはゲルマンの大魔王ノウィツキーでした。
 アメリカ人が苦手な左手ドリブルで抜いて綺麗に左手のレイアップシュートを決めた!!!
 残りはたったの3秒!

 そして逃げ切って、アウェーで貴重な1勝を上げ、ホームでの戦いとなるゲーム(3)へと繋ぎました。

 プロ野球でも日本シリーズは第2戦を取ったチームが優勝する確率が高いと言われてますが、NBAでも同じことが言われてます。特にアウェーでの勝利は大きいですね。

 と思ってダラスに帰ってきたマーベリックスですが、そう簡単には勝たせてくれません。
 ヒートのBig3に一人、ウェードに29得点されて88-86で負けて1勝2敗とピンチです。

ゲーム(4)
 マーベリックスには大ピンチが訪れました。大魔神のノウィツキーが朝から38度の高熱で体調がよくないんです。それでも一番大事な第4クウォーター で10得点、特に残り14秒で意表をついた右手ドリブルでペネトレイト(ドリブルしてゴール下に切れ込むプレー)して84-81とリードを広げるシュートを決め対戦成績を2勝2敗とタイに持ち込みました。このゲームも残り7分では78-74で負けていたのを引っ繰り返したものです。
 高熱を押しての出場だけじゃなくファイナルスで高得点と言うとマイケル・ジョーダンを思い出します。
97年ファイナルス、ゲーム(5)です。40度近い高熱で足元がフラフラしながらも38得点してブルズを勝利に導きました。
 ノウィツキーは神に一歩近づいたかな?

ゲーム(5)
 ホーム最後のゲーム、マーベリックスはこれを取らないとアウェーで2戦全勝しないといけなくなる。是が非でも勝ちたい。
 もっとも勝ちたいのはヒートも同じ、これを落とすと2勝3敗となりマーベリックスに王手を掛けられてしまう。
 ファイナルに限らず、シリーズもの(同じ相手と連続して対戦)では「相手の良いとこ潰し」に専念するためかなり力の差があるか、勢いに乗ってるかしないと連勝は難しいものです。
 例えばある作戦が成功すると、次のゲームでもその作戦が通用するものと勝ったチームは思いがちになりますが、負けたチームはその作戦を分析して対策を立ててゲームに臨みます、NBAではこれを「アジャスト」と呼びます。
 今シリーズではマーベリックスのゾーン・ディフェンスがずっと通用してます。
 ヒートはトラウマになってしまったようで、特にレブロンは得点が止まってます。
 ヒートはここ一番で力を発揮するウェードがペネトレイトした際に股関節を強打して以降、得意の「ステップスルー」が出来ないものの、残り4分で99-95とリードします。ところが肝心のウェードが攻め込めず、逆にマーベリックスはキッド等の3Pが効いて112-103と逆転勝ちして3勝2敗として王手を掛けました。

 そして迎えたゲーム(6)はヒートのホームです。
 前半はノウィツキーとタイソン・チャンドラーがファールトラブル(ファールが多くなること)となった。
 そして大黒柱のノウィツキーのシュートが入らない!!!
 しかし心配はありません、マーベリックスにはクラッチ・シューター(勝負どころのシュートを平然と決めてくる選手のこと)と呼ばれるテリーがいて、さらに小柄なバレアがドリブルでかき回したり3Pを決めたりして、前半は53-51の2点ビハインドと互角に戦ってますから心配要りません、何しろ「逆転勝ち」のマーベリックスです(笑)

 後半の一発目を決めたノウィツキー、やっと目が覚めたかと思ったものの、相変わらず外のシュートが入りません。
 でもチームメイトは彼にボールを廻し続け、彼も撃ち続けます。
 でも入りません。
 それでもマーベリックスが一歩リードしてゲームは展開します。
 リードしてる、となると「優勝」の二文字が頭をよぎります。特に初優勝です。主力選手に優勝経験者はいないとなると「守り」に入ったり、プレッシャーが掛かってプレーがぎこちなくなるものです。

 ところがプレッシャーはヒートの方がより強かったようです。「ホームだから絶対に負けられない」となってしまったのか?
 残り5分には、あのテリーですら連続でシュートを落とし94-87となるもののヒートは積極的じゃない。
 つまらないミスが続き、マーベリックスのミスでボールを得ても、得点に結びつきません。
 一方リードしてるマーベリックスは時間を費やすためになかなかシュートしないじらし作戦だ。
 そうこうしている間にノウィツキーが、そしてテリーがシュートを決め、逆に101-90とリードを広げ、105-95で逃げ切って初優勝しました。

 テリーはベンチ・スタートながら、時にはスタメン以上の得点や良いところでシュートを決め、私は「陰のMVP」を与えたいです(笑)。
 その他にも、キッドの土壇場での3P、得点が止まるとショーン・マリオンがゴール下でシコシコと点を取ってくる。デシャウン・スティーブンソンは良いディフェンスと3Pでチームを救っているし、チャンドラーはゴール下を守っているしリバウンドも地道に頑張っている。

 ノウィツキーは主役ですが、周りの脇役以上の活躍があるからチームとして優勝出来る訳です。
 ただ中学高校生が、ノウィツキー得意の「片足フェーダウェー・シュート」をカッコいいからと真似するのはやめましょう。
 彼はあの難しいシュートを入れるために身体の色々な筋肉を鍛え、毎日多くのシュート練習をしてるからこそ入れられるのです。
 毎日の精進が大事なんですよ、と親父臭いことを言ってしまいました(笑)。

あんどうたかお プロフィール

1946年生まれ。

月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。

現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。

NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。

過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。

横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。

現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。

また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。

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